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第4話:盗賊団頭領だろうがなんだろうがかかってこいや!!(1)

 前回のあらすじ。

 修&政宗VS仮面男、決着。

 詳しい内容は前回をチェケラー!

  

 


 石造りの家々が立ち並ぶ小さな村、その一角に激しいやりとりが響き渡った。夕暮れの紅色に染まる道端で、海原恭弥(かいばら きょうや)が三人のナンパ男たちをボコボコにしたばかりのタイミングだった。


「迷惑なら迷惑ってちゃんと言わねぇと、この手のやからはしつこいぞ?」

「す……すいません……」


 シュナは恥ずかしそうに目を伏せ、か細い声で答えた。


「別に謝ってもらいたい訳じゃないんだが……」

「すいません……」


 再び同じ言葉を繰り返すシュナ。

 そんな彼女を見て、恭弥はガシガシと頭をかく。短い付き合いだが、恭弥もシュナが強く断れない性格であることはよく理解していた。

 どうするか悩んでいると、ポケットに先程失敗作だと雷堂修(らいどう しゅう)に渡された物があることに気付いた。


「しゃあねぇ、これやるよ」


 そう言って、恭弥はポケットから何かを取り出し、シュナの手に押し付けた。シュナが手の中を覗くと、そこには小さな銀色のブレスレットが光っていた。


「これは?」


 シュナが尋ねると、恭弥は悪戯っぽく笑って答えた。


「助けて欲しい時にそいつに魔力ってやつをこめな。そしたら俺がいつでも助けに来てやるよ。」


 その言葉を残して、恭弥は再びランニングに戻って走り去った。彼の姿が見えなくなるまで、その場所に立ち尽くしていたシュナの頬は、一段と赤く染まっており、彼女の手の中には、恭弥からの贈り物がしっかりと握られていた。


 ◆ ◆ ◆


「……ナ、シュナ?」

「はい!?」


 突然肩に手が置かれ、思わず甲高い声を出してしまったシュナは、慌てて振り返る。そこには驚いた様子の父が立っていた。


「な……なに、お父さん?」

「いや、料理中にぼーっとするのは危険だと思ってな」

「ごめんなさい」


 シュナの手には皮むき中の芋と包丁が握られており、どう考えても父の言う事が正しいとシュナは自分の行いを反省した。

 あの日以来、何度も考えてしまう。

 最初は父の手伝いとして、意識の回復しない恭弥の看病をしていただけだったというのに、今ではもう行くなと言われているにもかかわらず、つい足繁く通ってしまう。


「ところでシュナ、もうハルト君達には会っていないだろうね?」


 父からの不意打ち過ぎる質問に思わずシュナはビクついてしまった。


「いいいいい行ってないよよよよ?」

「本当か?」


 声は震え、目が泳ぎまくっているシュナだったが、父は強く疑う様子は見せなかった。


「まぁいいが。特にハルト君はだめだ。ハルト君は一見、人目の良い顔立ちをしているが、ああいう男はすぐに女を取っ替え引っ替えするからな。おそらく腹の底ではどう私を出し抜くか考えとるに決まっとる」


 怒りで湯呑みを粉々にする父を見てシュナは苦笑いを浮かべることしか出来なかった。そして、右手の手首にあるブレスレットをシュナはさすった。


(キョウヤさん、気付いてくれてなかったな。……そうだよね。キョウヤさんはきっと私なんて……)


 遠い目を浮かべ、そんなことを考えていると、突然、多くの方で爆発音のような音が響き渡った。

 その瞬間、リョウは娘を守る父親の顔から村長の顔へと戻った。


「シュナ。お前はここで待っていなさい。私はすぐに状況を確認してくる。もしもの時はすぐにマーリン様が作った防空壕に避難しなさい。わかったね」

「う……うん」


 不安を露わにする娘を一人残し、父親のリョウは急いで家の外へと出ていった。

 それから三十分が経った今でも、リョウは戻ってこなかった。

 リョウの言う通り、防空壕に向かおうと考えたシュナだったが、その度に聞こえる爆発音や悲鳴が彼女の足をすくませる。

 木製のテーブルの下でうずくまりながら、右手にはめたブレスレットを握りしめ、父や恭弥の無事を願うシュナ。

 一人は心細く、帰らない父を思うと今にも涙が溢れ出してきそうだった。


「お父さん……」


 震える声が言葉を紡ぐ。

 それでもシュナの言葉に返事はなく、再び大きな爆発音がそのか細い声を容易く掻き消していく。

 窓から見える景色は噴煙で染まり、彼女の不安を加速させていく。


(やっぱり避難した方がいいよね?)


 怪我をしている訳でも何かが乗っているわけでもない。だが、不思議と足に重りが乗っているのではないかと錯覚するほど、体が重い。

 だが、それでもここにいるよりは安全だと思い、シュナはテーブルから出ようと試みた。

 そんなタイミングだった。

 家の扉が突然鈍い音を響かせながら開く。

 それはあり得ない現象だった。

 家の扉には鍵がついており、戸締まりはしっかりしていた。

 父であれば鍵を開けるか、外から声をかけたはずだ。

 不安は的中し、どかどかと一人の男が入ってきた。

 その男の顔を見た瞬間、シュナは自分の口元に急いで手を当て、息を殺した。

 髪を剃り上げた大柄な男。その男の顔立ちに、シュナは覚えがあった。

 以前依頼を出しに行った際、冒険者ギルドの手配者リストに大々的に貼られていた男。盗賊団『ティアフランマ』の幹部的存在、ヴィズラコンティと呼ばれる凶悪犯罪者だった。

 殺人強盗、婦女暴行と罪を上げだしたらきりが無く、その中でも代表的な事件は隣国ラヴェル教国の騎士団長を殺したとされるハルベ川事件だろう。

 シュナはヴィズラコンティをがどれほどの凶悪犯罪者かまでは知らないが、指名手配される程の危険人物であることは知っていた。その為、息を殺し、彼が出ていくのを密かに待った。

 そして、シュナの目に自分の腕にはまるブレスレットが目に映った。


「助けて欲しい時にそいつに魔力ってやつをこめな」


 恭弥の言葉を思い出し、シュナはそれに自分の込められる全力の魔力を込めた。

 次の瞬間、笛を強く噴いたようなけたたましい高音が辺り一帯に響き渡った。

 間近で聞いていたシュナはそのあまりにも甲高い音に頭がクラクラする感覚に苛まれるが、そんなことはどうでも良かった。

 突然、自分を隠していたテーブルが宙に浮いた。

 ガシャンと大きな音を立てるが、シュナにそちらを見る余裕なんてあるはずが無かった。


「変な音がすると思ったら、なかなか良い女がいるじゃねぇか?」


 徐々に近づけてくる手を見て、シュナは手を前に目を瞑ることしか出来なかった。その時だった。


「娘に手を出すな!」


 叫び声の直後、ヴィズラコンティの後頭部に木製の椅子が叩きつけられた。

 音に驚いたシュナが目を開けると、ヴィズラコンティの後ろには荒い息を吐き、憤怒の形相を見せるリョウが立っていた。


「シュナ、お前は早く逃げなさい!」


 父にそう言われ、シュナは慌てて立ち上がり、急いで外へ向かって駆け出そうとした。だが、立ち上がったところで、彼女の足は再び萎縮によって動かなくなってしまった。


「いてぇじゃねぇか……」


 殴られた後頭部をポリポリとかくヴィズラコンティの顔は、怒りよりも不愉快の感情が勝っているようで、煩わし気な視線をリョウへと向けた。

 そして、リョウは気付く。

 木製とはいえ、丈夫な椅子で殴ったというのに、彼の頭には傷どころか痣すらできていなかった。

 リョウは急いで転がっていた椅子を掴み、その折れた足を武器に変えてヴィズラコンティに向かって突き刺そうとした。しかし、ヴィズラコンティの反応はリョウの想像以上に速かった。その巨体が瞬時に動き、拳がまるで稲妻のようにリョウの視界に飛び込んできた。


「ぐっ……!」


 次の瞬間、ヴィズラコンティの強烈な拳がリョウの顔面に深々と突き刺さった。鈍い音と共にリョウの体は宙を舞い、無力に床へと転がり落ちた。その衝撃により薄暗い部屋の中で響く音が一層不気味に聞こえた。


「お父さん!!」


 シュナの呼びかけに返事はなく、床にはリョウを中心に血溜まりが広がっていく。


「お父……さん……」


 涙が溢れ、声は震え、先程よりもか細い声。

 それでもシュナは父に対して呼びかけを続けた。

 だが、相も変わらず、父からの返事はなかった。

 ただ涙を流すことしか出来なかった彼女はあまりにも隙だらけだった。


「ッッ……!?」


 突然、ヴィズラコンティの荒々しい手が襲いかり、シュナの襟元を掴むと、そのま下へと力ずくで引き裂いた。布が裂ける音が鋭く響き、シュナの胸が無防備に露わになった。


「嫌だ……やめて……」


 シュナは恐怖に震えながら、咄嗟に自分の胸を押さえた。しかし、彼の目にはやめる意思など微塵も見られなかった。その眼差しは冷酷で、容赦なかった。


 シュナはパニックに陥った。後ずさりしながらも、恐怖のあまり足がもつれ、息が荒くなる。近付いてくるヴィズラコンティの巨体が迫り、彼の冷酷な顔がます恐ろしさを増していた。


「助けて、キョウヤさん……」


 弱々しくへたり込み、涙で目が霞んでいくそんな中で一人の顔が浮かび、シュナはその名を口にした。次の瞬間。


「なにしてんだ、てめぇ?」

「あぁ?」


 聞き覚えのある声が聞こえた直後、けたたましい轟音を響かせ、一発のパンチがヴィズラコンティの顔面を捉えた。

 シュナしか見ていなかったヴィズラコンティの体は不意な一撃をあっさりともらい、体を壁へと激突させ、そのまま外へと吹っ飛んでいってしまった。

 そして、シュナの涙で潤んだ瞳に一人の人物が映る。

 待ち焦がれ、何度もシュナが心の中で助けを呼んだ海原恭弥(かいばら きょうや)が、そこには立っていた。


「悪い。遅くなった」


 片膝をついて申し訳なさそうに謝り、シュナの様子を確認した恭弥は、そっと自分の上着をシュナに羽織らせた。

 そこで改めて己の状態に気付いたシュナはその頰を紅潮させた。


「あ……ありがとうございます」

「……すぐに片付けてくる。シュナは親父さんを頼む」


 恭弥の顔は見えなかったが、彼の声からは殺意ともとれる程の怒りがありありと伝わってきて、シュナは何度もその背中に声をかけようとしたが、結局その言葉が口から出ることはなかった。

 その場に残されたシュナは、ただその背中を見つめ続けることしかできなかった。

 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 この小説の作者は基本的にやりたい事をやってみたい性格であるため、今回は出来たら次の日には投稿というアホみたいな事をしています。

 その為、書きだめは無く、次話のアイデアも殆ど無いという実質ノープラン状態。結果、不定期更新となります。

 こんな馬鹿な作者ですが、読者の皆様方には暖かい目で見守っていただけると幸いです。


 先々週、母の日用のプレゼントとして日本酒を買いにちょいとお洒落な酒屋に弟と共に寄った鉄火市。ちょうど弟の誕生日でもあった為、弟に「弟もお酒選んでいいよ~」と提案。そしたら1000円弱の日本酒を持ってきて笑ったね。もっと高いのおねだりしていいぞ弟よ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 弟くんが気遣いしてるとこ 誕生日、おめでとう!!(*^^*) [一言] 更新ありがとうございます!! 襲撃時の恭弥の甲高い〜はコレだったのか… シュナちゃん、完全に堕ちたな……w(๑♡⌓…
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