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第2話:毒だろうがなんだろうがかかってこいや!!(2)

 前回のあらすじ。

 突如として地球とは異なる世界に連れてこられた『ステラバルダーナ』の5人。

 服を着て歩く動物、まったく読めない文字、見たことが無い野菜などなど、そこは彼らの知らぬものばかり。

 果たして彼らはそこで生活していくことができるのか!!


 ドスンと辺り一帯に鳴り響く程の巨大な地響きが起こる。

 すると、直後に海原恭弥(かいばら きょうや)が地面へと軽やかに着地した。

 恭弥の顔には返り血と見られる赤い斑点がついており、その表情には狂喜の色が浮かんでいた。

 そして、恭弥は再び先程まで戦っていた狼に向かって構えを取るが、その狼は悲しいことに、動く気配を見せなかった。


 倒れている狼の中でも一際大きく、右側の顔の額に十字の傷がついた双頭の狼には、流石の恭弥も()()()とはいかなかった。

 鋭くも大きな爪による大地を抉る程の斬撃や、鋭く尖った尻尾の毛を飛ばすといった攻撃をしてきた双頭の狼だったが、恭弥はそれらを軽やかに避けつつ、自慢のフットワークによる鋭くも重い一撃を遠慮なく振る舞い、休む暇を与えぬ怒涛の如き猛撃は、辺り一帯を占めるボスでさえ、受け切ることはできなかった。


「まさかこんだけの狼と()り合うはめになるとはなぁ……流石に疲れたぞ」


 激戦を演じた双頭の狼の上に座りながら、恭弥は頬杖をついた。

 辺りに散らばる狼達の正確な数はわからないが、少なくとも数日は豪勢に遊んで暮らせる程の賞金が貰えるだろうということは容易に想像が出来た。


 チーム『ステラバルダーナ』の頼れる参謀こと伊佐敷遥斗(いさしき はると)が他四人にした提案は、冒険者ギルドを通じた報酬で生活していくことであった。

 ここファルベレッザ王国と呼ばれる国の王都には、冒険者ギルドと呼ばれる大きな施設があった。

 そこでは冒険者と呼ばれる武装した者達が、掲示された依頼をこなし、金銭を稼いでいる。

 仲間の実力を知っている遥斗はその情報を持ち帰り、今後生活していくうえでの資金としようと『ステラバルダーナ』の仲間達に提案した。

 召喚された王城でたらふく食べてきたとはいえ、腹というものは数時間後には鳴るもの。ましてや、仲間の一人が大食らいというのであれば、仕事を選んでいる場合ではなかった。

 結果、彼らは王都の冒険者ギルドで冒険者の資格と身分証明証を得たのだった。


 そんなこんなで現在彼らがいるのは、王都の東にあるウェルザム大森林と呼ばれる場所で、その中でも恭弥がツインヘッドウルフと呼称される双頭の狼の群れと戦った場所は、肉食の獣といった素材が高額になる魔物が多く住む地帯であった。


「さて、とりあえず皆のところに戻るか……つっても多いなぁ……こいつだけにしとくか」


 自分一人ではこれ程の数は運べないと判断した恭弥は、最後に倒したツインヘッドウルフの尻尾を肩に担ぎ、自分より何倍も大きな狼をまるで重さなど感じていないかのように平静のまま、皆がいると思われる場所へと向かった。


 ふと、恭弥は上を見上げる。

 空はいつの間にか茜色に染まっていた。


 恭弥が仲間との待ちあわせに使ったのは、木々を切り倒して整備された広場だった。

 切り倒した木々を利用して造られた椅子や机が置いてあり、王都へ帰る道もあった。

 遥斗の情報によると、魔物が嫌いな臭いを放つお香が周囲一帯に設置されている為、冒険者に道具を売る商人や食事を振る舞う屋台もあり、冒険者の待ちあわせによく使われているのだそうだ。


 恭弥がその広場へ向かっていると、周囲の鬱蒼とした茂みから突然何かが茂みをかき分けてくるかのような音がした。

 気配をまったく気付かせない程の手練れ、もしくはそういうことに長けた動物なのだろうと思い至った恭弥は、ツインヘッドウルフの尻尾を手放し、その音に向かって構えを取った。

 だが、茂みをかき分けて現れたのは、同じく『ステラバルダーナ』のメンバーである須賀政宗(すが まさむね)だった。


「なんだ政宗か。脅かすなよな」


 恭弥が胸を撫で下ろすのを見て、政宗は首をひねる。直後、その背後に見える巨大なツインヘッドウルフが視界に入った。


「流石恭弥殿でござるな。それほどまでに大きな個体を素手一本で倒したのでござるか?」

「まぁな。久しぶりに骨のある相手だったよ。毛皮が厚くて攻撃がうまく通らなかったし、なんかすげぇ早かったし、きっと政宗のお眼鏡にもかなうと思うぜ。で、そっちは?」

「それが……赤く燃える翼を持つ怪鳥と戦ったのでござるが、斬っても斬っても再生される故、トドメまで至れず、終いには飛び立たれ、逃げられてしまったのでござる」

「マジか。政宗が倒せないって……とんでもない化け物がいるんだな」


 思えば自分が戦った狼も、今まで見たことが無いような攻撃をしてきた為、最初は戦いづらかったことを、恭弥は政宗の悔しそうな表情を見て思い出していた。

 だが、強い相手というのはそれだけで気分が高揚するものだ。

 恭弥の頭の中には既に、政宗から逃げ切ったとされる怪鳥とどうやって戦うかでいっぱいになっていた。


 そんなこんなで今回の戦いについて色々話しながら歩いていると、読めない文字で書かれた木の案内板が見えてきた。


「確かあそこだったよな?」

「そうでござるな。遥斗殿は広場で情報の収集に専念するという話でござったから、まずは合流でござるな」

「だな。一応、太一に修をつけたがあいつらちゃんとやってんのかな〜。さっき喧嘩してたし、ちょっと不安だな」

「たまに喧嘩するのも良いではござらぬか。喧嘩するほど仲が良い、でござるよ」

「ま、それもそうだな」


 そんな会話をしていると、恭弥と政宗は広場に到着した。

 その途端、先程まで仲良さそうに歓談する者、小さいいざこざから殴り合いの喧嘩をしていた者、美味そうに肉を頬張ろうとしていた者などなど、その場にいたほぼ全員の視線が広場に入ってきた恭弥と政宗に向けられる。

 だが、驚愕や感嘆の眼差しなど浴び慣れている恭弥と政宗は、広場にいるであろう仲間の姿を探した。

 だが、こちらが見つけるより先に、その探し人から声をかけられた。


「おいおいなんだそいつ。すげーでけーじゃん。てか、なんで首がニつあるんだ? てか、これ二人で……じゃないか。殴られた痕しかねぇし。キョウヤ一人で狩ったのか?」

「まぁな。なかなかに手強かったぞ?」

「キョウヤがそう言うって相当だな。それでマサムネの方は?」


 恭弥の背後にあった獲物を見て期待が膨れ上がったのだろう。

 遥斗が政宗を見る瞳は輝いていた。

 その純粋とも取れる眼差しに耐えきれなかった政宗は、すぐに頭を下げた。


「まっこと申し訳ない。言い訳はせん。収穫無しは全て拙者の不徳とするところ。腹を斬れと言うのであれば、即刻致し申す」


 潔く頭を下げた政宗を見て、最初は驚いたような表情を見せた遥斗であったが、その表情はすぐに人の良い笑みを浮かべていた。


「そんな気にしなくてもいいよ。なんとなくわかってたし。どうせ弱い獲物などいらぬとか言って強そうなやつでも探してたんだろ? むしろ迷子になってないかそっちの方が心配だったわ」

「そうだぞ政宗。俺達はチームなんだ。失敗は仲間で取り返せばいいし、次に活かして仲間を助ければいい。一人で背負(しょ)い込むな。補い合ってこそ、チームだろ?」

「遥斗殿……恭弥殿……。わかり申した。須賀政宗、次の機会には恭弥殿以上の戦果を持ち帰ってくるでござる!!」

「それでこそ政宗だぜ!!」

「まずは戻って怪鳥を……」

「待て待て、いくら政宗でも斬っても斬っても再生するうえに飛び回る怪鳥を相手に無策で挑んでもまた同じ結末になるのがオチだろ。ここは策を練ってだな……遥斗?」


 政宗が復調し、恭弥もまた、気分が高揚したのか二人して怪鳥の話を始めた途端、急に遥斗がキョロキョロと辺りを見回した。

 その行動に、恭弥は疑問を抱いた。


「どうした?」

「あ、いや、シュウとタイチが遅いなって……」


 先程まで赤みがかっていた空が、今は徐々に暗くなっており、ところどころにつけられていた松明には、既に火が灯されている。

 携帯の充電は当てにならないということで、集合は夜になる前ということにしたのだから、二人ももう戻っていないとおかしいだろう。


「迷ったのでござろうか?」

「太一だけだったらありえるだろうが、修もいるんだ。まず無いだろうな」


 修は右腕にアナログ時計をしており、かつてツーリング中に迷った際も、アナログ時計の針を用いて目的地まで案内してくれた実績がある。彼がいる以上、迷子になる可能性はまず無いだろう。

 それに腹が空けば屋台から醸し出される芳しい香りで犬並みの嗅覚を持つ太一がすぐにでもすっ飛んでくるだろう。


 心配せずともいずれ帰ってくる。


 そう自分に言い聞かせた恭弥だったが、ここが自分の知らない未知の世界であるという事実が、焦りや不安を生み出していく。


「遥斗、こいつの換金が出来る場所はどこだ?」

「でも、シュウとタイチは……」

「どうせ換金が終わるまで時間はかかるだろ? 探すにしたってこいつは邪魔だ」

「なるほどね。わかった、こっちだ。政宗はここで二人が来るのを待っててくれ」

「承知」


 不安そうな表情を見せる遥斗だったが、彼も元の目的を忘れていた訳ではない。

 彼は自分が案内すると告げた上で、政宗にここで二人を待っておくように伝えると、恭弥を先導した。


 換金する場所では、成り立ての冒険者がツインヘッドウルフの群れを率いていたボスを倒したことで騒ぎになっていたが、今の恭弥と遥斗にとって称賛などどうでもよく、ツインヘッドウルフの亡骸を冒険者ギルドの職員に預け、換金の依頼を手早く済ませ、急いで政宗がいる広場の森側入口へと向かった。

 だが、政宗は一人で立っていた。


「トイレに行ってる……とかじゃないよな?」


 焦りから出たのだろう。恭弥は脳裏に過った不安を掻き消したくて、その質問をした。だが、政宗は静かに首を横に振るだけで、吉報を伝えてはくれなかった。


「どうするキョウヤ? ここが見知らぬ土地である以上、遠くに行くなとはあいつらにも言い聞かせてるけど、手分けして探すか?」

「それは承服しかねる」

「政宗?」


 遥斗の提案を否定したのは、意外なことに、政宗であった。


「夜の森は危険でござる。暗色で彩られた木々は暗くなり、視野が狭まる。ましてやここに住む獣共は弱いがすばしっこい。夜闇に紛れ、不意打ちを食らう可能性は充分にあるでござろう」

「確かにな。俺が相手した奴も夜行性だったろうし、森の中には明かりとなるような物がなかった。効率より安全を重視しよう」

「それならば、声を大にして呼ぶというのはどうでござろうか?」

「それだと動物が寄ってくるんじゃないか?」

「遥斗殿の言いたいこともわからぬではないが、ここは一つ、拙者を信じてほしいでござる」


 その真剣な眼差しは、遥斗と恭弥に否定の言葉を出させず、彼ら三人は真っ暗な森の中へと足を踏み入れた。


 ◆ ◆ ◆


 その獣は、夜闇に紛れ、獲物を密かに狙っていた。


 欠けることなく綺麗に生え揃った牙はあまりにも鋭く、どんな相手だろうと食いちぎってしまうのだろう。

 また、無駄な肉を削ぎ落としたかのように、細長くも筋肉質な足は、俊敏性の高さを物語っている。

 だが、獣はそれに慢心しない。

 姿勢を低くし、鬱蒼と生い茂る草木で姿をできる限り隠す。

 おそらく、暗色の緑という身体の色合いもあって、その姿を獲物が認識することは困難だろう。

 そんな獣の耳が、ピクリと動く。

 顔を上げたことで、獲物には気付かれ逃げられてしまったが、獣の目は逃げてしまった獲物を見ようともしなかった。


 あんな肉の少ない獲物なんかよりも上等な肉の方が良い。


 獣は音を立てることなく、声のする方へと移動した。

 近付くと、声が二人分あるのだとすぐに理解した。

 夜は獣達の時間。

 来るとしても人間共は悪臭を撒き散らしながら来る為、普段ならば近付こうとも思えないが、稀に上等な装備に包まれた人間が自信満々にやって来る。

 活力や体力が満ちた人間は厄介極まりないが、そういった人間の目的は大抵狩りだ。

 徐々に体力も活力も減っていき、やがて、帰ろうとする頃には疲弊しきっているだろう。


 獣はそこを狙う。


 まずは喉を狙う。

 大抵の人間はそこをかろうじて防いでしまうが、それで良い。その反応速度によって人間の疲弊度がわかるからだ。

 だが、人間に落ち着く暇を与えてはならない。

 速度で翻弄し、じわりじわりと体力を削っていく。

 隙をつき、少しずつ傷を与えていけば、いずれ人間の体力は底をつく。

 そうなってしまえば、後は獣にとって、お楽しみの時間である。


 そんなお楽しみを想像しながらも、獣は声を頼りに人間を探した。

 声から察するに、どうやらその人間共は、一メートル程下にある人間用の軽く整備された道を歩いているようだった。

 獣は足を止め、不思議と感じる悪寒を振り払いながら、ゆっくりと人間共の姿を確認した。

 直後、獣の身体は硬直した。


 一番前に立ち、大きな声を出している黒髪の人間は、その姿を見たことがあった。ここら一帯を仕切っていたツインヘッドウルフをたった一人で倒してしまった怪物で、あいつだけは絶対に襲わないようにしようと獣もひっそりと心の内で思っていた相手だ。

 その男の背後に立つ金に黒という異様な髪色の人間は、見覚えが無い。ただ、声を出しながらも周囲への警戒を一切解いておらず、一瞬こちらを認識したような素振りをした為、奇襲の類いは通用しないのだろうとすぐに理解した。

 だが、前の二人はまだ良い。

 最後の一人がヤバすぎた。

 群青色の髪をゴムで纏めたその男は唯一人、静かだった。

 だが、その男から醸し出された威圧感は異質の一言で済ませられるものではなかった。

 間合いに入らずとも、これより前に進めば一瞬の内に胴と首が離ればなれになってしまうだろう。

 危機感を抱いたのか、獣は思わず一歩退いた。

 その瞬間、微かに不自然な音が鳴ってしまう。


 恐る恐る獣が先程の男に視線を戻すと、男の鋭い眼差しが自分を射貫いていた。

 その瞬間、自分の死を確信した獣は、ただひたすらに、自分の出せる全速力で、その場を脱したのだった。

 

 ◆ ◆ ◆


「どうした、遥斗?」

「ぁ、いや……さっきそこに緑色のチーターがいたんだよな」

「可愛い猫でござったな。将来はあのような猫と山中で暮らしたいものだ」

「あれはどっからどう見ても猫じゃねぇだろ」

「そんなどうでもいいことで時間を無駄にしてねぇで遥斗も二人を探せよ。そっちは俺達がいた方なんだから修と太一がいる訳ねぇだろうが」


 恭弥は遥斗に向かってそれだけ告げると、再び太一と修の名前を大声で呼び始めた。

 そんな恭弥に対し、不満げな遥斗ではあったものの、太一と修の捜索が最重要事項であることには異論が無い為、周囲への警戒を威圧感全開の政宗に任せ、探すことだけに集中した。

 すると――


「お〜〜〜い」


 恭弥と遥斗の声に反応したのか、突然森の中から声がした。


「今のって」

「小さいが修の声で間違い無いな。行くぞ、遥斗、政宗!!」


 その言葉に反対意見を出す者はなく、三人は声のする方へと走った。


 灯りの無い夜の森であるにもかかわらず、彼らは立ち止まることなく声のした方へと走っていく。やがて、開けた場所に出ると、そこには苦悶の表情を見せながら横になっている山川太一(やまかわ たいち)と、その横で焦った様相を浮かべながらも必死に太一を励まし続けている雷堂修(らいどう しゅう)の姿があった。

 修の耳がこちらにやってくる足音に反応し、恭弥達の方へと修は顔を向けた。

 その瞬間、彼の表情は安堵に変わるが、それと同時に恭弥の表情が険しくなった。


「太一!!」


 恭弥は倒れている太一を見て、すぐに近付いた。

 しかし、太一は苦しそうな表情を見せるだけで、恭弥に反応を示さない。


「なにがあった、修!!」

「わかんねぇんだ……俺っちがなってた木の実を取ってたら突然倒れちまって……助けを呼ぼうにも太一君を俺っち一人じゃ運べねぇし、こんな危険な場所じゃ置いていく訳にもいかねぇしでどうしたらいいかわからなかったんだよ」


 修の声音にはいつもの元気も浮調子もなく、突然の事態に困惑している様がありありと伝わってきていた。

 そのせいで太一の身になにがあったのか、恭弥にはまったくわからなかった。

 すると、遥斗が片膝をついて、太一の額に触れた。


「目新しい傷は無いし、おそらく即効性の毒かなんかを口にしたんだろうな……唇も痙攣してるし、顔色も悪い。早く対処しないとやばいぞ!!」

「よりによって毒か。何の毒かまでは……」

「んなもん、医者でも薬剤師でも無い僕がわかるわけないだろ!! 例え知識があったとしてもここは地球ですらないんだ。こっちの毒がどういったものかわからない以上、こっちの医者の手を借りた方が早い!!」


 遥斗の意見は至極当然のものと言えた。

 この辺りは植物や果実の種類が多く、軽く見渡しただけでも見たことが無いような果実や植物がそこかしこに見える。

 恭弥と政宗の二人がいた方面に比べれば肉食の獣も少なく、近くにはこの国の人間が住んでいる村もあるということで、遥斗は修と太一の二人をこちら側へと送ったのだった。

 だが、その結果こうなるとは、遥斗も夢にも思わなかったのだろう。

 普段冷静沈着な彼の声音は明らかに焦っていた。


 遥斗の意見を聞き、恭弥と修はそれぞれ右腕と左腕を肩に回させ、その巨体を浮かばせた。

 そのタイミングだった。


「誰だ!!!」


 突然政宗が誰もいない方へ向いて声を荒らげた。

 三人はそれぞれ驚いた様子を見せるも、代表して遥斗が政宗に声をかけた。


「この辺りは強い動物が少ないとはいえ、いない訳じゃない。僕達と違ってこの世界の住民が夜に動くのは考えにくいんじゃないか?」


 そう告げた瞬間、今度は遥斗の耳にもはっきりと人の呟くようなか細い声が聞こえた。

 その声は若い男の子のもので、おとなしくするんだと誰かに言い含めているかのようだった。

 それを聞いた瞬間、遥斗の目の色が変わり、声のした方を向く。


「君達に危害を加えるつもりは無い。僕達は旅の者で、最悪なことに仲間が一人毒で苦しんでいるんだ。金は後でいくらでも払うよ。治療薬は無いにしても、容態を緩和する薬かなんかは持ってないかい?」

 

 遥斗の声色は人の良い人間を装いつつも、焦りを感じているといった印象を他人に与えるものだった。

 そのお陰もあったのか、政宗の怒気に当てられ萎縮し、茂みに隠れていたその者達は、ゆっくりと姿を表した。


 それは、齢十歳前後の少年と少女だった。


 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。

 この小説の作者は基本的にやりたい事をやってみたい性格であるため、今回は出来たら次の日には投稿というアホみたいな事をしています。

 その為、書きだめは無く、次話のアイデアも殆ど無いという実質ノープラン状態。結果、不定期更新となります。

 こんな馬鹿な作者ですが、読者の皆様方には暖かい目で見守っていただけると幸いです。

 もし続きが気になるって方がいれば、応援メッセージに「続きまだですか?」とでも送ってください。 


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