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第75話 由依ー夢幻召喚RTA5



 なにはともあれ、私は頭をさすりながら奴隷商館を見回す。


 みんなも同じようにどんな子がいるのかを観察している。


「それで、さっきの黒髪のお兄さんが見ていた奴隷と同じのを見せてもらってもいいですか?」


 私がそう切り出すと、意外そうに奴隷商人は口を開く


「お嬢さんが奴隷に興味があるとは。てっきりそちらのお兄さんだとばかり」

「まあ、コレがうちらのリーダーってのは変わりないですけどね。」

「俺、リーダーだったのか?」

「あんだけ自分勝手にハチャメチャやっておいてリーダーじゃないとでも?」

「リーダーだったわ………。」


 タツルはなんだかんだとみんなをまとめる事が出来るリーダーなのよねぇ。

 なんというか、学級委員長タイプではなく、全力でふざけるタイプの。


 堅物系の人からすれば、タツルは嫌われるタイプだけど、ウェーイ系からすればいい感じのリーダーなのだろう。


「とにかくそれを見せて下さい。」


 と、そういうと、商人のおじさんはこちらへ。と案内してくれた。





「これになります。」


 奴隷商人が檻の前でそういったところ、


「なるほどねえ………。」

「そういうことかにゃ。」

「納得だよ。」

「そりゃあ何としても買おうとするかも。」



 折りの中にいたのは、黒い髪の少女。間違いなくメインヒロイン。



「彼女の名はヒトミ。世にも珍しい異世界人です。1000万(ザン)になります。どうです? この平たい顔はこの国では見ないうえに、珍しい黒髪。そして黒目。愛玩用としても人気があるのは間違いないです。」


 たぶん、この国の基準としては、美人とは言えない顔立ちなのかもしれないが、日本人の観点からすれば、かなりの美少女。

 異世界人とくれば、もとの日本人がこの世界に召喚されたか迷い込んだか転生したかはわからないけれど、魔王を倒すために勇者を召喚したのか作り上げたのか、そんな勇者を征伐するために私たちを召喚し、奴隷として異世界人が存在する。


 正直言って、かなり胸糞悪い世界だ。


「んなるほどねぇ………。」

「それさっきも言ったよ。」


 テツタがタツルにツッコミを入れた。


「ぃよっし、鉄太。購入だ。」

「ええっ! 一千万なんて大金もってないよ!」

「アホか。何も俺たちが払う必要なんてないんだよ。ここに王様からもらった身分証明書と、王家の捺印がある。これ使え。面倒な金策はショートカットだ。」


 そういってタツルがテツタに手渡したのが、身分証書。このものの身分は王家が保証しますというもの。

 買い物するにあたって、ブラックカードの意味を持つチートアイテム。

 それを序盤のおねだりでゲットしたていたのだ。このタツルは。


 こういう無駄なところで頭の回転が速いくせに、宿題やらないで理科以外の成績が壊滅的で成績は悪いのが不思議。


「それじゃテツタ。さっさと購入しちゃいな!」

「わかった………!」


 他の奴隷たちが5万、10万、100万とそんな値段なのに対し、この異世界人の少女の値段はインフレしている。

 あきらかに地雷だ。

 奴隷商人も、異世界人だとわかっているから、強気の値段設定をしているのだろう。

 大した根性だ。気に入った。殺すのは最後にしてやる。


「あの、請求は王宮におねがいします。」


「ほお! これは王家の紋章。かしこまりました。では請求は王宮に回します。」


 スピード契約完了。

 奴隷の所持者はテツタに任命。

 奴隷は首輪をしている。これは奴隷とそうでないものの身分差を考えれば当たり前の話だが、奴隷には人権はない。


 じゃあ他人の奴隷を勝手に殴ったり殺したりしていいのかと言われるともちろんそうでもない。


 奴隷は主人の持ち物。

 その人が持っているものを勝手に壊せば、もちろん犯罪だ。器物破損ってところだね。


 奴隷に対しても、器物破損と同じように扱われる。

 人との暴力よりも罪が軽くなるものの、やはり他人の持ち物に勝手することはできない。


 ちゃんとそういった法は整備されているのだ。


 その代わりに、奴隷が行った犯罪や暴行などは、主人の責任になる。


 奴隷を買うというのは、そういう責任が付きまとうのだ。



「そんじゃ、俺たちはもうしゃべんないから。あとは鉄太が好きにしたらいいと思うよ。」

「そうにゃ。鉄太にゃんは女の子を自由にできる権利を手に入れたにゃ。でもやらしいことをしたらダメにゃん。」

「そういうわけで、私らは一旦黙るから、鉄太。ヒトミさんとコミュニケーション、宜しく頼むよ」

 

 と、宣言して、私たちはひとまず黙る。


 貫頭衣を来たヒトミは、鉄太に手を引かれて商館から出る事に。



「あの、なんで、私を買ったんですか………?」



 先に口を開いたのは、ヒトミさんの方だった。


「えっと、えっと………、その、俺は………」


 鉄太は便乗してばっかりで、あまり自分の意見がない。

 今回のこれも、流されて購入するに至った。タツルが無理やり購入させたのだ。

 人を。日本人を。


 日本人の道徳からすると、完全に逸脱している。きっとタツルは地獄に落ちるだろう。


「さっき、黄河仁法という男の人が来ました。絶対にわたしを助けるのだと。彼と共にならば、この最悪の世界から抜け出せると思っていました。」


 ポツリ、と語りだすヒトミ。


「結局彼はお金を持っていないので、すぐに稼ぐと言っていましたが………どうするつもりだったのでしょうね。1000万なんて無茶な金額、払えっこないのに。」


 といって、テツタを睨む。


「あなたたちはわたしになにをさせたいのですか? 戦いですか? エッチな事ですか? どうせ私にはそれを拒否することはできません。好きにすればいいと思います。私の行く道先は、いつも真っ暗。きっと、いきどまりなんです。」


 彼女は奴隷だ。

 主人の命令には逆らえない。


 主人が裸になれと命じたら、ここで裸になるしかない。


 奴隷とは、そういうものなのだ。


 彼女は下着もつけず、貫頭衣のみ。

 それがどれだけ日本人の童貞の心を揺さぶるのか。私にはわからない。

 だけど、私から見ても、スタイルの整った彼女がすごく煽情的にみえる。



 自分がそんな恰好をしている事も承知なのだろう。

 この世界に来てからのすべてに絶望している彼女にかける言葉を、鉄太は持っていない。


 彼女は、もはや生きる事をあきらめている。

 奴隷の首輪に仕込まれた機能で、勝手に死ぬことは許されていない。

 死のうとしたらビリっとなって気絶させちゃうらしい。


「少なくとも、俺は無理やりそういうことをしようとは思わないよ。俺が君を買ったのは、正直な事を言えば、成り行きなんだ。俺は人に流されてばっかりだから。今回の事も、友達が奴隷を買うことを提案して、乗っかっただけ。でもね、俺は少なくとも君を奴隷として扱うつもりはない。まずは服を買いに行こう。」


 鉄太はヒトミの手を握って歩いた。


「俺もね、人に便乗してばっかりだから、自分が選ぶ道がないんだ。自分で選んだことがない。右に行けばいいのか、左に行けばいいのか、わからない。だからみんなに合わせてしまう。みんなが右にいこうとしたら、俺は右に行っちゃうんだ。」


 鉄太はヒトミの手をつないだまま、空を見上げる。


「でもね、俺が知ってるリーダー、いつも我が道を行っててね、まっすぐって決めたら、道は自分から作っていくんだ。自分の歩いた後に道ができるんだってね。前を向くのが怖いのなら、立ち止まって後ろを振り返ってごらんよ。そこに、君が歩いてきた道があるはずだからさ。便乗してばっかりの俺だけど、ちゃんとそこに俺の足跡はのこっていたよ。」


 意外だなー。テツタってあんがい詩的な事言えるんだ。『俺も俺も』が鳴き声だと思っていたよ。


「………なんですか、それ。意味わかんないです。」


「ごめん、俺も何言ってんだろう。君の行く先の道が暗いのなら、一緒に明るくするアイテムをさがそう。俺も手伝う。俺も、俺の行く先をさがしているんだ。俺が頼りないのなら、俺の頼りになる友達もいる。一緒に頑張ろう。」


 ………。

 っかぁ~~! 甘ずっぺぇ!!


 私の口の中、砂糖入ってない? 入ってないか。


「………片野坂瞳美です。ご主人様。」

「俺は坂之下鉄太。同じ坂道の苗字だね。俺の事も名前でいいよ。ご主人様ってのはなんかヤだ。」

「………。そう、ですね。宜しくお願いします。鉄太さん。」



 出だしは好調。

 異世界召喚ハイでクッサいセリフ吐けるうちに攻略してくれ。



          ☆



 三日後。


 テツタとヒトミは恋仲になった。


 結ばれたのだ。


 ちなみに、黄河仁法は、城の国庫に忍び込もうとしているところを、タツルに簀巻きにされていた。

 本来の物語ならば、きっと腐敗した政治のため込んだ金品を盗むことを正当化して、義賊ルートをたどっていたのかもしれない。


 1000万なんて大金を手に入れようとするならば、最速の手段は盗むくらいしかない。

 しかも、仁法はこの国に対して不信感しかない。盗むことに罪悪感など覚えないだろう。


 最序盤で1000万だ。


 コツコツと出来る事じゃないからね。


 しかも、彼が忍術系のスキルを持っていることは名前から想像がついていたため、入り込まないようにタツルが見張っていたのだ。抜かりはない。

 タナカちゃんも怪盗コスをすることで侵入ルートを先に見つけられていたからでかい。


 正直、この召喚は私利私欲にまみれすぎていたから、国がどうなろうとしったこっちゃない。


 ヒトミさんは、千里眼や透視のスキルを持っていた。

 義賊をするならばたしかに有用な能力。メインヒロインの能力は相棒として相応しい。


 だが、これで完全に物語が破綻してしまった。



 メインヒロインを寝取ったのだ。

 これ以上の物語の進行が不可能となる。


 私たちの意識は薄れ、4人とも、元の世界へと帰還する―――



 鉄太の胸に、ぽっかりと穴が開いたまま。



 脱出タイプD シナリオ破壊。 『ヒーローの最初のヒロインを寝取れ』 コンプリート。





あとがき


出張でネット環境無し1週間のおかげで全然書けんかったぜ。1週間分のストック使い切ったのでちょっと書き溜めします。


毎日更新してたのにごめんなさい


それもこれもウマ娘が可愛いせいだってことにしといて。


読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった


と思ってくださる方は

ブクマと

☆☆☆☆☆ → ★★★★☆(謙虚かよ)をお願いします。(できれば星5ほしいよ)


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