表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/86

第1話:酔っぱらいだろうがなんだろうがかかってこいや!!(2)

 前回のあらすじ。

 副騎士団長のソフィアに案内され、恭弥達は一人の女性と出会う。

 遥斗に踵落としを食らわせ、修を一升瓶でかっ飛ばしたその女性は、自らをマーリンと名乗るのだった。


 一瞬にして伊佐敷遥斗(いさしき はると)雷堂修(らいどう しゅう)の二人を戦闘不能状態にしてしまったマーリンと名乗る女性を前にして、海原恭弥(かいばら きょうや)は動けないでいた。


「あんたがフェンネルが言っていた師匠ってやつか?」

「そうだよ〜。フェンネルの馬鹿は元気してる〜? ソフィアちゃんったらあの子の愚痴しか言ってくれないから全然わかんないんらよね〜」


 ぐねんぐねんと真っ直ぐ立つことすらままならないマーリンが、本当に強いのか、と恭弥の頭の中に疑問が過る。

 だが、一応はフェンネルを強くした張本人だと自分に言い聞かせ、恭弥はマーリンの言葉を無視して更に質問した。


「……俺達はフェンネルを超えられるのか?」


 恭弥の質問を聞いた須賀政宗(すが まさむね)が信じられないとでも言わんばかりの顔で恭弥の方を見た。

 これまで自分達に一切弱音を見せてこなかった恭弥の口から出た弱気な発言が、余程信じられなかったのだろう。

 マーリンは焦点の定まらない顔で恭弥の方を見る。


「う〜ん……フェンネルの馬鹿は線は細かったけど個有能力(ユニークスキル)って才能は持ってたんだよね〜。れも、あんた達は見た感じ身体は出来上がってる感じなんらよね〜。う〜ん、ちなみに個有能力(ユニークスキル)とかは持ってんの?」

「持ってねぇ」

「ふ〜ん。じゃあ、あんたら次第かな~」


 その言葉と共に、マーリンは指を鳴らした。

 直後、恭弥達は自分達の足場が消えていることに気付く。


「は……?」


 驚きの声を上げるのも束の間、足場を失った恭弥達の身体は重力の赴くがままに、落下してしまうのだった。

 床の位置はそれほど深くはなく、恭弥と政宗は地面へと軽やかに着地した。

 その隣では山川太一(やまかわ たいち)が大の字で地面にめり込んでおり、遥斗と修の姿も近くにはあった。

 そして、地面にめり込んでいる太一のお腹の上にソフィアをお姫様抱っこしたマーリンが降り立った。


「あれ? ダンジョンの一階層にこんなふっかふかな足場を造った記憶はないんだけどな~?」

「そこの御仁、太一殿から降りてはくださらぬか? 女子(おなご)を斬る趣味は無いゆえ、素直に聞いてくれるとありがたいのでござるが」

「ありゃりゃ? ごめんごめん。大丈夫だったかい?」

「う〜ん……大丈夫だよ〜」


 ソフィアを地面に下ろしたマーリンに手を引かれて太一は起き上がる。

 そんな二人をよそに、恭弥は周囲を確認した。

 火の灯った燭台がかかっている赤茶色の土壁が横に見えるが、室内という印象は得られない。何故なら後ろにも似たような壁はあるが、先がまったく見えない造りになっていたからだ。

 おそらく廊下のような構造なのだろうということだけはわかった。

 上を見ればそう高くない位置に天井があり、自分達が落ちたはずの穴は塞がっていた。

 光というには心細い光量の蝋燭の灯火が、恭弥の苛立つ顔を照らす。


「それで? ここはどこなんだ?」

「ここはね〜。わたしの個有能力(ユニークスキル)迷宮創造(ダンジョンクリエイト)』って能力で造られたダンジョンだよ。君達の修行場所って奴さ」

「ダンジョン?」

「そう。このダンジョンはわたしが造ったものだけど、ゴブリンやオーガなんかのダンジョンモンスターと呼ばれる魔物はちゃんと生息しているんだ〜。ただ、わたしの魔力で造られたダンジョンだから、防具や武具といったアイテムも出現しないからそのつもりでね?」

「モンスター? 魔物? なんか二つは違うのか?」

「そうですね。それには(わたくし)がお答えしましょう」


 恭弥の質問はマーリンに向けてのものだったが、それに答えたのはソフィアだった。


「外で一般的に知られているのは魔物ですが、これは食べるものによって異なり、肉を主食とする一般的に危険な魔物もいれば草花を主食とするおとなしい魔物もいます。ただ稀に、周囲の木々や魔物から発生した微量な魔力が集まり、ダンジョンと呼ばれる地下迷宮が出来ることがあります。ここにいる魔物達は……どうやら、説明よりも実戦で試してもらった方が早そうですね」

「なんだあれ?」


 ソフィアと恭弥が視線を向けた先には、黒い靄が浮かんでおり、不穏な空気を漂わせていた。

 恭弥の横に立った政宗が腰の鞘に刺さった刀に手をかける。

 そして、それから一秒と経たず、緑色の肌をした奇妙な二足歩行の魔物が黒い靄の中から這い出るように現れた。

 その数二体。


「人間の子ども……にしては肌が緑色だし可愛くねぇな」

「あれはゴブリンですね。集団と出くわした場合、少々面倒ですが、二体程度ならEランクの冒険者でも容易に狩れる魔物です」

「あんなのもこの世界にはいるんだな。政宗、やれるか?」

「弱者をいたぶる趣味はないのでござるが……致し方あるまい。峰打ちで気を失わせれば去るでござろう」


 刀をゆっくりと引き抜く政宗。

 そんな政宗の口から出た峰打ちという単語に強く反応したソフィアが声をかけるより先に、政宗の足は地面を蹴っていた。

 政宗の足は一瞬でゴブリンとの距離を縮め、政宗は間合いに入った瞬間、ゴブリンがこちらを感知するよりも先に刀を振った。

 一閃。

 政宗の峰打ちがゴブリンの身体をふき飛ばした。

 仲間が倒れたことに気付き、もう一匹のゴブリンが政宗に向かって持っていたナイフを振り下ろす。だが、ナイフが振り下ろされるよりも早く、政宗の胴打ちがゴブリンの身体をふき飛ばした。

 瞬く間に二匹のゴブリンを倒した政宗の表情に驚きの色が浮かぶ。


「峰で打ったはず……これはどういう」


 峰打ちで生かしておいたはずのゴブリン二匹が、政宗の前で黒い靄となって消えてしまった。

 そんな不可解な現象を前にして呆然と立ち尽くす政宗の後ろに、ソフィアは歩み寄る。


「ダンジョンに住んでいる魔物は倒しても黒い靄になって消え、素材や肉といったものをドロップしません。これが外に住む魔物との大きな違いです。なので、冒険者達の間ではダンジョンモンスターと呼んで区別しているそうです。それから、ダンジョンモンスターは人を見れば見境なく襲ってくる魔物なので遭遇した場合は躊躇う必要はありません。今後も手加減の必要は無いかと」

「……そうでござったか。すまぬな。今後は命無き怪物と認知するよう努めよう。世話をかけた」


 政宗は落ち着きを取り戻すと、刀を腰につけた鞘に納めた。

 なんとも言い難い雰囲気が流れるなか、恭弥がその空気をぶった斬る。


「よくわからんが、とりあえず森やなんとか平原にいた魔物と同じように魔物が湧いたら殺しゃいいんだろ?」

「そうだよ〜。君達がこのダンジョンでしてもらう修行はいわゆるダンジョン攻略って奴さ。わたしはこのダンジョンで君達の戦い方を後方で見てるから、君達はわたしとこの王女様を全力で守りながら進んでね〜」

「お任せください!!」


 マーリンが一升瓶を持った手でソフィアの肩を抱きながらミッションの内容を告げると、突然復活した遥斗がマーリンの空いていた手をがっしりと掴んで目を輝かせた。

 そんな遥斗の頭を横から一升瓶が襲い、遥斗の身体を壁に激突させた。


「ダンジョンの構造は十階層、一階ごとにボスは強くなってるから生半可な気持ちで挑むと死んじゃうから気をつけてね〜」

「あの遥斗殿をスルーするとは……相当の手練れのようでござるな」

「あれってスルーに入るのか? てか、遥斗も懲りろよ」


 政宗がマーリンに変な感心を示す中、マーリンは更に続けた。


「まぁ、フェンネルの馬鹿は十歳の時に放り込んで五年くらいでここをクリアしたから、そうだな〜、君達は五人居るし……よし! 一年くらいで攻略を目指してもらおうか!」

「い……一年ですか!? ここはそんなに難しいダンジョンなのですか?」


 マーリンの提案に一番驚いていたのはソフィアだった。

 そんなソフィアの肩をバシバシと叩きながら、マーリンは笑った。


「簡単な訳ないじゃ〜ん。わたしの魔力で出てくるモンスター達なんだよ〜。最下層の核に近ければ近いほど魔物達は強さを増していく。こんなうっすい場所に出現するような雑魚とはレベルが段違いなんてもんじゃない。そんなやばやば〜な連中をこのダンジョンから出ることなく、殲滅してクリアしろって言ってるんだ。一日二日で終わる訳ないじゃないか」

「一日二日じゃ終わらない、ね〜。だったら二週間くらいで終わらせるか」


 恭弥のあっけらかんとした発言に、マーリンの目が細くなる。


「あっれ〜? もしかして今の話を聞いて無かったのかい? 二週間っていうと十四日ってことだろ? そんな短時間であんたらはわたしのダンジョンがクリア出来ると本気で思ってるのかい?」

「なんか難しいことなのか? 一日一階クリアして土日は休んでまた攻略。ほら、二週間もあればいけるじゃねぇか」


 ハッタリを言っているのでは無いと、心内を見るまでも容易に理解できた。

 心からの本音。絶対に出来るという自信が、恭弥の言葉の所々から感じ取れ、知らず知らずの内に、マーリンは笑みを形作っていた。


「蛮勇か、それともただの馬鹿か。どちらにせよ、フェンネルは面白そうな子を寄越してきたね~。いいよ、一ヶ月だ。あんまり乗り気じゃなかったんだけど、一ヶ月でここをクリアすれば、わたしが本気であんたらの修行に付き合ってあげよう」

「一ヶ月もいらねぇんだが、まぁゆっくりやっていいってんならこっちとしてはありがてぇや。ほら、てめぇら! そんなところで昼寝してねぇでさっさと行くぞ!!」


 恭弥が一階層全体に響きそうな大声で一喝すると、先程まで倒れていた修、遥斗がゆっくりと起き上がった。


「ふぁ〜、なんか野球のボールになった夢を見ていた気がする」

「修君ぱっか〜んて飛ばされてたよ〜!」

「勝負でもないのに命を貰う……でも食べれぬ……頭がこんがらがってきたでござるな」

「マサムネはなにぶつぶつ言ってんの? てか、うちのリーダーは相変わらずブラックだな〜。一応僕、二回も殴られてボッロボロなんだけどな〜」

「うっせぇな。自業自得なんだから我慢しろ」


 そんなマイペースなやり取りをしながら、恭弥達五人はマーリンの造ったダンジョンの攻略を始めるのだった。


 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 この小説の作者は基本的にやりたい事をやってみたい性格であるため、今回は出来たら次の日には投稿というアホみたいな事をしています。

 その為、書きだめは無く、次話のアイデアも殆ど無いという実質ノープラン状態。結果、不定期更新となります。

 こんな馬鹿な作者ですが、読者の皆様方には暖かい目で見守っていただけると幸いです。

 もし続きが気になるって方がいれば、応援メッセージに「続きまだですか?」とでも送ってください。 


・最近、ニコニコでシノビガミのリプレイ動画を見ていたせいか、今日はそのうp主とシノビガミをする夢を見た鉄火市です。

 その夢をもっと見たくて投稿ぎりぎりまで寝ようとしてました。なんで、修整がちょい甘いかもしれません。

 あと夢の中で猫が立って自分で自分の餌を用意してた(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ