第70話 由依ーいざ4人で夢の世界へ
「とりあえず、天使ちゃんは俊平ちゃんと一緒に行動するとして、どうやって空中大陸に行くかも後に回すとして、ジャニスさん。俊平ちゃんは勇者としての活動がありますので、もらっていきますね」
「はい………。」
いなかったはずの群青竜も俊平ちゃんが倒してしまったことになっているのであれば、もうこの街に問題は残っていない。
俊平ちゃんの神格化の鎮静化はこの領地の仕事だ。
その辺は勝手にやってほしい。
「俊平ちゃんの明日の予定はありますか?」
「いえ、特にはありません。」
「じゃあ今夜は俊平ちゃんのこと、よろしくお願いします。私たちは宿に帰りますね」
「はい。皆様、今日は貴重なお時間をありがとうございます。」
ジャニスさんに貸し出していた翻訳の指輪を回収し、お屋敷を後にする。
ガラスの手配にはそれなりに時間がかかりそうだね。
窓に麻を貼り付けているだけだ。風通りがすごい。
俊平ちゃんの自爆の影響なのか、周囲の木々は吹っ飛び、屋敷のガラスもパリンパリン。
俊平ちゃんの能力の凶悪さが目に見えるよ。
迷宮で漆黒竜を倒した時の比じゃない。
あの時よりも大きな爪痕を残しているのだ。
迷宮で半年も過ごしたことで、成長を遂げいてるようだ。
ぱない。
「じゃあね、俊平ちゃん。また明日。」
「うん、みんな、また明日!」
とまあひとまずはこれにて閉廷。
今日のところは私たちは宿屋に帰って俊平ちゃんを連れて帰らないといけない。
本来のなろうテンプレだと、俊平ちゃんの単独行動でクラスメイト達と再び別れ、仲間とともに旅をする、などがいつものなろうの流れだ。
しかし、今回は俊平ちゃんが生きていて、戻ってきたことをクラスメイト達に知らせる必要がある。
俊平ちゃんは、一度王城に顔を出す必要が出てきた。
別にそれが悪いことじゃあないし、ここから先のことも、魔人側がどのようなアクションをとるのかによって分岐する。
何はともあれ、すべては明日に回ります。
☆
「本当にお前たちが一緒の部屋なのか? 樹っちと佐藤っちはわからんでもないが、田中と鉄太も一緒ってよくわからない組み合わせだっぜぃ」
ホテルに戻ってきた私たちだけど、ホテルの部屋割りで左之助が首をひねっていた。
「てっきり、男女で4-4だと思っていたっぜぃ」
「セミダブルのツイン一部屋は、俺と由依。鉄太と田中。これは確定事項な。俺と由依のアビリティを鉄太と田中も使うことができるかもしれない。だから、この実験だけはやらないといけないんだ」
と、タツルが申し訳なさそうに告げる。
この旅行のもう一つの目的。
タナカちゃんとテツタに、私とタツルの能力が使えるようになるのか。
検証をしないといけないからね。
いままで、盲点だったこの能力の共有。
できるものならやって増やしてやりたい。
「ふーん………。鈴木くんと由依ちゃんの能力って、確か夢を見る能力だったよね?」
メインイベント、俊平との会合が済んだユカリコは、なんとも毒の抜けたような、すっきりした顔になっている。
「そそ。実はこの能力、夢見た先で手に入れた能力、この世界でも引き継げるんだよね。」
「それは………まあ、なんとなくわかってたよ。由依ちゃんは回復魔法とか使うし、剣も魔法も得意だったもん。ちょっと他のみんなより成長が早くて変だなっておもってたんだよね」
「ただ、その分夢の中で何日、何週間、何か月、下手したら一年以上閉じ込められる。夢の中で修行しているからこその成長率だと思えば、まあ不思議なことじゃあないかな」
「なるほど………。」
「夢の中だけなら、もうわたし100年以上は生きてるよ。」
「ええ! それって大丈夫なの!?」
「結構平気かな。起きた時には割と違和感なく起きられるから。心はいつでも中学生!」
そういや、能力の説明って、タナカちゃんとタエコちゃんにしかしていないもんな。
タツルが元の世界に帰れるってことは伝えられないけれど、今のトップシークレットがそれになった現在、小出しにできる情報はもう漏らしてしまっても構わない。
とくにこの能力がばれたところでデメリットってそんなにないし。
むしろ使える人が増えるのなら、勇者には積極的に能力の増殖を行うべき。
使える可能性があるのは、テツタとタナカちゃんだけだけど。
ワンチャン暴飲暴力のラーニング持ちである大食漢のミノルならば、タツルの心臓だとか脳みそだとか、体の一部を食らうとかすれば発現するかもって程度かな。
さすがにやらせたくないけど。
「部屋割りはツイン3つ。4ー2ー2私たち以外は男女で分けているから、それでいい?」
「いいけど………なんかこの異世界にいるよりも、由依ちゃんや鈴木くんは異世界をずっと旅しなれているってことなんだね。なんかかわいそうで…」
「いやいや、私はずっと楽しんでいるよ。面倒だとも思っているけど、そのおかげで私、この世界である程度インフレしてるんだから。今なら漆黒竜も単騎でどうにかできそうだし。同情できるのはタツルだけだとおもう。だから別に気にしなくていいよ」
「そーだぞ。俺も由依も慣れてんだ。気にする必要は皆無。毎朝ケロっとその日見た夢の話してんだ。なんてことないぞ」
パンパン! と手をたたいた後、タツルはフロントで受け取ったマジカルロック式ドアの暗証番号の書かれた紙を手渡す。
けっこういいホテルだったからね。
観光地として、エデン湖はやはり有名なのか、宿泊施設も充実していた。
13階立て。12階、13階はツイン、もしくはデラックスルーム。
デラックスルームはエデン湖を一望できるようだけど、さすがにそこまで望んでいない。
ツインで泊まれればそれでいいのですよ。節約節約。
部屋のベッドはセミダブルのベッド二つだったから、ベッドをくっつけてキングサイズより大きくしておいた。
さすがにベッドの下までは清掃が行き届いていなかったのか、埃がたまっていたけれど、フロントからコロコロを借りて掃除したからきれいだよ。
このホテルは 【@ 暗証番号 @】を入力することで鍵が解錠するらしい。
美和ロ●クかしら。
チェックアウトのたびに暗証番号を変えているから、知らない人が入ることはない。
オートロックじゃないので内カギは締めないといけないけどね。
なんでホテルの説明してるんだろう。
なんでも、系列店ではカードキーの波長を読み取ってドアの解錠ができるオートロックのホテルもあるのだとか。
美和ロッ●かしら。
チェックイン機の導入で予約さえしていればフロントを通さずに無人で対応してる店舗もあるのだとか。
NCRかしら。
たぶんそんな店舗はワンオペでキツそう。
「せっかく試せる機会じゃ。城では男女で寄宿舎が分かれておったからのう。試せる機会があるうちに試してみるがよかろう。」
カシュッ! と缶ラガーのプルタブを片手で開けたタエコちゃん。
フロント横の酒自販機でキンキンに冷えたラガーを購入していたようだ。
意外とハイテクなのね、コーデの街。
「葉隠さん! 未成年でお酒はダメだよ!」
「なんか中学生扱いされたのが久々すぎて忘れておったわ………。祭りの時も見ておったじゃろ。見逃せ縁子。」
「………。まったく。」
「縁子も酒飲んで恋バナにでも花を咲かせようではないか」
「え、葉隠れさんって恋バナできる人なの?」
「もうワシの旦那は先立ってしまったがのう。」
「旦那? 何を言っているの?」
なんだかすごく気になる話をしているぞ。
「とにもかくにも、俺と田中と由依と鉄太は能力の検証が必要だから、一緒の部屋だ。男女混合の部屋に思うところはあるだろう。でも、戦力増強に必要なことだから。こっちも引かない。」
「いや、樹なら心配してないっぜぃ。」
「せやな。むしろ田中のオタトークに眠れなくなるほうが心配かもしれへん」
同室になるショーゴと佐之助もタツルが何かするとは思っていないようだ。
まあ、私もタツルが一緒なら安心なんだよなぁ。
ふざけてばっかりだけど、紳士だし。私に対しては紳士だし。
「なんかうれしい信用なんだろうか。草食系とでも思われているのだろうか、わからないが、まあ、ひとまずお休み!!」
「おやすみー」
「おやすみにゃ」
「おやすみだっぜぃ」
「ほなな。おやすみ」
「おやすみなさい。」
「うむ。おやすみ。」
「俺も。おやすみ」
とまあ、そんなこんなでおやすみなさいするわけですよ。
田中ちゃんはタツルが買ってきたパジャマで。鉄太は私服だけど、私とタツルを真ん中に、私の隣には田中ちゃん、タツルの隣には鉄太を置いて
「そういや、由依の手をつないでいたら由依の夢に入っていったよな」
なんてタツルが言うから、とりあえず、寝付くまでは隣の人と手をつなぎながら眠ってみることになったのだった。
………( ˘ω˘)スヤァ
あとがき
次回予告
【 夢幻召喚RTA 】
お楽しみに
読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった
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