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プロローグというか、もう遺書です

「今日から、地域交流課で働くことになった、鈴木太郎君だ。みんないろいろ教えてやってくれ。」

隣に立つ、やたら背の高いおそらくこの課で一番偉いのであろう男性が、僕を紹介している。僕の目の前には5人の人間。男だったり、女だったり、あれ、あの人はどっちだろう。ってな人もいたり。


そして、ドワーフやドラゴンといったファンタジーに出て来るような種族も、目の前にいた。

キチッとスーツを着ている。ドワーフのスーツとか、七五三みたいでなんだか可愛い。ドラゴンとか、羽とか尻尾とかどうなっているんだろう?


「今日から、お世話になります。鈴木太郎です。若輩者であることは見ての通りです。ご指導ご鞭撻どうぞよろしくお願いします。」

そう言って、僕は頭を直角90度になるくらい、もしかしたら120度くらい下げて挨拶をした。

これが、僕の社会人としての、そして、異世界交流としての第一歩の日となった。



この世界、人間の他には、動物、植物、昆虫、微生物、細菌、などなどといった小学生の理科で習うような生き物しかいなかったのはもうずいぶんと昔のこと。

偉大な発明家がファンタジーの世界へ続く道をこの世界に繋げてしまったのだ。

最初は、言葉も文化も通じない中で、戦争一歩手前まで行きそうになったが各国の首長がどうにかこうにか戦乱だけは避けた。

その代わり、細々と、異世界交流、異文化交流として各地方に派遣し、その地方の文化を知り、自分たちの文化を享受する動きが始まった。

それが、地域交流部隊略して『CKB』通称チクビである。なんとも言えないネーミングだが、これがこのサイトで引っかからないワードであってほしい。もしダメだったら改名するから。


僕の住んでいるこのTHEド田舎な場所にも数年前から、地域交流課が発足した。それまで、町の中では祭りの時ぐらいでしか交流している異世界の人を見たことがなかった。

交換留学生という制度を使っている地域もあるらしく、大学の時の友人は同じクラスにエルフの美少女がいて大変な人気だったと教えてくれた。エルフ族は希少な存在で、交流するようになってからも、あまりその姿をこの世界で見かけることはなかった。高貴で、見目麗しいその姿は10キロ先からでも後光が射すという。


しかし、今はこうやって目の前に、異世界の住人が立っている。スーツを着て。

この地域交流課は、地方で暮らす異世界の住人のサポート、フォローをし、安全に暮らしていけるように手伝うことだ。そのために同じ異世界で暮らすドワーフやドラゴンたちの力も必要ということだ


僕がこうやってこの課にやってきたということは、僕と時を同じくして、この地域にやってきた異世界の住人がいるということだ。僕がこれから一緒に仕事をするパートナーが。

どんな種族かな?ドラゴン族だったら空を飛ぶとき一緒に連れて行ってもらえないかなーとか、ドワーフ族だったらいろんな加工品を作って店を開いてみるのはどうだろう、とか。いろいろ考えて昨日は寝るのが少し遅れた。

つまりは、今、とても、ドキドキしている。

もうハラハラしている。

なんなら、この場で心臓が飛び出してもおかしくない。


「鈴木君の紹介が終わったとことで、次の紹介に移ろうかな。」

上司が後ろのドアに向かって声をかけた。


「入ってきてください。」


まだ、上司しかその姿を見ていない、新しい異世界の住人。


しずかにドアが開く。


その姿はまるで、

まるで、



薄暗い今日の曇り空を一気に吹き飛ばすような光に満ちていた。



「エ、エルフ!?」

「すごーい、初めて見た。」

「キレー。」

みんなが口々に喋りだす。


かくいう僕もその姿に見とれていた。

キレイなプラチナブロンドの絹のように流れる髪。

瞳は綺麗なコバルトブルーで、見たことないけど外国の海ってこんな色なんだろうなって想像した。

睫毛もバシバシで瞬きする度にバサバサと音がしそうだ。

鼻筋も通っていて、全体のバランスの良さを調整している。

口元なんか小さくて、大きな口なんかあけたことなさそうでお人形みたいだ。


体つきもスラっとしていて、人間サイズでは間に合わなかったであろう、特注のスラックスも見事に履きこなしている。


スラックスを、


履きこなしている。


胸元は・・・、


もう察してくれ。



そうして、その超絶美形エルフは上司を間に挟んで、僕の横に立った。隣に立つと僕のちんちくりんっぷりが露見しそうだったので助かった。


「こちらが、今日付けてうちの課に配属になった、エルフのリナラゴス・イシリオン君だ。エルフ族ってだけでかなり珍しいがその中でも男性はあまり例がない。それゆえ、最初は戸惑うこともあると思う。みんなで優しくサポートしていこう。」


上司はリナゴラスの肩を抱き、笑顔を向けた。みんなも初めて見るエルフ族に好機と期待の目を向けた。

肩に腕を置かれたリナゴラスは、それに対して、


「庶民が俺様に触るな。」と、肩から上司の手を外した。

お人形のような口が、

サクランボのような愛らしい唇が、


暴言を吐いた。



もうこのことからだけで、俺のこの先の社会人生活がそんなものになるか、想像ができるだろう。

この手記を読んでいる君だけに託す・・・




「おい、愚民。喉が渇いた。」


ああ、リナが呼んでいる。俺はもう行くけれども良かったら続きを読んでくれたら嬉しい。

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