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さらりと5分で読めるシリーズ

赤ずきんは恨みを忘れない

作者: アウリィ

ふと、童話パロディなんてどうかという思い付きで書き上げました(笑)

ざく、ざく、ざく。

とててててて。


さて、ここに一人の少女がいます。

赤いフードを目深く被り、その両の隙間から金色の髪の毛を三つ編みにしてたらしている、14、5歳と思われる少女。手には大きめのバスケットを持っています。

彼女は母親から頼まれ、山のふもとにある、とあるおばあさんの家へと歩いて向かっていました。


道中で美しい花畑を見つけましたがなんのその。

一瞥して彼女は先を急ぎます。

なにせ歩いているのは山道です。早くしなければ日が傾いてしまいます。


夜の森は危険ですけど、彼女にとっては昼間も危険なのです。ゆえにやや速足で進みます。


それはさておき。


彼女あらため赤ずきんは、どうにか昼頃におばあさんの家へと到着しました。


…コンコンコン。


控えめにノックをすると、「空いているから入っておくれ」としわがれた声が微かに返ってきました。


赤ずきんはドアを開け、この家の家主であるおばあさんがいる奥の部屋へと向かいました。


「お待たせいたしました、お婆様」


赤ずきんはベッドの上で上半身を起こしているお婆さんに深くお辞儀をしました。


そんな赤ずきんにおばあさんは、持っていた茶器を投げつけました。


「遅いじゃないかい、この大バカ娘が! 食事を持ってきたんだろう? あたしを餓死させるつもりかい」


頭から茶をかぶり茶器をぶつけられた赤ずきんはかすれる声で「申し訳ありません…」と小さく言いました。

赤ずきんの態度に幾分溜飲が下がったのか、おばあさんは「ふん」と鼻息をならし、手を差し出しました。


「ほら、さっさと食事をよこしな」


赤ずきんはその言葉に顔を上げ、持っていたバスケットを


「はぁっ!!」

「ぐぎゃっ!?」


気合い一発、おばあさんの顔面に投げつけました。

おばあさん、赤ずきんの思わぬ攻撃に変な声がでましたがキニシナイ。


床に落ちたバスケットには大量の石が詰め込まれており、小石がコロコロとバスケットから零れ落ちていました。


そして。


「殺りなさい、オオカミ!!」


気配を殺して前室で待機していたオオカミをけし掛けました。




その後どうなったかはご想像の通り。

おばあさんはオオカミに丸飲みされ、すっぽりと胃袋に収まりました。


「ふぅ。今回の依頼は無駄に疲れましたね。カツラもぐっしょりではありませんか。まったく面倒な依頼でした」


そういっておもむろに被っていた赤い頭巾を金色のカツラごと脱ぎ捨てました。

そこに居るのはもはや赤ずきんではなく、こげ茶のショートヘアの少女でした。


「さて、帰りますよ。今からだと家に着くまでに他の暗殺者に私が先を越したことがバレるかもしれないので背に乗せて走りなさい。食後のいい運動になるでしょう」


イイ笑顔でオオカミに言って彼女とオオカミはさっさと帰路へとつきました。


なんとか日が暮れる間に帰宅できた彼女とオオカミ。


「ただいま戻りました、お母様。依頼は達成しましたよ」

「よくやりました。赤ずきんさんは複数の殺し屋に依頼をしていましたから先を越されてしまわないか冷や冷やしましたが、何よりです。これで成功報酬は我が家のものですね」


事の顛末はこうです。

昔、赤ずきんがまだ幼かったころ、母親のお使いでおばあさんの家に行き、そこでオオカミに襲われ丸飲みにされてしまいました。しかし、奇跡的に猟師に発見され何とか一命をとりとめました。

しかしこれは単なる不幸な出来事ではありませんでした。

実は、オオカミとおばあさんによる策略だったのです。おばあさんは、それはそれは性格が歪んでおり、可愛らしく幼い赤ずきんが気にくわなかったのです。そこで、おばあさんはオオカミに孫を食わせてやるから、森の恵みをよこせと取引していたのです。


赤ずきんがその事実を知ったのは、だんだんと年を取り、認知症を患ったおばあさんがうっかりそのことを漏らしてしまったからです。

そのことに赤ずきんは悲しみよりも怒りを覚えました。大好きなおばあさんの嫉妬のために、自分は死にかけたのか、と。


それから赤ずきんは、恨みを晴らすため家を出て懸命に働き、お金を貯めました。

いくつかの殺し屋と交渉し、最初におばあさんを殺したところに、全財産を支払うと。


こうして赤ずきんの恨みははらされました。



「しかし、皮肉なものですね。自分が仕掛けた手口と同じ方法で死んでしまうなんて」


殺し屋だった彼女は支払われた金の勘定をしながら言いました。

ちなみにオオカミはお腹いっぱいのためすでにグッスリ眠っています。


「まったくです。因果応報といいますが、まぁ私たちにはあまり関係のない話ですね。儲かればよいのです」


母親とそんな会話をしながら、殺し屋の母娘の夜は更けていきました。

そうきたか、と思っていただければ幸いです。

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