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第42話 樹ー白無垢



『強くなれた実感はあるかい?』


『うーん。正直、微妙かな。だって、ずっと自爆一辺倒だし、やってること同じだし………』


『でも、克服できただろう? トラウマ』


『………そうだね。前の僕じゃ、うずくまって助けを求めるだけだった。』


『ちゃんと成長しているよ。わたしが保証する。頑張ったね』



 謎の声との会話を当たり前に行っている俊平。

 俺から見ても、俊平は成長している。


 ツッコミ担当で、いじられキャラ。

 チビで弱虫で泣き虫で、それでもクラスメイト達の輪を取り持つ男の子。


 それが、ここまで成長するなんて………。


「この声の子、あおいさんって呼ばれてたよね?」

「そうだったっけ?」

「ええ。たしかそんな呼ばれてました」


 響子の質問に俺が首を捻ると、ヱリカさんが答える。


 名前全然気にしてなかった。


 いかんな。こっちの世界に帰ってくると気が緩む。


「俊平ちゃんが生きてるのって、彼女のお陰なんだね」

「ああ、100%そうだろうな」


 もはやそうとしか考えられない。

 いや、俊平自身、一人で半年も迷宮に閉じ込められていたら精神が狂って死んでしまいそうだ。


 俊平が出会ったあおいという(おそらく)女の子は、それこそ気が狂うくらいの時間を一人で過ごしていたに違いない。

 それを救ったのも俊平で、俊平を救ったのもまた彼女なのだろうと察しがついた。


 いわば、彼ら二人は、二人で一つ。再生の能力だけ持つ、戦闘能力のない女の子と、自爆という最上の攻撃力の代わりに自身を蝕む最低の能力。

 どちらか一つが欠けてもだめだ。

 二人になってもだめだ。 二人で一つじゃないとダメなんだ。

 

 俊平にとって、これ以上ないくらいのパートナーだろう。

 ヒロインなのに実態を持たずに融合するあたり、俊平の受難がありそう。


「あ、みて下さい! RPGの定番! ボス倒したら宝箱ですよ!」


 ヱリカさんの言にテレビを注視すると、隠し扉の先には宝箱。


「樹、あれ中身なんだと思う?」

「服だな。100%服。間違いない。」


 俺は断言した。服以外ありえないでしょ。この流れだと。


「武器とかじゃないんです? むしろ武器の方が定番だと思いますけど………」

「俊平はおそらくあの世界の主人公だから。絶対に再生可能な服がないと俊平はお外で思う存分に自爆できない。よって、ここから出る宝箱はリサイクルお洋服である。Q.E.D」


 証明終了。服が無いと俊平は迷宮の外で生活ができない。

 というか、よく半年もノーパンでぶらぶらさせながら頑張ったと言いたい。


「あー………。でもそれってご都合主義すぎません?」


 俺の言葉に納得しかけたヱリカさんだけど、当然そんな疑問は残るわけで。


「いやー………あの世界はなろうクラス転移のような世界ですよ。ご都合主義じゃなかったら俺がこの世界に戻ってこれませんし、響子が死んだのにもかかわらずこの世界で生きてないですし、なにより自爆が能力の俊平が生き続けられない。今の俊平って生き物は奇跡の連続で生きているんです。だったら服くらい宝箱からドロップしますよ」

「なんかめちゃくちゃ説得力あるけれど、つまり俊平ちゃんの豪運しだいってことだよね?」

「まぁそういうことです。」


 テレビの中の俊平も罠が無いか遠くから石を投げたり糸を伸ばしたりして試している。

 ってか糸使いって響きがいいな。迷宮2層のジュエルタランチュラの能力かな?

 俊平にはラーニングは出来ないけれど、自爆でグチャグチャになって再生で融合したの副産物だろうか。

 なんか暗殺者みたい。糸使いにはあこがれるよ。



『あおいさん、どうしよう、この宝箱』

『どうもこうも、開けてみるしかないんじゃないかい? たとえ罠でも俊平が死ぬことはないんだし』

『痛いのは僕だっていやだよ………』

『じゃあずっとうじうじしているかい?』

『あー、もうっ! 開けるよ!』


 どうやら、あおいという女の子は俊平の背中を押すのがとても上手らしい。

 肉体の主導権を握っているのは俊平なのだから、精霊みたいなもんだろうか。


 俊平とあおいがどういった関係性なのかはいまいちわからないが、互いに嫌い合ってはいないようだ。


 俊平は出来るだけ離れて開けられるように、壁のちょっと高めの位置に糸の両端を貼り付け、その隙間に糸を通すと、宝箱の蓋に貼り付ける。

 頭使ったな、俊平。

 それなら宝箱開けた瞬間に毒とか矢とかが飛んできてもその場にいないから関係ない。

 あとは糸を引っ張るだけだ。


 まあ、当たっても俊平は死なないだろうが、俊平だって痛いのは嫌なのだ。慎重になるに越したことはない。


『布と、………なにこれ? 布?』


 結局、罠の発動は無く、拍子抜けしつつ、中に入っていた布を広げる。

 白い布だな。全部。

 所々赤の線とか入ってるけど、印象としては白でしかない。


『白無垢だね。和服だよ。神官とか僧侶とかが着るやつ。そっちの布はたぶん、ふんどし。』

『そうなんだ………。でも僕、着付けとかわからないよ?』



「樹さん大正解ですよ」

「だから言ったじゃないですか。いやまさか白無垢だとは思わなかったけど。ってか白無垢ってなんだ?」


 服ではあったけれど、残念ながら俺には服の知識は無い。


「ヱリカさん、白無垢ってどんな衣装なんですか?」


 響子も同じだったようで、ヱリカさんに聞いていた。


「たしか、日本の花嫁が着る衣装ですよ。神前挙式で今も風習が残ってます。ウエディングドレスと並ぶ女の子の憧れです」


 なるほど、そういう衣装か。


「あー………。たしかに今の俊平は女の子っぽい。この世界の製作者だか神様だとかは男の娘が大好きで、オネショタが大好きで、しかもロリショタコンなんだろうな。」


 なんだかこの世界の神様の性癖が透けて見えるようだぞ! どうなってんだおい!!


「たしかに俊平ちゃんを女の子にしたがっているね。「しゅんこちゃん」とか「としこちゃん」って呼んであげた方がいいかな?」

「俊平が泣く。俊平ちゃんのままでいいと思うぞ。」


 それにしても、今の俊平の頭髪もほとんど白だから、全身真っ白だな。

 俊平自身、色白な肌だし、白い以外の印象がなくなってしまいそうだ。



「あ、今ね、白無垢で調べてみたんだけど………その昔、切腹するときに着る衣装も真っ白だったんだって」

「あー………白装束か。そっか、そっちかー! 自爆を行う俊平は毎回自殺しているようなものだ。すごいな、シャレてるな………。なんというか、不謹慎だけどセンスがおしゃれ。」


 白装束なら知ってる!

 死人が着てたり貞子が着てたりする奴!

 あとは、独眼竜の伊達政宗が秀吉に謁見する際に死ぬ覚悟でここに来ているとパフォーマンスするために白装束を纏って謁見したのは有名な話だ。

 派手好きの秀吉は政宗が四ヶ月も遅れて参上したのをそれで許しちゃうんだからすごいよな。


 おっと、歴史のおもしろ話はどうでもいいんだよ。


 そんな白無垢を俊平に送る迷宮のセンスに俺は脱帽だ。


「いや、迷宮に自殺服送られる気持ちにもなれってんですよ………」



 そりゃごもっともで。





あとがき



次回予告

【 迷宮脱出 】


お楽しみに



読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった


と思ってくださる方は

ブクマと

☆☆☆☆☆ → ★★★★☆(謙虚かよ)をお願いします。(できれば星5ほしいよ)

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