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第72話 由依ー夢幻召喚RTA2


「おい、黄河のやつ、行っちまったぞ………」



 テツタが扉の方に視線を向けて、こちらに向き直る。


「展開が早すぎじゃねえか?」


 と、展開の速さについていけていないテツタ。おいおい


「何を言っている。こういうプロローグはどうでもいいからさっさと本編を始めたいなろう作家が追放される場所から書くのは当たり前の話だぞ」

「そうにゃ。もうみんなの頭にプレインストールされている導入の部分なんかすっ飛ばしておっけーにゃ。なぜなら、すでにもうみんな知っている展開だからにゃ!」

「テツタはこれから何度もこういう夢を体験していくんだよ。このくらいは序の口。設定のおかしな世界なんてザラだよ。」

「あとな、最初に主人公のことを心配する勇者グループの人間ってのは、のちの主人公のヒロインその2とか3とかになりやすい。だから鉄太は今のところ仁法のヒロイン候補その2あたりだ。」

「やだああああ! しかもそのポジション絶対に正ヒロインじゃない! っていうか俺男だしヒロインじゃねえよー!!」



 カオスだった。

 王様の御前でヒロイン候補のテツタはムンクを叫びながら真っ青になってヒロインを拒否!


「にゃははー! 残念ながら田中と由依にゃんは樹にゃんハーレムの一員として右腕と左腕はガッチリ組んでいるにゃ。今なら向こうの忍者の胸が開いているにゃ、はやく飛び込んでいくにゃ!」


 そう言っていたので、わたしがタツルの左腕に抱きつき、タナカちゃんがタツルの右腕に抱きついた。


「なんだこらー! 見せつけてんじゃねえぞこのヤロー! 樹のやろう、ちょっと口が回って人気者だからって!! 俺みたいな口下手な便乗型根暗ひょうきんではまるで歯が立たない! くそくそくそ!」


「あ。あれは! くその三連活用にゃ!」

「あれが伝説の………………!」

「したっぱが本気で悔しがる時にでるくその三連活用。まさかこんな時に聞くことになるとは………!」


「くっそー! バカにしやがって! 俺も、俺も彼女が欲しいーーー!!!」


 何言ってんの。タツルに、彼女いないわよ。

 わたし? 幼なじみ以上恋人未満よ!


「おい、田中。そろそろどいて」

「はいにゃ」

「じゃあわたー」

「由依はそのままで。」

「ーし、は、このままね。はいはい」


 私はそのままタツルの左腕にひっついた。

 もー、しょうがないなー。


「由依にゃんなんかうれしそうにゃ!」


「なかよしか!」

「ったりめーだろ。生まれた時から一緒なんだ。仲良くなかったらやべーぞ」


 さて、一段落。


「王様。俺たちはこれから何をすればよろしいのか、ご教授ください」

「う、うむ。これから勇者どのたちには修行をしてもらい、帝国の勇者を撃破していただきたい。」

「おっけー。」


 とりあえず王国と敵対しているのは帝国。これも常識ね。

 とりあえず帝国ってつけておけばなんか悪そうな雰囲気出るんじゃんね?

 わからんでもない。私もそう思うもの。


「軽い! 軽いよ樹! なんでそんな安請け合いするんだよ!」

「ばっか鉄太。勇者ってのはなぁ、安請け合いするもんなんだよ。今回の俺たち勇者のポジションはかませ犬だ。わかるか? さっきの男のポジションを俊平とするとき、俺たちのポジションは、光彦たち生徒会超人メンバーだ。そうすると、どうなる?」

「あ? あー………………どうなるんだ?」

「自分で考えんかばかもーん! 光彦が最初に聖剣を出したときのことを思い出してみろ。俺は今、それをやっているんだ!」

「つまり………」

「そう!」

「あああああ!!! 安請け合いーーー!!!」



 光彦くんは国がピンチだと知ったとき、我先にと魔王を倒すことを承諾した愚か者だ。

 今回の夢幻牢獄のポジションはまさにそこ。

 その愚か者のポジションにいるのが私たち。

 そして、その中にいる常識人ポジションこそがテツタの役回り。


 今回のテツタはツッコミポジションだ。


 タツルは時と場合によってボケもツッコミも行う変幻自在タツルマンだからね。

 今回のタツルはボケを含めた噛ませ勇者ムーブよ!


 タナカちゃんと私はうんうんと頷く。そうだろう、そうだろう。

 こういう展開の勇者は考えの浅い愚か者じゃないといけないのだ。


 脳死でいい。脳死勇者ムーブ。そしたらわたしたちたちは落ちぶれて、仁法さんハーレムになんやかんやと抜かされる。

 あたりまえだ。


 古今東西、異世界ハーレム系はそこから始まるプラトニックでインピュリティな作者の欲望丸出しの妄想小説オナニー小説。

 書いたもん負けの自己満足の世界。きっとこの世界の製作者は忍術関係に強く関心があるタイプの人間だ。

 自分の持つ知識を小説の場を借りて披露したい。そう考えるなろう系作家はたくさんいる。


 作家ってのは突き詰めていけば、究極の黒歴史ノートだ。

 自分の黒歴史の妄想ノートを広げてどうだすごいだろうと自慢する自己中心的な生き物になる。


 そして、どうにか主人公に感情移入させたくて、主人公がいい思いしているのを自分もいい思いしていると思わせたくて、露骨にハーレムとかやっちゃうんだ。



「気を付けろよ鉄太。このハーレムのパターンってのはな、ヒロインの数が増えるだけでやっていることは大体同じで、結局エタることがほとんどだ。」

「エタる?」

「エターナる。つまり物語が未完のまま永遠に放置されるってことだ。そうなればもう物語がハマった状態になり、抜け出すのが困難になる。」

「なんだよそれ! どうやって回避すればいいんだよ!」


 慌てた様子のテツタ。

 回避? できるわけないでしょ。そんなの作家の気分次第なんだ。



「俺たちにできるとこは、もはや物語をぶっ壊すことしかできなくなる。この夢幻牢獄からの脱出に必要な脱出タイプが存在する。心して聞け。」


 デン! と音が聞こえそうなほどの荘厳な構えで腕を組むタツル。


「田中も聞くにゃ! きっとそれ大事なことにゃ!」


「ああ。まず、脱出に必要な条件がある。

己が主人公として生存を目的とする『脱出タイプA』

主人公格をハッピーエンドに導く『脱出タイプB』

モブ憑依による干渉が難しい『脱出タイプC』

本来の物語の破綻による強制終了の『脱出タイプD』」


「なるほど? 現在の俺たちは主人公ではないが主要人物ではあるから脱出タイプCは除外ってことだな」


「そうだ。わかってきたじゃないか。死の運命を回避する行動を起こせれば、脱出タイプAをクリアできる。現状、次のイベントが何か不明のため、これはまだ保留。」


 タツルは小さく前ならえして、そこの空気をちょっとよこにどかしてやる。たぶん、漫画的表現だと、今タツルが持っている空気にはAって書いてありそう。


「次に主役をハッピーエンドに導くのなら、主人公がヒロインとくっつくのを献身的にサポートしてやればいい。」

「なるほど。」

「ちなみに私が好むシナリオで、一番ハッピーなエンドだよ」


 私はいつも主役級の人間の幸せを見届けてから夢の世界をバイバイするからね。


「脱出タイプD、物語の破綻………実はこれを行えば、比較的容易にこの夢幻牢獄を終わらせることができる」

「終わらなかったら?」

「1年は閉じ込められるかもしれない」

「えええええ!!!? いま生身の肉体が異世界転移している状態でこの夢の中で異世界転移の二重召喚中なのに1年も!?」

「ったりまえだ! こちとらもう何年もこんな世界で馬鹿やってるんだ。そりゃあはっちゃけたくもなるぞ!」

「なんか、樹がみんなよりアホっぽいくせにどこか大人っぽい理由がわかったきがする」

「ふん! よけいなお世話だい。」

「それで、Dだとどうやって脱出するんだ?」


 そう言って首を傾げるテツタ。

 ここまで言ってわからんか。

 でも、なんというか、女の子の私としては、ちょっと推奨できないやり方なんだけどなぁ………。



「基本的には脱出タイプBの反対をしてやればいい。主人公のハッピーエンドをぶち壊す。物語に対する冒涜。邪道。なんでもありだ。」


 タナカちゃんは少し考えて、うわぁ………と嫌そうな顔をした。

 私も同じような顔をして額に手を当てたと思う。


「それはな………。鉄太。お前が、主人公、黄河仁法の最初のヒロインを寝取れ!!」




「………っええええええええええ!!!??!??!?!???」




 脱出タイプD ミッション1『ヒーローの最初のヒロインを寝取れ』












あとがき


次回予告

【 夢幻召喚RTA3 】


お楽しみに



読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった


と思ってくださる方は

ブクマと

☆☆☆☆☆ → ★★★★☆(謙虚かよ)をお願いします。(できれば星5ほしいよ)


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[一言] かなりのなろう作者に喧嘩売ってるのでは? おもろいからいいけど。
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