表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/86

第3話:未知の魔物だろうがなんだろうがかかってこいや!!(1)

 前回のあらすじ。

 モンキーレンチ投擲によるダメージは見込めず、釘による射撃も効果がない化け物を相手に逃げ切れないと悟った修の前に、恭弥と政宗が現れる。

 政宗と修をひかせ、恭弥は一人残るも、怪物は恭弥の一撃を受け、その身を退かせるのだった。


 海原恭弥(かいばら きょうや)伊佐敷遥斗(いさしき はると)須賀政宗(すが まさむね)山川太一(やまかわ たいち)雷堂修(らいどう しゅう)の五人は、現在、ダンジョンという名の地下迷宮にいた。

 というのも、ファルベレッザ王国で処刑される立場となった彼らを逃がし、尚且つ修行をつけさせようと思い立ったフェンネルの独断によるものだった。

 そんな後先考えていないアイデアに振り回され、無理矢理連れてこられたファルベレッザ王国の第三王女であり、甲冑騎士団の副団長、ソフィア。

 そして、フェンネルを育てた師、酒乱マーリンと共に、恭弥達はマーリンが個有能力(ユニークスキル)迷宮創造(ダンジョンクリエイト)』で造ったダンジョンに挑むこととなる。

 だが、それはフェンネルが攻略するのに五年もかけたという難易度の高いダンジョンだった。

 脱獄直後だったこともあり、疲労は見えるものの、恭弥達は太一と修の活躍もあって、第一層のボス部屋を攻略。

 次は二階層へと思われたところで、身体の疲労もあり、ダンジョン攻略を一旦中断。明日へと持ちこそうとするが、暴れ足りないと修が単独で下の階層へと降りた。

 オークに次ぐオーク、倒しても倒してもオークというつまらない展開に気落ちするも、修は満足するまで暴れ回った。だが、その直後、修は唐突に嫌な存在を感じ取った。

 それはダンジョンモンスターと呼ばれるダンジョンの魔物達が現れる黒い靄のような物を纏った正体が不明瞭なダンジョンモンスターだった。

 釘の残弾も心許ない状況で挑むほど修は無謀ではないが、退路を塞がれ、修はなくなくそのダンジョンモンスターと対決することになる。

 だが、攻撃がまったく効かないうえに手数が徐々に増えていく怪物を前に、修の心が折れる。

 諦め、生を諦めたその時、恭弥と政宗の救援が修を救った。

 手負いの修と七天抜刀流の反動でまともに動けない政宗を逃がし、恭弥は一人で対峙しようとするが、恭弥が一発放ったところで、ダンジョンモンスターはその存在を消した。

 そんな訳で、ダンジョン攻略二日目、恭弥達は朝から天井に穴を開けてやってきたソフィアとマーリンを含めた七人で、昨日起こった出来事について話し合っていたのだった。

 

「それは……本当にあった出来事なんですか?」

「それが普通の反応ですよね」


 ソフィアは信じられないという心情を全面に出した顔で話をした遥斗の方を見た。

 だが、遥斗もその反応が想定通りだったようで、特に気にした様子もなく続ける。


「僕も聞いただけじゃ信じられない話ですよ。暗い場所だったとはいえ、このシュウを相手にそこまで一方的に攻撃してくる魔物がいたなんてね。とはいえ、キョウヤとマサムネもその靄がかった魔物を見たと言っている。それなら現実逃避をせず、その魔物の対処法を模索してから先に進むべきでしょう」

「それは……確かにその通りですね。マーリンさん、なにかご存知ですか?」


 ソフィアに話を振られ、マーリンは一升瓶の酒を地面に置いて、考えるような仕草を取った。


「おかしいね〜。二階層はオークしかいなかったはずだよ? あいつらは灯りを消すなんて頭脳的な戦いなんてしない。どちらかといえば、肉弾戦しかしなかったはずなんだけどね〜」

「……なんでこの女、朝から酔っ払ってんだ?」


 恭弥は顔の赤いマーリンを見てドン引きするが、その直後に飛んできた一升瓶をひょいっと首だけで躱した。


「確かにそのオークって豚共とは昨日戦ったけど、とろい動きで躱しやすいし、攻撃もワンパターンだった。昨日のあいつとは全然違ったね」


 修はウェズの実を齧りながら、その情報を出すが、そのせいかマーリンが余計に首を捻った。


「そもそもこのダンジョンはわたしが設定したダンジョンモンスターしか出ないようになってる。フェンネルがここを出てから放置していたとはいえ、誰かが勝手にいじるなんてことは出来ない訳だし、そんなダンジョンモンスターがいるはず無い」

「酔った勢いで作ったとか普通にありそうじゃね?」

「それは流石に……無いと思いたいですね」


 ソフィアが修の言葉を否定しようとするが、なにか思うところがあったのか、目を泳がせて視線を反らした。


「マーリンさんにも王女様にもわからないんじゃ、流石にここでどうこう考えても仕方ないか。実際、キョウヤの話じゃ倒したかもしれないってことだったし」

「倒したってか、あれは一発殴ったら姿を消したって感じだったぞ。おそらく今もピンピンしてんじゃねぇか?」

「キョウヤの感覚がそうならその可能性が一番高いだろうね。どちらにしろ、ダンジョンの特性上、あれが一体とは限らない。もし戦闘になったら、警戒しながらも長期戦を想定。観察して弱点を導きだし、最高の一撃をぶちかます。お前らならやれるだろ?」


 その言葉に否は出ず、恭弥達は二日目のダンジョン探索に入った。


 ◆ ◆ ◆


「散開!」


 恭弥が大声で叫ぶと、その意図を察した修、遥斗、政宗の三人はその場を離れるように跳んだ。

 当然、号令を放った恭弥も跳ぶが、ただ一人、意図を察することが出来なかった太一だけが、その場でのほほんと突っ立っていた。


「ほぇ?」


 そして、そんな太一に向かって地を這う斬撃が放たれ、太一の巨体を吹き飛ばす。


「あの馬鹿……修! 様子を見てきてくれ!」

「世話が焼けるな〜」


 文句を言いながら、修は壁の方まで吹き飛ばされた太一の方へと向かっていった。

 修が近付いてみてみると、太一の服には斬撃の痕がくっきりとついているというのに、身体の方には傷は無く、目を回しているだけだった。


「う〜ん、無事っちゃ無事だけど、なんか壁に頭打ったみたいで目を回してるね」

「世話焼かせんなよ。ソフィア! 太一の回復を任せていいか!」

「問題ありません。やれるだけのことはしましょう」


 遠くから様子を見ていたソフィアは恭弥の言葉で、太一の方に向かうと、小言で詠唱を始めた。

 そんなソフィアに太一を任せ、修は恭弥達の元へと向かい、斬撃を放ったこの四階層のボス部屋の主、二メートルを超える鬼人と対峙した。


「この階層の道中で見たオーガって連中よりも一周り小さいけど、感じる圧は比べ物になんないね。こりゃ苦戦しそうだ」

「暢気に喋ってる場合じゃないぞ! 次に警戒!」


 赤色の鬼人は右手に握る大剣を軽々と振り回し、再び地をえぐりながら飛んでくる斬撃を放ってきた。

 当然、警戒していた恭弥はその斬撃を容易に躱してみせるが、突然、斬撃は軌道を変え、遥か後方にいたマーリンへと向かっていった。


「マーリンさん!」


 遥斗が叫ぶが、時既に遅し。

 斬撃はマーリンに直撃する。

 その場にいた誰もがそう思った直後、マーリンは一升瓶で斬撃を霧散させた。

 そして、鬼人を含めた全員を唖然とさせると、マーリンは一升瓶の酒を美味そうに飲み始めた。


「……やべぇな。一升瓶ってあんなに頑丈だったか?」

「キョウヤ!」


 ヒビ一つ入っていない一升瓶に恭弥が驚いていると、突然遥斗に怒りに満ち満ちた声で呼ばれた。

 恭弥がそちらの方を見れば、遥斗は怒気と殺意をはらんだ眼差しを鬼人の方へと向けていた。


「僕が指揮する」

「おう、頼むわ」


 短いやり取りで二人は互いの意思を完全に汲み取った。

 そして、恭弥が先に飛び出した。


「どうやらうちの参謀が相当お怒りのようだ。あんな酒乱のどこに魅力を感じてるのかは知らんが、とりあえず同情するぞ」


 恭弥は反応が少し遅れた鬼人の腹をコークスクリューパンチで穿つ。

 その一撃は鬼人の想定を遥かに超えており、地面に轍が出来る。

 そして、恭弥のターンはそれだけでは終わらなかった。

 すぐに開いた距離を縮め、怒涛の勢いで右手だけの連続ジャブを放つ。

 鬼人は止まらない攻撃を嫌ってか、右手に握った大剣を大雑把に振るった。

 大剣は跳躍で躱す恭弥に当たらなかったものの、怒涛のラッシュを止めることには成功した。

 しかし、安堵は束の間。鬼人の右手に三本の釘が深々と突き刺さる。

 それは耐え難い激痛を与え、鬼人は思わず大剣を離してしまった。

 そんな鬼人に迫る影が二つ。


「七天抜刀流は使うなよ。こんな雑魚に必要無いからな」

「敵を侮るのは危険でござるよ。遥斗殿」


 二つの影に目を向ければ、鬼人自身との距離はもうほとんどなく、鬼人は咄嗟に掴みかかろうと前方にいた遥斗の方に腕を伸ばした。

 直後、鬼人の身体が宙に浮いた。

 それは投げ飛ばされた時に感じる浮遊感で、鬼人は自分の身に何が起こったのかもわからず、居合いの構えを見せる青年に無様を晒した。

 そして、来るであろう攻撃に身構えようとした時には、鬼人に身構える身体は存在しなかった。


 ◆ ◆ ◆


 鬼人の首を斬り、黒い靄へと変換させた政宗の居合いを見て、マーリンは思わず乾いた笑いを発し、頭をかいた。


「いやはや、これは流石に驚かされたね〜。まさか四階層ボスの鬼人をこうもあっさり倒すとは、これはちょ〜っと侮りすぎたかね〜」

 

 マーリンはスカートのポケットから一枚のカードを取り出した。

 それは昨日、しれっとすっていた恭弥のギルドカードだった。


「どっからどう見てもDランク。わたしも俗世から離れて暫くだから最近のがどうかはわかんないけど、少なくともDランクは下の下ってところだろう? 連携とはいえ、そんな雑魚共がわたしの鬼人を倒せるはずが無い。こりゃソフィアちゃんの話を信じるしか無いっぽいね〜」


 マーリンはソフィアから恭弥達の素性を聞かされていた。

 百年前に魔王を封印させた勇者達と同じ世界からやってきた異世界の住人。そんな到底信用出来ない話を鵜呑みにするほど、マーリンは馬鹿じゃない。


(まぁ、再発行不可のギルドカードを無くして慌てていない時点でおかしいと思っちゃいたが、このペースじゃ本当に二週間足らずでここをクリアしちゃうかもな。……にしてもあの鬼人、前より弱くなかったか? いや、流石に気の所為だな。単純に数と戦法に圧されてそう感じただけだな)


 そんなことを思いながらも、マーリンは先を進む恭弥達の後を続くのだった。

 そして、五階層に降り立った時、そこで初めて異変に気付いた。


「魔力が……無い?」

 

 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 この小説の作者は基本的にやりたい事をやってみたい性格であるため、今回は出来たら次の日には投稿というアホみたいな事をしています。

 その為、書きだめは無く、次話のアイデアも殆ど無いという実質ノープラン状態。結果、不定期更新となります。

 こんな馬鹿な作者ですが、読者の皆様方には暖かい目で見守っていただけると幸いです。

 もし続きが気になるって方がいれば、応援メッセージに「続きまだですか?」とでも送ってください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ