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第6話:巨大な蛇だろうがなんだろうがかかってこいや!!(3)

 前回のあらすじ。

 恭弥は不思議な夢を見た。

 それは、フェンネルが謎のローブの男に倒される夢だった。

 恭弥が目を覚ますと、何故かラウルスト山岳地帯から少し離れた村『ファクトリ』という村にいた。

 


 考え事をしている海原恭弥(かいばら きょうや)の意識が甲高い声で現実へと戻る。

 自然と恭弥の目も声のした方へと向く。

 見れば、十歳程の少女が数人の同年代くらいの子ども達を連れて恭弥が筋トレしている場所まで連れてきているのが見えた。

 子ども達は恭弥に気付いていないらしく、恭弥もまた、自分の存在を自らアピールするようなことはなかった。

 すると、先頭を歩いていた少女が声を発した。


「アルはすごいんだから! まだ六歳なのにもう魔法が使えるのよ! ほら、皆に見せてあげて!」 


 ツインテールの少女がアルと呼んだのは、ぬいぐるみを抱きしめた中性的な可愛らしい少年だった。


(あんな小さなガキでも魔法が使えんのか?)


 魔法が無い世界から来た恭弥の好奇心が少年へと向くが、次の瞬間、少年は涙目になりながらぶんぶんと首を横に振った。


「なんだよ、またリーシェの嘘かよ」

「嘘じゃないもん! 本当にアルはすごいんだから!」

「出来もしね〜のに嘘ばっか」

「嘘じゃないってば!」


 言い争いになり始め、恭弥の興味がなくなりかけたその時、パシンとを叩くような音が恭弥の耳に届いた。

 見れば、涙目で顔を真っ赤にした少女が子どもの一人を叩いている現場が目に入った。

 それは、少年達の怒りを買った。

 殴られた少年が少女に掴みかかりグーで殴ると、アルと呼ばれた少年以外の少年が一斉に少女と殴り合いの喧嘩をし始めた。

 それは流石に看過することは出来なかった。


「おい、お前達」


 恭弥の口から出た声が少年達の動きを止め、木から降りた恭弥にその視線を釘付けにさせられた。

 怯えが混ざった眼差しを向ける子ども達を見て、恭弥は呆れたように言い放つ。


「男が女一人によってたかって手をあげてんじゃねぇよ。見苦しい。男なら売られた喧嘩は一人で買え」


 筋肉質で上裸の威圧的な男にそんなことを言われ、子ども達の表情は青ざめ、中にはズボンが濡れている子どももいた。

 そして、一番最初に殴られた少年が叫び声をあげながら逃げ出した途端、周りの少年達もそれを追いかけるように一目散に逃げ出してしまった。

 残ったのは殴られ、気を失った例の少女とがくがく震えたアルという少年のみ。


「こいつらどうすっかな〜。このまま放置なんて流石に後味が悪過ぎるしな〜」

「あの……」


 後ろから声をかけられ、振り返ればそこにはおずおずとした様子のシュナが立っていた。


「なんだ?」

「り……リーシェちゃんの治療をしたいのですが……その……お部屋をお借りしてもよろしいでしょうか?」


 怯えるような声ではあったが、この一週間、シュナが自ら声をかけてくるようなことはほとんどなく、ましてや自分の意見を告げるようなことは一切無かった。

 そんな彼女の言葉は、恭弥にとって好都合以外の何物でも無かった。


「元々は俺が借りている立場なんだ。自由に使ってくれ。そこの娘は俺が運ぼう」

「あ……ありがとうございます! すぐに準備してきます!」


 お礼を言い、部屋へと戻っていったシュナを見送ると、恭弥は意識を失った少女を、まるで俵でも運ぶかのように右肩に抱え上げた。

 そして、部屋へと運ぼうとした瞬間、ズボンが引っ張られるような感覚を覚えた。

 見れば、そこには怯えた様子でありながら、恭弥のズボンを掴む少年の姿が映った。


「お……お姉ちゃんを……連れてかないで……」


 恐怖を覚えながらも気丈に振る舞う少年の様子を見て、フッと小さく笑うと、恭弥はワシャワシャと少年の頭を不器用に撫でた。


「次はちゃんとお前が守ってやれよ」


 少年に向かってそう告げると、恭弥はその少年と共に、部屋へと戻っていった。


 ◆ ◆ ◆


 伊佐敷遥斗(いさしき はると)は、ポリポリと頬をかきながら、恭弥がいるファクトリ村の家に向かって歩いていた。

 だが、彼は一人では無い。

 隣には、ファルベレッザ王国の第三王女でありながらも、甲冑騎士団の副団長を務めるソフィアが暗い表情で歩いていた。


「仕方ありませんよ王女様、ここはファルベレッザ王国から遠く離れた大陸なのでしょう? 情報が届くのに時間がかかるのは仕方無い――」

「仕方無い!? 国を離れてからもう一ヶ月以上も経っているのですよ! それなのにフェンネル団長から音沙汰が無いなんておかしいではありませんか! (わたくし)はこう見えても一国の姫なのですよ! その私が国から消えればどうなるかくらい聡明な貴方ならわかるでしょう!」


 怒りと不安の入り混じった声で、ソフィアは遥斗に対して強く怒鳴った。

 普段の毅然に振る舞う彼女であれば、周囲の目があるこの状況下で声を荒げるような真似はしない。

 それほどまでに、ソフィアに余裕はなく、だからこそ、遥斗も慎重に言葉を選んだ。


「理解はできます。ですが、同時に違和感も覚えます」

「どういうことでしょう?」

「フェンネル・ヴァーリィ。彼は世界最強と噂される程の実力者です。先程赴いた町ですら、近接において彼の右に出るのは剣聖と呼ばれた男のみと言っていました。魔人の襲撃があった直後に彼を処刑するなんて、まず考えられません。それが意味することはただ一つ」

「……それはなんでしょう?」

「普通に忘れてるだけなんじゃないですか?」


 遥斗が真顔で出した結論に、ソフィアは思わず絶句してしまった。


「僕は以前、牢屋で会う前に彼と顔を合わせたことがあるのですが、その時の印象はいい加減で自分勝手、おまけにマイペースと、とても常識のある男には見えませんでした」

「……まぁ、否定はできませんね」

「あんな男が連絡をまめに取るような性格とは到底思えませんね。きっと既読スルーとかして普通に返信忘れるタイプですよ、あれは」

「既読スルーというのがわかりかねますが、確かに団長は重要な書類を期日までに守らなかったり、大事なパレードですら私用で抜け出すいい加減な方ですからね。……国に帰ったらお灸をするねばなりませんね」


 そう告げると、ソフィアはぶつくさとフェンネルに対する報復のアイデアを出し始めた。

 その内容は遥斗が戦慄を覚えるものではあったが、表情はどこか前向きになっていた。

 遥斗はソフィアに恭弥が見た不可解な夢の話は伝えていない。

 不確定という理由はもちろんあるが、最も大きな理由は、ソフィアがフェンネルのことを心の底では好いているということを理解してしまったからだ。

 言葉の節々から感じられる感情の機微。

 先程までも、国の心配よりもフェンネルの安否を気にしているように思えたからこそ、遥斗は敢えてフェンネルが無事であるように伝えた。


(王女様の表情を見るに正解だったみたいだけど、結局はバレる嘘。キョウヤが僕と同じようにあの実を食べて変な力を得たんだったら、あの夢は未来、もしくは過去に実行された現実だってこと……あんまり考えたくないね〜。あの怪物より上がいるなんて)


 そうこう話しているうちに、遥斗とソフィアは恭弥がいる借家に近づいていた。


「あらら、デートは終わりか」

「何がデートですか。貴方がどうしてもついていきたいと言ったから護衛役として許したまでです」

「最近盗賊団が近くに出没しているって聞いたらそりゃ護衛もしますよ」

「私は甲冑騎士団の副団長ですよ。盗賊如きに遅れはとりません」

「一対一のタイマンで勝てたところで盗賊相手じゃ意味が無いでしょう。まぁ、もし遭遇したとしても逃げるの第一で頼みますからね」

「わかっていますよ!」


 そう言いながら怒ったように思いっきり借家を開けたソフィアの目に映ったもの。

 それは、キャッキャと喜ぶ少年を肩車して部屋の中を駆け回る恭弥の姿だった。


「あれ? おかえり。珍しいな。ソフィアと一緒なんて」


 まるでいつも通りの反応を見せる恭弥を見て、遥斗は呆れて溜め息を吐いた。


「……それはこっちのセリフだよ、キョウヤ。その子誰? なんで肩車してんの?」

「誰って……そういや名前聞いてなかったな」

「僕はアルフィーだよ!」

「だそうだ」

「だそうだって……キョウヤのことだから誘拐した訳じゃないんだろうし、何がどうなったらそういう状況になるんだよ」

「何がどうなったらか……簡単に言うと、そこで筋トレしてたらなんかガキ共が喧嘩し始めて、女のガキを相手に一対四なんてつまんねぇことしてたから止めた。そんでシュナのやつが治療するからって部屋貸してるところだな」

「……まぁ、なんとなくわかったわ。とりあえずさっき町のギルドでクエスト受けてきたからその話したいんだが……子どものいるところじゃ流石にしにくいな。しょうがない。シュウのいる工房にでも行くか」


 アルフィーをおろしながら聞いていた遥斗の言葉に、恭弥はまるで信じられないものでも聞いたかのように、驚いた表情を遥斗に向けた。


「俺も行っていいのか?」

「リョウさん曰く、もうほぼ完治状態なんだとさ。とりあえず今回は急ぎな上にちょいと厄介なんだそうだ。マサムネが不在な以上、キョウヤとシュウがいなきゃめんどくさそうだからむしろ来いって感じだな。一応言っとくが、左手は念の為使用禁止な。出来るだけ蹴っとけ」

「あんまり蹴るのは得意じゃないんだが」

「あっはっは。昔、拳を使う価値もねぇって半グレ百人を一人で蹴り倒した奴がなにを言ってるんだか。ほら、善は急げだ。早く行くぞ」

「……まぁ、久々に暴れられるんならなんでもいっか。わりぃな、アルフィー。帰ったらまた遊んでやるよ」


 そう言ってアルフィーの頭をワシャワシャと不器用に撫でると、恭弥は出ていった遥斗とソフィアの背を追って外へと出るのだった。


 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 この小説の作者は基本的にやりたい事をやってみたい性格であるため、今回は出来たら次の日には投稿というアホみたいな事をしています。

 その為、書きだめは無く、次話のアイデアも殆ど無いという実質ノープラン状態。結果、不定期更新となります。

 こんな馬鹿な作者ですが、読者の皆様方には暖かい目で見守っていただけると幸いです。


 子どもを書きたい欲求を満たしたいが為の子ども召喚だったりなかったり〜

 そのせいか筆が進む進む♪

 ちなみにリーシェちゃんはツインテで、アルフィー君は短髪クリクリお目々の可愛らしい男の子です。

 これは絶対に譲れなかった〜

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