第95話 あおいー次元収納
「封印させてもらうのである。」
との声と共に私を閉じ込める水と共に凍り付き、
わたしは氷漬けにされてしまった。
「あっけないものであるな。水の流れで細切れになり、そのまま凍結されてしまえば、再生も出来まい。なかなか強かったと記憶しておくのである。」
だけど、
ーーードォオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!
大爆発。
全身を使った大爆発は、わたしを殺すときに使ったものと、飲酒のドリンキーを倒したときに暴発した時に使って以来だ。
エデン湖の形をまた変えてしまったかもしれない。
肉体がバラバラに吹き飛ぶも、グズグズになった肉片が爆心地の中央に集まって再生する。
「な、なぜ? 貴様は頭もバラバラになって思考も出来ないはず!」
全身がボロボロのマリス。
水の操作と氷にしたために、障壁を張る余裕が無かったのだろう。
予想外の大爆発にさすがに疲労と怪我が見える。
ここまで追い詰めたのはおそらく、わたしだけだろう。
俊平の全身全霊、全身を爆弾にした全力の自爆だ。防ぎきれる者などいない。
「うん? 自分の体を時限爆弾にしただけ。 水に閉じ込められる20秒後に爆発する様にね」
足元に流れてくる水を感じながらマリスを見て嘲笑する。
「俊平君の自爆がある限り、わたしに拘束は効かないよ。」
再生だけではダメだ。
自爆だけでもダメだ。
わたしと俊平はふたりでひとつの、唯一無二の能力者。
死ぬことが出来ない代わりに許された、捨て身の特攻。
「そのようであるな。厄介な能力を組み合わせたものである。」
背中から六枚の黒い翼が生える。
ほう。きみ、そんな種族だったのか。
「ならば、お前の相手をするだけ無駄である」
ドウッ! とう効果音を残して、羽ばたき、マリスはこの場を離脱した
「逃げやがった………!」
>勝ったの?
と不安そうに俊平が聞いてくる
散々わたしたちを殺そうとして、いまさら逃げる?
そんなわけあるか!
「違う! わたしらは勝ってもいないし負けてもいない! あいつは標的を変えただけだ!!」
>縁子ちゃんたちがあぶない!!
足裏を爆破。
上空に移動する
幾度も行われた爆発と、吹き飛んだ跡により元の戦闘域からはかなり離れてしまっている。
妙子たちのほうもそうだ。
上空から見た限りでも、戦闘継続中。
ただ、妙子と咲子は戦闘ではなく話し合い? をしているようだ。
そして、領主のお屋敷からは騎士たちも出発しているのがわかる。
魔人というのは、それ一人が居るだけで、勇者に匹敵する成長をする。
魔人一人でも脅威だというのに、エデン湖に来る前の佐之助の話ではマリスと咲子は100人近く連れてきているという。
こちらが一騎当千の最強の五悪魔帝、殺戮のマリスと一騎打ちをしている間に、ある程度の数を減らしているとはいっても、相手は魔人。一筋縄ではいかないのだ。
でも、魔人も残り数体しか残っていない! やっぱり、みんな強いんだ!
マリスが魔人と勇者の乱戦地帯へと向かっている!
わたしは手のひらを爆破。
爆風を使って一気に加速して皆に危険を知らせないと!!
「殺戮のマリス接近だっぜぃ! 消吾! 相手の能力は分かるな!?」
「ワイに任せときぃ!! 俊平は!」
「こっちに来てるっぜぃ! 無事だ!」
「ちゅーことは、俊平ちゃんを殺しきることが出来なくて標的をこっちに変えたな? 俊平ちゃんの勝ちだね。おおかたの予想通り!」
「どーすんだよ! 俊平以外が相手できる敵じゃねえぞ!」
それぞれ魔人と剣を交わしながらも、いくらか余裕が残ってそうだ。
しかも、佐之助はいち早くマリスの接近を察知している。
「<土精霊>! <風精霊>!<砂嵐>!! 由依ちゃん、これでいいの!?」
「最高!」
縁子のアビリティ<精霊使い> は精霊を呼び出し、使役することが出来、火・水・土・風・光・闇の6属性の魔法も自在に操ることが出来る。
彼女はあたり一面に砂の嵐を発生させ、視界を鈍らせる
「相手のメタを考えるのは得意なの。<切断>相手でも変わらないよ! 最後のタイミングはわたしが図るから!」
不敵に笑う由依
この子、と既に大陸間の大橋へと向かった樹って子は、底が知れない。
彼はわたしをもとの世界に戻せるかもしれないと言っていた。
様々な世界を夢で旅したという彼女なら、もしかしたら大丈夫かもしれない。
「突き上げて!!!」
縁子が精霊に指示を出し、地面が隆起、槍のようにとがった岩がマリスやその前方に向かって突きあがる。
マリスの直線移動の邪魔をしているのだろうが
「無意味である」
マリスは左手の剣を振るい、突き上げられた土槍を切断していく。
さらには<切断>の乗った風刃をいくつも放つ始末
「見えてるっぜぃ! その斬撃!! 探知持ちの俺っちなら特に!」
巻き上げられた砂嵐を切り裂く風刃は、もはや不可視の攻撃ではない。
佐之助は簡単にしゃがんで最小限の動きで躱し
「そら!」
「おら!」
「ぎゃああ!!」
その風刃に向かって、魔人を蹴り入れる鉄太と佐之助。
絶対に切断をするマリスの攻撃は、味方の魔人にも効果は絶大だった。
「いーいタイミングだね。雑魚の魔人は全部倒した。あおいさん! マリク討伐協力するよ!!」
由依が叫ぶ。マリスだよと訂正する時間も無い!
しかし、ダメだ。マリスは本当に強いんだ!
何百年も生きた大幹部を、勇者になって半年のみんなが倒せるわけがない!!
「だめだ、逃げるんだ!!」
そう叫ぶも、マリスは既にみんなの目の前だ。
「ふん!」
と剣を振るい、風の刃を生み出すマリス
「あんしんしぃ。ワイにその<風刃>は届かん。」
<次元収納>のアビリティを持つ消吾がみんなの前に立つ
「吾輩の刃は、すべてを切断するのである」
「ほーん。その魔法、収納してしまえばええねん。」
パッ と音も無くその風刃は消えた。
「ほな、お返しするで。<風刃>」
消吾がパチンと指を鳴らすと、ヒュン! と風を切る音。
いまさらそんな<風刃>が通じる相手ではないぞ!
「む!?」
マリスはとっさに障壁を展開してその風刃を止めようとするも、すぐさま慌てて回避行動に移るマリス
スパン!!! という小気味よい音を立てて、マリスの右腕が切断された。
「ワハハ! 自分のアビリティを食らうんは初めてか? みーんなそんな理不尽押し付けられてんねんで!」
絶対切断の刃は、彼の魔力障壁をいともたやすく切り払い、
「っ!!! <突風>!!」
「ほい収納!!! ご苦労さん!!! ワイに遠距離攻撃は効かん!!!」
消吾の目の前には、宇宙の様な黒い空間が広がる。
すべて、飲み込まれるように彼の死の突風を消し去った。
<次元収納>というアビリティを甘く見ていた。
通魔活性を行い自由度を高めた彼の<次元収納>は、魔法すらも飲み込む
「ならば直接………!」
左腕の剣を構えるも、
「おっとええんか? あと一歩でも歩いてみぃ。ワイの収納の射程圏内や。」
そういって、消吾は<次元収納>から魔人の首を取り出す
その意味はわかる
「首と体がお別れしてもええんなら、かかってこんかい!! 本物の人体切断マジック見せたるわ! おんどりゃあ!!」
「貴様………!!」
首だけを収納して即死させることができるということだ。
マリスが目を見開き冷や汗を流す。
こんなに慌てているところなど、見たことが無い!
追いつめられるんだ、あいつを!!
「みんな、やろう! マリスを倒そう!!」
できるんだ、倒せるんだ! 倒すんだ!!
あとがき
次回予告
【 さっさと失せろ、ベイビー 】
お楽しみに
読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった
と思ってくださる方は
ブクマと
☆☆☆☆☆ → ★★★★☆(謙虚かよ)をお願いします。(できれば星5ほしいよ)




