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1話

素人がまったり趣味で書くだけなので生暖かい目で見てください。

「ようこそ、異世界からの勇者よ」


 聞いた瞬間に、また変な夢を見ているなと思った。ただ純粋に、最近ラノベをよく読むようになったからこういう夢を見ているんだなと。


「……召喚に成功した異世界人は叫んだり慌てたりと兎角煩いという伝聞が多数残っているが、こやつは表情すら変えんな。名前を聞いても良いかの?」


 だってよくある夢だから。ただの夢でなんとも思ったりしない。


「秦。はた 音和ねいっていう。好きに呼んで」


 正直自分の名前は好きじゃないけど、夢に嫌なことが起きるのは普通のことだから、受け流す。


「どちらが名じゃ?とりあえず召喚に成功したからの、王の間に案内したいと思うが精神は平気かの?」


そう聞いてとりあえず周りを見渡す。足元にはどす黒くなった魔法陣らしき何か。効力を失った後といったところだろうか。他には目の前にいる変なお爺さん。話の流れ的にこの人が私を呼んだ、という流れなんだろうな。


「音和の方が名前。見ての通り平常だから案内するならして。しないなら帰る」

「じゃあ王達にはそう伝えよう、この国では貴族以外に姓は与えないからの。しかしいきなり帰るとは、まるで帰り道を知ってるかのようなセリフじゃの?音和からしたら突然知らない場所にいる、といった形のはずなんじゃがの」

 

 ……まあ、夢の住人がここが夢とは言わないか。起きれば良いだけだから、とか言っても伝わらないだろうし、適当で良いかな。


「こういうことに慣れてるだけ。気にしないで良いよ」

「はっはっは、慣れておるとはまた随分と過去の伝聞とは異なった人が来たのう……! 召喚の経験でもあるのかの?」

「召喚って言うのか知らないけど、知らない場所に唐突に呼ばれたりするのは慣れてる。それで閉じ込められるのも慣れてるから、閉じ込めようとしたら帰るからよろしく」


 夢の中に閉じ込められるのは良くあることだ。正直疲れるからやりたくないけど、強制的に夢を終わらせて起床することも出来る。

 まあ、四肢を飛ばされたり殺されそうになったら起きようかな。それよりマシなら起きてからの疲労度を考えると寝ていたいし。


「閉じ込めたりはせんが……帰る当てはあるのかの?そもそも、この場所がどこだかもわからない上に、外には警備が多数おるぞ?」


 悪夢系統かな、ちょっとイヤだな。ほんと悪夢ばかり見る体質、なんとかなってほしい。


「別に有象無象がどれだけいようが関係ないし、逃げるだけなら……ね?」

 ただ簡単にイメージする。『今、自分は、このお爺さんの、後ろに立ち、肩を軽く叩く』と。

 後姿を知らないから荒いイメージだけれど、この程度で充分なことを私は今までの経験から知っている。

 そしてそのイメージは、現実のものとなった。肩を叩かれたお爺さんが焦っているのがその証拠だろう。そして後姿はこんな感じなのか、一応覚えておこう。


「……!? これは、高速移動の類ではない……転移……いやしかし魔力の流れなどなかった、はずっ!」

 

 ……ただ肩を軽く叩いただけなのに、さっきまで持ってなかったはずの杖を回転しながら水平に薙いで来た。もしかしたら見た目通りの年齢ではないのかもしれない。

 いや、そんなことはどうでもいいか。とりあえず痛いのは好きではないのでまたイメージする。

 敵わないことを知って貰いたい。『跳んで避けてそのまま空中に浮いている自分』をイメージする。


「避けられ……っ、魔力を使わずに浮いている!?」


 ついでに『薙がれた杖の上に立って』それでも、攻撃はせずに敵意はないということをアピールしよう。


「こんなただの一般女性に暴力振るうものじゃないよ?危ないよ?次やったら反撃するよ?回避以外も出来るからね?」


 正直暴力は嫌いだからあんまりやりたくないのだけど、暴力を振るわれるよりはまだ一応マシだからね。被害にあわないための暴力なら厭う必要はないよね。

 お爺さんは、私がそう言うと杖を仕舞い考える仕草をした。杖の上に立ってたから落ちそうになったのだけど、地味に嫌がらせされているのだろうか。


「あぁ、済まない。重さを感じなかったから浮いたままだと思っていたが、乗っていたのか。それでもゆっくり降りてくるとは、此度の勇者は適応が早いどころか既に戦えるのか」


 切り替え早いなー、このお爺さん。


「まあ、いいけど。そもそも私が不意打ちしたみたいになったから本能的に反撃しちゃっただけだよね、冷静に考えたら。ごめんね」

「良い良い。自分の力を見せておくのは抑止力としては当然のことであるし、こちらに危害を加えようとしたわけではないみたいだからの。でも、王の間ではそのような動きはしないで貰えると助かる。たとえ勝てなくても、警備が動かざるを得なくなるからの」


 力の差があるとしても戦いに来るのか、メンドイな……。出来るだけ変な『イメージ』をしないようにするしかないか。


「誠意努力するよ。ただ、反射というか本能というか無意識というか、そういうので動いちゃうこともあるから確約は出来ない」

「ふむ……魔法であれば、あのような動きをするためには自分の意思が必要だが、音和が使っているものは魔法ではなさそうだしの。どのようなモノか聞いても平気なら教えて欲しいのだがの?」

「教えるのは構わないけど、理解は出来ないと思う」


 夢の住人に、現実の住人の行動なんて理解出来るわけがない。今まで出来た人なんていないから。


「一応聞いても良いかの?」

「私の使ってるのは『世界を捻じ曲げる力』だよ。『因果律を弄る力』と言ってもいいかな。私が願ったように、私が想ったように、私が信じたように、そう世界を動かす、そんな呪いの力」


 これがあるからこそ。私は『夢を見ること』が大嫌いなのだ。

読んでいただきありがとうございました

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