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第80話 由依ーロジックとオカルト


「鈴木君いっちゃったけど、どうするの?」


 不安そうにつぶやくのは、ユカリコ。


「リーダーが行っちゃったからなぁ………。」


 頭を掻きながら首をひねる鉄太。


「タツルなら、自分ひとりでどうにでも出来ると思っていった節があるから、侵攻についてはどうにかすると思う。そこは放っておいていいし、信用していい。」


 私がそう締めくくる。


「となると、ワイらがやるべきは………」

「情報集めじゃな。タツルが時間を稼いでおるのであれば、領主の館にでも顔を出すのがいいかもしれんのう。先に佐之助が向かっておる。」


 ショーゴに続くようにタエコちゃんが私たちの道しるべになってくれた。

 行動の指針を示してくれる人材は貴重だ。


 特に、テツタのような基本的には指示待ちの人間にとっては、何をやるべきか明確にすることによって高い集中力を発揮する。


 町の外には騎士が準備しており、すでに戦争の準備は出来ている様子。


 町の中には冒険者と、荷造りして隣の町に出ようとする街の人々。


「白の神子様お助けください………」


 何を思ったのか俊平ちゃんに祈りをささげる人までいる。

 俊平ちゃんの神格化が深刻か。なんちゃって………あれ? 気温下がった?



          ☆



 コーデの街の領主邸で俊平ちゃんに会いに行ったよ。


 昨日俊平ちゃんと対談したあのお部屋です。

 ジャニスさんが入れてくれました。


 領主さまは対応に追われていて、現在は騎士の統制をとっているために不在。

 ジャニスさんと最低限の騎士を残して戦の準備を始めてしまったらしい。まあ、急遽魔人が攻めてきたらいろいろ不都合が起きるのはわかりきっていたことだ。しょうがない。


「なんかとんでもないことになってるみたいだよね………。」


 開口一番。俊平ちゃんはその状況にドン引きだった。


「そうだね。魔人が攻めてきたんだ。なんかこのタイミングで。」

「僕のせいかな………。」


 真っ青な顔の俊平ちゃん。

 俊平ちゃんはこの地で魔人の幹部。飲酒のドリンキーとやらと戦った。

 そして打倒した。

 何らかの手段で幹部が討たれたことを知った魔王軍が攻勢に出た?


 おおいにありうる。


 私たち側からすると、魔王軍側の独白が一切見えない。


 そう、漫画などでよくある「くっくっく、ヤツは四天王でも最弱………!」ってやつは、主人公側には一切見えないところでやっているので、私らには一切分からない話なのだ。


 どういう経緯でこちらを攻めてきたにせよ、こちらにとっては唐突に攻めてきたにすぎない。

 だって見えないんだもん。唐突でしかない。ほんとくまったくまった


「そんなことないよ、俊平君はいっぱい頑張っただけだよ」


 なんて慰めているユカリコだけど、その根拠はどこにもない。

 あまりにもタイミングがいいから、こちらも、そして俊平ちゃんも、自分のせいだと感じてしまう。

 ユカリコだって内心では俊平ちゃんのせいなのでは? と思っているはずだ。ほんの少しくらいは。


 私も顔に出したりはしないけど、魔物の侵攻に俊平ちゃんが魔人を倒したことが関係しているかは、実際に魔人と相まみえない限り、そして問い質さない限りどちらの可能性もフィフティーフィフティーで存在していることになる。

 ああ、こんなところでシュレディンガーの猫の法則が………

 量子力学じゃないんだよ異世界は。


「俊平、ここに情報はどうやって届いたんだっぜぃ」


 先にここに到着していた佐之助が聞くと


「えっとね、経緯は僕もわからないけど、今朝方、隣の街から緊急で通信が入ったみたい。」

「なるほどのう。通信………。となると、やはり魔人も連携のための通信手段を持っていると考えてよかろう。ワシらはこの世界に疎い。この世界の連絡手段が早馬だけとは限らん。となれば、相手も魔力や不可思議な異能を使った念話くらいならやりかねん。」


 この世界はアビリティという超能力とレベル性の数値化された世界。

 さらに魔法まで存在するごちゃごちゃの世界だ。

 アビリティのない人間は脆く弱い。

 アビリティのある人間は、ない人間に比べて化物と言って差し支えない。

 そんな化物の中には、念話を使える人がいても何もおかしくない。


 さらに、緊急用とはいえ通信を行うことができる程度の科学力があるのであれば、きっとコスト度外視すればなんぼでも、どうにでもできる。

 実際問題コストをどうするかってのはあるだろうが、おーやおや、相手方を推理できる幅が広がってしまった。


「となると、やっぱり俊平ちゃんが魔人の幹部を倒したのが引き金ってことになっちゃわない? 撃ち漏らしか連絡要因だけ仕留め損ねて、連絡入れられちゃった的な」

「おおいにありえるじゃろう。とはいえ、なにはともあれ通信には基本的に基地が必要なはずじゃがそれを潰せば良いかのう」


 タエコちゃんが中節骨を唇に当て、視線を右にそらしながら思案している。

 タツルの考える仕草に似てるかも。

 通信には基地。電波塔のようなものが必要で、距離があるなら中継地点も必要になる、ということか。

 大規模だね。ちょっと個人でどうにかできる域を超えちゃってそう。

 まあ、全部憶測なんだけどさ。


「はぁー、私が全然考えてなかった行動指針。さすがだねタエコちゃん。ちなみに私は脳筋だからタツルが撃ち漏らした残党を捕縛するくらいしか思いつかなかったよ」


 アナログが得意なタエコちゃんだけど、デジタルが苦手なわけじゃないのがタエコちゃんのすごいところだと思う。

 タエコちゃんの思考はどこかロジカルだから。


 だからこそ、情報屋なんかやって、論理(ロジック)神秘(オカルト)を混ぜた強力な情報を手に入れているのだろう。


 やっぱりとんでもない生き物なんだなぁ、タエコちゃん。





あとがき


次回予告

【 バグ 】


お楽しみに



読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった


と思ってくださる方は

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