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第7話:白蛇だろうがなんだろうがかかってこいや!!(1)

 前回のあらすじ

 修に会いにガンツの工房へ赴くと、そこには政宗とマーリンの姿があった。

 三人を交え、今回のクエストについて話す遥斗。

 クエスト内容は毒茸が多く生える一帯に出没したジャイアントスネークの討伐。

 だが、政宗は刀の手入れに時間を要する為欠席。太一も、以前生えてる毒茸を食べて動けなくなった前科がある為欠席。

 そんなこんなで恭弥、遥斗、修、ソフィアの四人でクエストに向かうのだった。

 


 深緑に包まれる森の中、海原恭弥(かいばら きょうや)伊佐敷遥斗(いさしき はると)雷堂修(らいどう しゅう)、ソフィアの四人は周囲を警戒しながら歩いていた。

 しばらく歩いていると、恭弥達は目的地である茸の群生地にやってきた。

 一帯には明らかに毒を持っていると思えるような茸しか生えておらず、恭弥はその臭いもあってか顔をしかめた。

 そんな毒茸の一つ、真っ赤でうにゃうにゃしている茸を、修が一つむしり、気色悪そうなものでも見るように、それをポケットから取り出したビニール袋に入れた。


「シュウ、そんな見るからにやばそうな茸をどうするつもり?」

「後で村の連中に効果聞こうと思ってさ。使えそうなら武器にも出来るじゃん?」

「相変わらずだね。一応死ぬような毒だったら捨てときなよ」

「もちろん。それにしてもここら辺って毒茸が多いよね。ここ以外にも村の北や西の辺りにも結構あるけど、道路がある東側には全然無いじゃん?」

「太一みたいに生えてる茸を調べずに食う奴でもいたから東側の茸は根まわしにしたんじゃないか?」

「キョウヤ、それを言うなら根絶やしだよ。ていうか、そんな食い意地の張った奴がタイチ以外に居たとは思えないけどね」

「なんでも八十年程前にマーリンさんのお祖父様がファクトリ村の周辺に植えられたそうですよ」


 ソフィアが淡々と告げたその内容に、遥斗は興味深そうな目を見せた。


「詳しくうかがっても?」

「詳しくと言われましても、(わたくし)も聞いた話なので詳しくは知りませんが、あのファクトリ村は開拓村だそうで、八十年前、ここら一帯は多くの肉食の魔物が縄張り争いをしていました。家を作ろうにも魔物が邪魔で出来ず苦戦、挙句の果てには担当していた貴族が匙を投げる始末。そこに出自不明の冒険者が手伝おうと名乗り出て、その圧倒的な実力で周囲の魔物を倒していったそうです」

「それがマーリンさんのお祖父様って訳ですか」

「その通りです。その方は隠居生活をする為の家が欲しいということで、自分一人で倒した魔物の素材を村の開拓資金に当て、村の開拓に大きく貢献したそうです」

「わ〜お、超善人じゃん」


 ソフィアはひやかす修に冷徹な眼差しを向けると、話を続けた。


「話を続けましょう。一帯の魔物を倒し、なんとかファクトリ村はできるも、魔物の襲来は後を絶ちませんでした。その度にマーリンさんのお祖父様が対処していたそうですが、被害は続出。そこで村の周りにこういった毒茸を植えたのです。ここら一帯の毒茸には魔物が嫌がる臭いを発する物が多く栽培されており、その結果、魔物は近寄らなくなったという訳ですね」

「なるほどね〜。でも、今回俺っち達が向かうのってその毒茸が多く生えてるエリアなんでしょ? 意味わかんなくない?」

「貴方達の世界にもいませんでしたか? 過酷な環境や食事で生態を変える生物が?」

「確かにいますね……あぁ、なるほど。ようやくあの文言の意味に合点がいきましたよ」

「文言ってなんだ、遥斗」


 なにかに気付いた様子の遥斗を見て、恭弥の視線が遥斗に向かう。しかし、恭弥の言葉にソフィアが口を開く。


「今回のクエストは緊急と呼ばれる類いであり、同時にAランク以上の冒険者が所属するパーティーで討伐するように、と書かれていました。本来であればジャイアントスネークはBランク冒険者で事足りる存在、パーティーであればCランクさえ所属していれば容易に討伐できる魔物でしょう。しかし、そのジャイアントスネークが普段よりも高い討伐条件が課されている訳、それは最後に書かれていた一文、『毒茸を食しており、毒の霧を吐く可能性あり』という内容や生息地が毒茸の群生地付近で目撃されたという内容から察するに、今回の討伐対象であるジャイアントスネークは毒茸に順応出来るネームドクラスであり、ファクトリ村の周辺にある毒茸を根絶させる可能性があると示唆されているからだと私は睨んでおります」


 ソフィアは深刻な表情で告げる。だが、肝心の恭弥と修は未だに意味がよくわかっていないのか、ポカンとした表情を見せていた。


「ん〜、ネームドクラスってあのスライムと同等以上のレベルで危険ってことはわかるんだけどさ。毒茸の方は別に食ってようがなかろうがどうでもよくね?」

「それがそうでもないよ。ここら一帯の毒茸はファクトリ村を魔物から守る目的で植えられている。そんな茸を食べる魔物が現れた場合、効果が薄まり、昔のように魔物が毎日襲ってくるようになるだろうね」

「なるほどな。要するに俺達がその蛇殺らなきゃあの村が滅ぶって訳か」

「ええ、八十年もの月日で毒茸が群生地を拡げたとはいえ、いつここに来てもおかしくはありません。早急に討伐すべきでしょう」


 恭弥の言葉にソフィアが肯定したところで、急に先頭を歩いていた修が足を止めた。

 修は静かに恭弥達を手で制し、その場にかがんだ。


「……なにか巨大な生物が通った跡があるね。草がまだ倒れてるってことはかなりの重さか、通ってまだそう時間が経ってないのか……あの木とあの木、倒れ方が中途半端で左右に倒れてる。もし、あれが蛇の通った跡だとすると、横幅だけでも軽く二十メートルは超えるね。まぁ、別の個体だと楽観視してもいいけどね」


 修の最後の言葉はソフィアに向けられたもので、修の表情はどこか楽しんでいるようにも見えて、ソフィアは少しムッとしたような表情を見せた。


「現実逃避をしたところで無意味でしょう。横幅は二十メートル以上の大きな個体と想定し、策を練るべきです」

「ふ~ん……ちょい待ち、これって靴跡っぽくね?」


 修が指を差した場所を遥斗も後ろから見るが、まったくわからなかった。


「えっ、どこらへん?」

「よく見なよ。蛇の通った跡の中に靴っぽい跡があるじゃん。ほらここ!」


 修はそう言って足跡を指差すが、遥斗にはさっぱりだった。


「大きさや形が異なる足跡が全部で三種類、しかも蛇の軌道に沿ってついてる。おまけに、これは通った後に蛇が通過したような跡のつき方だね」

「ということは村人の誰かが追われているかもしれないということなのですか!!」


 取り乱すように告げるソフィアに、修はいつもと違って真剣な表情で答える。


「村人の可能性はあるかもね。でも、冒険者の可能性もある。例の蛇の生態調査とかやってるって村出る時に遥斗君が教えてくれたし」

「あぁ……そういえばそんなことも言ってたな。教えてくれたギルド職員が男だったからあんまり真面目に聞いてなかったけど、確かCランクの冒険者が三人派遣されてたかな。そいつらも全員男だって話だったから興味がなくなって人となりまでは覚えてないけど」

「こういうところさえ無ければ優秀なのに……」

「まぁまぁ王女様、うちの参謀君はやる時にはやるんで。むしろただ仕事が出来るだけの生真面目マンとかつまんないじゃないっすか」


 修が冗談交じりに笑いながらそう告げた時だった。


「助けてくれ〜!」


 突如として森の奥から木霊が響き、全員の表情が真剣なものへと変わった。


「恭弥君、靴の大きさ的に成人した男である可能性は高いけど、その割に足跡がすごく浅い。ネームドクラスの生態調査をしにきた冒険者にしては装備が少なすぎる」

「なるほどな。まぁ、冒険者の場合はどうだっていいが、世話になってる村の連中がピンチかもしれねぇってんなら行かねぇ訳にはいかねぇよな」

「まぁ恭弥君ならそう言うよね〜」

「修、場所はわかるか?」

「木霊で正確な距離まではわからないけど、どうやら蛇の進行方向と同じ方角っぽいね」

「よし。なら行くぞ、お前ら!」


 その言葉に否の返事はなく、四人は恭弥を先頭に声のした方へと走るのだった。


 ◆ ◆ ◆


 恭弥達が走っていると、木々の隙間から蛇特有のうねる白い巨体が映った。


「そろそろかち合うぞ」

「キョウヤ、再三言ってるけど毒には注意な。常に口元には注意を払っとけよ」

「わかってるよ!」


 恭弥の表情に狂喜とも言える笑顔が貼りつくと、恭弥のギアが上がり、遥斗達との距離を一気に開けた。そして、恭弥は勢いそのまま強烈な飛び蹴りを白いジャイアントスネークに向かって放った。

 ジャイアントスネークは想定外な一撃に対処することすら叶わず、そのまま地面へと倒れた。

 そんなジャイアントスネークの上に恭弥が降り立つ。


「おいおい、せっかく暴れられるようになったってのにもう終わりか?」


 煽るように告げる恭弥。

 そんな恭弥の視界に三人の男達の姿が映った。


「お前らが遥斗の言ってた冒険者か?」

「えっ、あ、あぁ」


 男の一人がたじろぐように答える。

 男達の身なりはお世辞にも良いものとは言えず、荷物や武器といった物は持っていなかった。

 一瞬恭弥は違和感を覚えたが、昂ぶる意識がそれをどうでもいいと判断した。


「蹴りだけとはいえ久々に全力で遊べるんだ。悪いがこいつは俺がもらうぞ」


 巨大な魔物を相手にしているとは到底思えない程の笑みを浮かべる恭弥を見てゾッとしたのか、三人の男達は青ざめた顔のまま何も喋ろうとしない。

 そんなやり取りをしていると、遥斗達が恭弥に追いついた。


「恭弥く〜ん。そいつ起きそうだけどそんなとこ居て大丈夫なの〜」

「問題ねぇよ!」


 恭弥はその場を勢いよく跳ぶと、起き上がってきた首の顎を蹴り上げ、そのまま何事もなかったかのように遥斗達の元へと着地した。


「おかえり〜」

「ただいま」


 恭弥と修のやり取りの横でジャイアントスネークは再び地面へと倒れ、大きな土煙を上げた。


「太一君がやったのよりも大きい個体だったからちょい不安だったけどわりといけそうだね。どう? 一人で殺れそう?」

「動きは遅すぎて攻撃を外すのが難しいってレベルだな。ただ、皮膚が異様に硬い。コンクリートを壊す方がよっぽど楽ってくらいかてぇ」

「ふ〜ん、じゃあ恭弥君は自由に動いてよ。反撃されないように援護しとくから」

「好きにしろ。だが、修の釘打機じゃ弾かれるだけだと思うぞ?」

「そんなこともあろうかと……」


 修は白いポケットに手を突っ込むと、中から彼の身長と同じ長さのハンマーを取り出した。


「対ババア決戦兵器、バーストハンマー。おっさんと俺っちの合作だよ〜ん」

「イカスじゃねぇか」


 黒色の厨二センスをくすぐるデザインに目を輝かせる恭弥とは違い、遥斗は露骨な溜め息を吐いた。


「ババアって、またマーリンさんに怒られるよ」

「大丈夫大丈夫、慣れてるから」

「そんな呑気に喋ってる場合じゃないでしょう!」


 ソフィアが怒るように告げた直後、修と遥斗、そして恭弥の三人を、ジャイアントスネークの口が襲った。


 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 この小説の作者は基本的にやりたい事をやってみたい性格であるため、今回は出来たら次の日には投稿というアホみたいな事をしています。

 その為、書きだめは無く、次話のアイデアも殆ど無いという実質ノープラン状態。結果、不定期更新となります。

 こんな馬鹿な作者ですが、読者の皆様方には暖かい目で見守っていただけると幸いです。


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