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「初日、綺麗なエルフに毒付かれた。」
なんて、日報だせるわけがない。
バックボタンを連打して僕は文を消した。
あの日、上司の手を払いのけて一瞥したエルフは、気分が悪いと言って早退した。
場の空気をバッキバキに凍らせて。
そう言えばエルフって魔法使えるんだっけ?わぁーファンタジーだなー。さっすが夢と冒険の世界からやってきた住人なだけあるよなー。
って、現実逃避していても仕方がない。
「まあ、異文化交流って難しいよね。」
と上司は投げ出された左手をそよそよとくねくねと、下に降ろしたら負けっみたいな雰囲気で言い放った。
みんなもカッコ笑いみたいな、苦笑というか、愛想笑いというかなあなあにその場は締められた。
一緒に渡さないと意味がないから、と、任命式と任命書の授与は先延ばしになった。
今から、すぐに仕事、というわけにもいかないので上司の後について各課の挨拶廻りを行った。
しかし行けども行けども、エルフを待ち望んでいた顔が、僕を見るたび残念そうな顔に変わる。どうせ平凡な顔ですよ。名前だって、「名は体を表す」ということわざを忠実に再現してるって分かっているさ。
ああ、明日アイツ来てくれるのかなぁ。