47、幽霊騒ぎ
いま、王都では処刑された少女の幽霊が出るってもっぱらの噂だ。
私たちは何もしてないよ?
それを証拠に、アビゲイルが怖がっちゃってね。
「フローラ様ぁ、一緒に寝てください~」
「いいけど。マーサの方が強そうじゃない?」
「マーサさんのことも好きですけど、一緒に寝るならフローラ様がいいです」
うん…私でもそう思う。
抱き枕にするのは別にかまわないんだけど、機能停止した《アバター》ってかなり不気味じゃない?
自分がモデルだなんて微妙な気分だけど、なんとなくこのままじゃいけない気がして、デフォルメした等身大のぬいぐるみを作ってみた。安眠ポプリを入れるポケット付き。
「か、可愛いです! ありがとうございます」
アビゲイルはたいそう気に入った様子で、毎晩それを抱いて寝てる。そして、たまに一人でごっこ遊びをしてる。
…ふと、アマンダも喜びそうだなって思ったけど、それは思うだけにした。したんだけど。
時を同じくして、同じような考えに至ってしまった第二王子の命を受けて、王宮メイドがメジャーを持って追いかけてくるのが怖い。
気付かないふりをしたり、適当な理由をつけて逃げるのも、もう限界だ。
最終的には、私があきらめるしかないわけだけど。
アビゲイルとマーサと検証した結果、《ライト》を認識阻害の《結界》で覆うと、それを見た人がいても、なんか光ってるけどそれが気にならないって状態になることがわかった。
寝惚けたか、酔っ払った人が、それを見た日付を勘違いするなんて大いにあり得る。
ごく一部、罪悪感に苛まれて、ありもしないものを見ちゃう人もいるだろうし。
でも、大半はおもしろがって騒ぐだけだろう。
スーパーガスターのレジ前エンドのラインナップを見てみると、幽霊除けのなんちゃらがいっぱい。
教会に配慮して、さすがに「聖」の字はつけてないけど。
「マーサさんもいかがですか?」
「一つずつもらおう」
値段も手頃だし、中身に興味があったので買ってみた。
主要原料はアルコールや塩、あとはハーブだね。
混ぜ物がしてあるから料理には使えないけど。アビゲイルはよろこんで部屋のあちこちに置いている。
前世でもそうだったけど、経験則なのかなんなのか、自然と殺菌効果のあるものを使うようになるのが不思議。
…幽霊って菌なの?
中古住宅の黒カビが原因で、幻覚を見たって話は聞いたことがあるけど。
我が姉エリザベスも、教会のデモンストレーションに駆り出されて、あちこち殺菌…いや、《浄化》して回っているようだ。




