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第7話:白蛇だろうがなんだろうがかかってこいや!!(3)

 前回のあらすじ。

 修の新武器バーストハンマーが炸裂し、ジャイアントスネークを圧倒するもそれだけではジャイアントスネークを倒すことができず、修は新たな術をソフィアから学ぶのだった。


「硬い鱗だな……」


 首根の部分に強烈な蹴りを叩きこんだ海原恭弥(かいばら きょうや)は、まったくダメージが入っていない様子のジャイアントスネークを見て舌打ちした。

 威力に圧されて倒れたりはしているが、そのどれもが決定打となっていない。

 その答えは見て明らかで、ジャイアントスネークの体を覆う硬く平たい鱗が、蹴りの威力を殺し、ダメージを逃していた。

 完全なる実力不足が、恭弥の歯を軋らせる。


「あの酔っぱらいに言われた通りだな。俺の今の実力じゃ、これから先の戦いには勝てねぇ」


 地面へと着地し、飛んできた毒の液を恭弥は軽やかな足取りで避けた。だが、その直後、恭弥は足を止め、立ち止まった。


「確か……こうだったか」


 その言葉を告げた恭弥の後方にいた伊佐敷 遥斗(いさしき はると)はまるで信じられないものでも見たかのように目を見開いた。


「キョウヤお前……いったいいつ習ってたんだよ……」


 遥斗がぼやいたその言葉は誰の耳にも届かない。

 そして、遥斗の前で恭弥は跳躍した。

 とても人技とは思えない遥か高く、見上げる程高い大空へと跳躍した。

 まるで足がバネにでもなったかのような人間性の欠片も無い跳躍に、ジャイアントスネークは敵を見失ったかのように首を左右に振り回している。

 だが一人、遥斗だけは恭弥の姿を完璧に視認していた。

 恭弥は自分でも今の跳躍を信じられていないようで、その表情から困惑した様子が伝わってきた。だがすぐに体勢を立て直し、真下へと落ちてきた。


「ったく、加減のかの字も知らない幼馴染を持つと苦労するよ」


 まるでサッカーボールのように足元の石を器用にリフティングし始めた遥斗。

 刹那、鋭い視線をジャイアントスネークへと向けた遥斗は、その石をジャイアントスネーク目掛けてシュートした。

 魔力のこもったその石は尋常ではない速さでジャイアントスネークの顔を捉え、その場所に一瞬固定させた。

 それはほんの一瞬、だが、時間はそれで十分すぎた。


「スーパーハイパーウルトラ最強メテオキック!!」


 遥か上空から放たれた蹴りは、 遥斗のシュートで固定されたジャイアントスネークの頭を打ち下ろした。

 その威力は今までのものとは比べ物にならない程の威力で、流石のジャイアントスネークでもすぐには起き上がれなかった。

 強烈な蹴りを放ち、悠々と地面に降り立った恭弥に、遥斗が近づいていった。


「お疲れ〜。キョウヤお前、いつ鎧武装(がいむそう)なんて使えるようになったんだよ?」

「まだ完全に、とまではいかねぇがな。ダンジョンでぶっ倒れる前、魔力を使うコツってのをあの酔っぱらいに教えられたからな。リベンジの為に最近魔力を感じる特訓ってやつをしてたんだよ」

「なるほどな。僕が倒れた後でそんな楽しそうなことやってた訳か。でも、マーリンさんのような最低限の魔力で器用に戦うやり方とはちょっと違う感じだね。最初から全力フルスロットル、百から百へ、溜めてドカン! って感じか。キョウヤの鎧武装(がいむそう)は威力の調整や溜めるまでの時間ロスがまだまだって感じだから練習あるのみだね」

「だな。ちょっと貧血みたいな感じでクラクラするわ」

「そりゃそうだ。ちょっとゆっくり休んでろ。討伐証明の鱗は僕とシュウがぱぱっと取ってくるから」

「わりぃな。そうさせてもらうわ」


 そう言った恭弥が近くの岩に腰をかけようとした時だった。

 ゆっくりとジャイアントスネークが頭を起こした。

 ただ、その様子は先程までとは違いフラフラとしていた。


「まだやる気か? 見上げた根性だな。お前が人間なら是非とも仲間にしたいレベルだぜ」


 腰かけるのをやめ、再び戦闘を再開しようとした恭弥。

 フラフラとしていた足を根性で止め、その表情を戦闘モードへとシフトした。

 だが、次の瞬間、ジャイアントスネークは口から周囲一帯に紫色の霧を吐きだした。


「毒だ!」


 戦いに赴こうとしていた恭弥の体を無理矢理後ろへと引っ張り、遥斗は紫色の霧が届かぬところまで恭弥の体を引っ張った。


「クソっ、まだこんな技を隠し持ってやがったのか」


 悪態をつきながら、ジャイアントスネークの方に向きかえる恭弥。

 そんな恭弥の耳に木を薙ぎ倒しながら移動する音が届いた。

 だが、その音はまるで離れていっているかのように感じられるものだった。


「まさか……撤退の為の目眩ましか?」


 歯を軋らせ、その表情に怒りの色を浮かべる恭弥。

 そんな状態の恭弥が何をするかなど、幼馴染みにはお見通しだった。


「だめだキョウヤ!」


 追いかけようとする恭弥の体を後ろから遥斗が抱き止めた。

 当然、恭弥の表情は怒りで満ち満ちていた。


「なんで止める遥斗!」

「いいから冷静になれ! あの霧がまだ晴れてない! きっと空気より軽いから滞空時間が長いタイプなんだ! 追えばお前が死ぬぞ!」

「じゃあどうしろって言うんだよ!」

「俺っちに任せな!」


 その声に振り返ると、そこには拳銃型の改造釘打機を構えた雷堂修(らいどう しゅう)の姿があった。


「任せなってお前……その改造釘打機じゃ当たっても弾かれるだけだぞ?」

「まぁ見てなって」


 何故か自信満々に告げた修の姿に首を傾げる遥斗。

 そんな遥斗に目もくれず、修は必死に逃げていくジャイアントスネークに照準を合わせる。

 そして、愉しそうな表情で舌なめずりをした。


「蛇如きの浅知恵で俺っちを撒けると思うなよ?」


 一閃。修が引き金を引くと、突然レールガンのような光線が修の改造釘打機から放たれた。

 その光線は線上の木々を消滅させ、逃げていたジャイアントスネークの胴体を貫いた。

 だが、遥斗にとってはそんなことなどどうでもよかった。

 直前で嫌な予感を感じ取ったお陰で傷こそは無いが、あと一歩でも逃げるのが遅れていれば、人間の丸焼きが二つ程転がっていたことだろう。

 そんな未来を予想してか、遥斗の額から冷や汗が落ちた。


「あっ……ぶね〜な~! シュウテメェ! そんなあぶねぇもんぶっ放すなら先に……って、なにやってんだお前?」


 遥斗が振りかえると、そこには後ろにぶっ飛び、背中の木にぶつかって目を回す修の姿があった。


「こいつ、残ってた魔力全部使ったのか? うちには加減バカしかいないのか?」


 呆れ返る遥斗。そんな遥斗が後ろを見ると、恭弥がアップを始めていた。


「修のお陰で毒の霧が晴れたな」

「確かに……ってキョウヤお前――」

「悪いな遥斗、今回ばかりは見逃してくれ」


 遥斗の目は、恭弥の右手に集約していく魔力の流れを見逃さなかった。

 そんな恭弥の姿を見て、遥斗は大きくため息をついた。


「はぁ……お前が最初からこんな約束を守りきるなんて思っちゃいなかったよ」

「わりぃな」


 恭弥はなにかを掴んだような感覚に従い、自身の中に流れる力の本流を右手に集約させていく。


「いくぜ新必殺」


 その言葉と同時に、恭弥は地面を強く蹴った。

 修の攻撃を受けたからかジャイアントスネークの動きは鈍重としており、距離を詰めるのにそう時間はかからなかった。


「最強右ストレート改!」


 恭弥の拳が炸裂した瞬間、今まで強固な鱗で護られていた体はその威力に耐えきれず破裂。

 凄惨な真っ赤な雨が、周囲一帯に降りそそぐ結果となった。


 ◆ ◆ ◆


 恭弥達がジャイアントスネークと戦っている一方、ジャイアントスネークから襲われ、危機一髪で恭弥に助けられた三人の男は、洞窟の岩陰で身を潜めていた。


「ら……ラッキーだったぜ。まさか冒険者が助けに来てくれるとはな」

「ですね兄貴。まさか村の下見にあんなバケモンクラスの魔物と出会うとは思いやせんでした」

「本当だぜ。しかもあのジャイアントスネーク、魔物避け用の茸が効かねぇんだからたまったもんじゃねぇよ」

「むしろ興味すら持ってやしたよね」

「困ったもんだぜ……どうした、エイジ? さっきから黙ってなにか考え事か?」

「いえね。男どもはさておき、あの女が着ていた甲冑がやけに高級そうだったもんで」

「あの女って、あの目つきがえれーこえー女のことか?」

「えぇ、多分纏ってる雰囲気や甲冑から考えて貴族かなんかなんでしょう。しかも相当高貴なレベルの」

「あの女がお貴族様だってのか? そんな奴がなんだってこんな辺鄙な森に?」

「目的から推測するに、あのジャイアントスネークの討伐任務かなんかじゃないっすかね? あいつ他の個体と違うっぽかったし、多分『ネームド』の類なんじゃないっすか?」

「なるほどな。それで? お前は何が言いたいんだ?」

「あの貴族の女、攫ったら美味しいと思いません?」


 弟分のその言葉を吟味した瞬間、兄貴分の男はニヤリと笑った。


「まずはお頭に相談だな」


 そう言うと、三人は洞窟から出て森の奥へと消えていくのだった。


 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 この小説の作者は基本的にやりたい事をやってみたい性格であるため、今回は出来たら次の日には投稿というアホみたいな事をしています。

 その為、書きだめは無く、次話のアイデアも殆ど無いという実質ノープラン状態。結果、不定期更新となります。

 こんな馬鹿な作者ですが、読者の皆様方には暖かい目で見守っていただけると幸いです。


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