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第54話 俊平ー薩摩隼人とかいて『戦闘民族』と読む


さてさて、翌日の夜。


「『せめて、ご一緒致します。』」


 などとよくわからない言語で言っていたジャニスが俊平の乗る小舟と共に出発した。

 俊平はそれを夜の満月を映すエデン湖の遊覧だと勝手に思った。


 ウルフから助けただけで、ここまでされるようなことかな………………?

 と思いつつも、ここ意外に頼る場所もない。


 せっかく良い待遇で自分たちのことを接してくれているのだから、言語を学んでから改めてお世話になったお礼をしようと思った。


 この遊覧船が、生贄を運ぶ、死の方舟とは知らずに。



「しゅんぺー。’&%$##”」


「うん、綺麗だよね。」



 天使のリリも、一緒に同伴している。

 船の上で水面に手を伸ばし、パチャパチャと音を立ててはきゃっきゃと喜ぶ。


 水面に映る双子の月を見ては綺麗なものをみた感動から目をキラキラさせていた。

 湖畔に映るその双子の月は、とても幻想的な光景だった。


 船に乗る前、ジャニスから預かった例の矢をリリに持たせてみたところ、驚いた様子で受け取った。

 受け取ったリリはしょんぼりして気落ちしていたが、頭を撫でると涙をためて微笑んだ。


 無理した笑い方だった。

 

 俊平にはその理由はわからない。

 わからないが、その矢はリリにとっても特別な意味を持つものであるようだ。



「『 群青竜(ブルードラゴン)さま、白羽の矢の命に従い、贄であるわたくしが参上いたしました。どうぞわたしをお召し上がりください………!』」


 湖の主人に向かってそんなことをお願いするジャニスだが、当然言語のわからない俊平やあおい、リリは聞き流している。


「この湖の透明度ってすごいよね」

『そうだね。地球でいうところのバイカル湖に似ているかも』

「なにそれ?」

『地球で一番透明度の高い湖さ。湖底には浄化作用のある微生物か水生植物でもいるのかもね』

「ふーん、なんか工業廃水の水質汚染で水俣病になるくらいだけど、水質改善で熊本でも有名な透明度になった水俣湾を急に思い出したよ。」

『ふむ………。たしかそれも浄化作用を持つ細菌だかバクテリアだかが発生したから改善できたのだったかな………。もしかして俊平は社会の科目は得意かな?』

「公民だけ、ちょっとだけね。世界史や日本史はさっぱり。」

『なんだか偏った知識だね』

「理科で県一位の樹くんは理科以外が壊滅的なんていうめちゃくちゃな成績だったりするけど、尖った成績の人もうらやましいなぁ。僕は平凡だから」

『隣の芝はあおいな。………なんの話ししてたっけ?』

「たしか、透明度の話しだったような………」

『急に水俣病の話しになってしまったな。』



 まったく緊張感なく湖に映る月を眺めていた。



「あ、れ………?」


 そんな時である。つんとする臭気。

 クラリとよろめく。船に座っているのに目が眩んだ。


 船酔いとも違う、謎の視界の歪み。


「なに、このにおい………お酒………………?」 


 俊平は頭を抑える。痛みには慣れていても、俊平は毒などにはめっぽう弱い。

 無理に再生するものの、視界の歪みは抑えられない。気持ち悪い。 



「ばっはっはっは! こっが世界一綺麗か(みごち)(いずん)!! こげん綺麗か(みごち)(みずうん)は初めて見っど! こいがエデン湖じゃっどか! こん湖は俺たち(おいたん)もらっていく(もろてく)ど!」



 どこからともなく、解読のしにくい方言が聞こえてきた。


「なん、だ………。どこから聞こえる………? ずいぶんと方言だけど………………言葉がわかる………?」


『たしかに。この独特の表現は………鹿児島弁! 』


「いやなんで鹿児島! 九州の話してたから!? 」


『ずいぶんとマイルドな鹿児島弁だ………。鹿児島弁は東亜戦争時代には暗号に使われていた歴史があるくらい解読が困難な方言だ。西郷(せご)どんの大河ドラマでは字幕がつかないといけないものだぞ!』


「大河ドラマは真田丸しか見てないよぉ!」


 俊平のツッコミをよそに、謎の鹿児島弁は続ける。



「ばーっはっはっは! おいどんは飲酒(おんじゅ)のドリンキー! 魔王様からは『飲兵衛』そして『薩摩隼人(さつまはやと)』の称号をもろた五戒魔帝じゃっど!」



 聞こえる音源を辿れば、湖畔には見事なビール腹をした、槍を持った男。

 褐色の肌が赤く染まる程度には酔っているのがわかる。

 そして、その男の右手の中指には、指輪がはまっていた。

 それが翻訳の指輪だと言うことがわかる


『なっ!? 薩摩隼人だと!?』

「しっているのかあおいさん!」

『薩摩隼人………。ええと、俊平にわかりやすく言うとだな、七つの竜の玉を集める漫画は知っているな?』

「う、うん!」

『マジで現代でも野菜人と称される、戦闘民族。それが薩摩隼人だ』

「………………………マジ?」

『詳しくは元の世界に帰ってから『島津の退け口』で検索してくれ。関ヶ原の戦いで孤立した島津軍(300人)が敵軍(80,000人)を正面突破で撤退。前代未聞の前進する撤退で敵を蹴散らしながら薩摩に帰る狂人だ。それでいて大将さえ無事なら自分たちの勝利であるという、義。足止めの尻尾切り………俗に言う決死隊に全員が参加表明をするほどの忠誠心。それでいて80人は生還する謎の戦闘力と生命力。日本史でも語られる、意味不明な戦闘集団。それが薩摩隼人だ!!』


 それだけ、薩摩隼人は島津が大好きで島津はそれだけ人望があったのだ。とあおいは締め括った。



「ばははははは!! こん(いずん)は、おいが能力(チカラ)、<酒は飲んでも(おいどんと)飲まれるな(ドリンク)>で全部で酒け()うっど!」



『しかも、鹿児島は芋焼酎の産地。薩摩の人間は、だいたい酒豪だ!!!』


「あばばばばばばばばば!!!!!」


 この異世界に都道府県はあんまり関係ないのでは? というツッコミは、アルコールの回り始めた俊平にはもはやできなかった。





あとがき



次回予告

【 翻訳の指輪が翻訳してくれない! 】


お楽しみに



読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった


と思ってくださる方は

ブクマと

☆☆☆☆☆ → ★★★★☆(謙虚かよ)をお願いします。(できれば星5ほしいよ)


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