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第94話 由依ー伝説の妖狐、玉藻前



「こんなものか咲子!!」

「そんなわけないでしょ豆狸!!」


 妙子ちゃんとキュウビの戦いも絶好調だ。


「あんた、わたしが高校生になったからって対抗して中学に入学したじゃないのよぉ!! 真似するんじゃないわよぉ!」

「関係ないじゃろそんなことは! ワシだって学校というものに多少の憧れはあったんじゃ! 悪いか!」

「そんなの、わたしの二番煎じよぉ!」


 なんか子供みたいな喧嘩してるー!!??



「<狐の嫁入り・酸性雨>!!」


「ぬうう! 小癪な!! <妖怪・唐傘>!」


 キュウビは晴れた空から酸の雨をタエコちゃんの頭上に降らせるも、タエコちゃんはべろを出した、一つ目で一本足の傘を召喚する。

 一本足の傘は下駄を履いており、なんというか、日本風お化け屋敷にいそうな唐傘おばけってかんじ。


「なぜ人間族の大陸を狙う! 咲子の目的はなんじゃ!!」


 酸の雨がやむと、タエコちゃんは腰からぶら下がる瓢箪を紐を持って頭の上でブンブンと回すと、瓢箪は徐々に巨大化し、それをキュウビに向けて叩きつける


「そうねぇ、一番の目的は復讐かしらぁ?」


 キュウビは瓢箪を鉄扇で受けてはじき、直撃を避けた。

 その瞬間に、タエコちゃんは懐から銃を取り出し、パンパンパン! と三連続で発砲。

 タツルがタエコちゃんのヤクザ事務所から持ち込んだ小型銃だ。


「ちょっとぉ! そんなものどうやって持ち込んだのよぉ! 中学生でしょお!!」


 キュウビは鉄扇を巨大化させて大きな盾にすることでその銃弾を受ける。


「………復讐、じゃと?」


 と妙子ちゃんの疑問の声を聞いたキュウビは鉄扇を元の大きさに戻す。


「そう、復讐。わたしは、数百年前に召喚された勇者よぉ。そして、現在の魔王はわたし。前の魔王なんてとっくに死んじゃってるわぁ」


「………それがどうした」


「だというのに、元の世界にわたしは帰っていないのよぉ!」


 そういえばそうだ。

 魔王を倒して、神様に元の世界に返してもらわないといけないのに、あおいさんの反応からするとキュウビとあおいさんはもともとクラスメイト。

 魔王はすでに倒されている。

 ならば、もとの世界にもどっていないとおかしいと言うのもわかる。


「そりゃあお前さんが人間側を裏切って魔族に肩入れしたからじゃろう!」


「それだけじゃないわぁ。魔族側に寝返ったわたしの情報をもとに魔王を倒したわたしたちのクラスメイトの明人も、帰れなかったのよお。あんたたちも、魔王を倒したら元の世界に帰れるとか言われて戦っている口じゃないのぉ?」


ファ!? 魔王は人間の味方だった説?


「………そうじゃな。その通りじゃ。たしか、空中大陸に住まう神、サニエラに力を借りてワシらを召喚したと聞いている。魔王を倒せば元の世界に帰れるくらいの力を返せると。」


「それで、どうなのよ。わたしが魔王よぉ。わたしを倒せば、元の世界に帰れるのかしらぁ?」

 

「………。」


「あっははははー! 利用されてんのよお、あんたも、わたしも、みんなも! 神だなんて笑っちゃうわぁ。わたしたちを利用しているだけだもの。どーせ神たちも空中大陸でわたしたちのことを笑ってるのよぉ。だから、そんな夢を持たせた人間の国を、滅ぼすの。」


「まあ、そうじゃろうな。ルルディア王国のことなどハナから信用などしておらん。咲子だってそうじゃろう」


「………そうねぇ。はなからそれで戻れるなんて思ってないわぁ。でも、期待くらいはしちゃうじゃない?」


「………そうじゃな。」


 いつのまにか、妙子ちゃんとキュウビの間に戦闘の音は聞こえなくなっていた。


 魔王キュウビは、元の世界に帰るために必死だった。

 もともと人間側の勇者として召喚され、魔族側に寝返り、人間に情報を渡して魔王を打倒し、それでも帰れず、魔王として君臨することにした。


 私たちは、死ねば元の世界に帰れる。

 もしかしたら、魔王キュウビもそうなのかもしれない。


 でも、それは憶測だし、なにより妙子ちゃんはずっと、元の世界である高校で起きた()()()()()()()()()()()()


 情報屋である妙子ちゃんが、ライバルである明柴咲子という日本に住む九尾の狐の居場所を調べていないわけがない。

 現在の私のクラスメイトみたいに、廃人みたいになっているというのなら、神隠しの事件など調べない。


 となると、その神隠しが起きた高校では、タツルと同じように、生身の人間が召喚されたということなのだろうか。

 その召喚された人間こそが、小暮あおいさん。そして魔王キュウビ。………ということなのだろう。

 

「で、妙子はどうするのよぉ。まさか、この世界に骨を埋めるつもりなのかしらぁ?」

「それこそまさかじゃろ。ワシは元の世界に残してきたものがあまりにも多すぎる。子孫も、資産も、ライバルもな。」

「………。ふん。」


そっぽをむくキュウビ。


「それに、妄語の奴から拷問して聞いたぞ。かつて五悪魔帝と呼ばれた幹部どもも、咲子が魔王となってから五戒魔帝に名を変えたらしいな。何が戒めか。ふざけおって。あまり殺したくない気持ちがぷんぷんするわ」


「な、なによぉ!」


プンスカという擬音がピッタリな怒り方。

可愛い。

はぁ、と妙子ちゃんがため息をついて


「咲子も一緒に元の世界に戻るぞ。ワシらが帰る時、好敵手がおらんとつまらんからな。」


そして、今度は妙子ちゃんがそっぽを向く。


「妙子………。わたし、いっぱい殺したわよぉ?」

「そんなもん、わしらも一緒じゃ。この世界のことはこの世界の者に尻拭いさせればええだけの話じゃ。」


 キュウビは腕を組み、「んー」と空を見ながら汲んだ腕から生えた右手の鉄扇身を動かし、ぺちぺちと唇を叩いて空を見上げる。


「それもそうねぇ。どう考えても、全部私たちを呼び出した世界の方が悪いわねぇ。元の世界に帰るためなら、魔王として協力してあげるわぁ」


「かかっ! 魔王があっさり裏切りよるわ!」

「あらぁ、これでもわたしは伝説の妖狐、玉藻前(たまものまえ)よぉ。背信 謀反 寝返り 内通 反逆 裏切り なんかは日常茶飯事なんだからぁ。自分の欲求に従うわぁ」


 そんな会話が、私たちが雑魚魔人たちを相手している間に行われていた。

 聴力強化の身体能力向上魔法と<並列思考>のスキルで盗み聞きしてた。


そんな最中


ーーーッドオオオオオオオオオオオオン!!!



という、一際大きな爆発音が響く。

俊平ちゃんの戦いの決着が近いのだろうか。




あとがき


次回予告


【 次元収納 】


お楽しみに

読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった

と思ってくださる方は

ブクマと

☆☆☆☆☆ → ★★★★☆(謙虚かよ)をお願いします。(できれば星5ほしいよ)

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