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第41話 樹ー俊平の本質は変わらず



「さて、今度はこの男の子の夢ですね?」

「はい。よろしくお願いします」


ヱリカさんが俊平に鏡をセットしてくれる。


「この子、なんなんですか?」


「俊平は、みんなを助けるために自爆した、俺たちのクラスで一番優しい子です。でも今は行方不明で、この夢でならどこで何をしているのか分かるんです」


「なるほどぉ。とにかくみてみますね」


ヱリカさんは鏡を起動する

すると、そこに映ったのは漆黒の竜。



「うひっ! なにこれ!! あたしらにトラウマ植え付けたドラゴンじゃん!! 昨日見たばっかりだよ私!」


「あぁ、そうか。みんなコイツにやられたのか。俺だけ別行動だったから、どんな奴にやられたのか知らんかった。おれにとっちゃ半年前だし」



 響子にとっては、昨日見た夢の話で、コレに絶望して俊平が中から自爆するところを正面から見た完全にトラウマ生産物。


 俊平は今、コレと対峙しているらしい。


「この子、初めからクライマックスしてますね。びっくりしました。名前なんでしたっけ?」

「俊平です。」


 ヱリカさんも、いきなりの手に汗握る最終回にワクワクして俊平に興味を持った。



『怖いかい?』


「うん………」



どこからともなく聞こえる声に返事をする俊平。

だけど、声の主人は見当たらない。



『恐ろしいかい?』


「うん………」



 俊平はその声に返事を繰り返す。

 その声があるのが当たり前かのように。


 どうやら、俊平はこのダンジョンで相棒を見つけたらしい。


『ふうん………勝てるかい?』


「うんっ!」


俊平はグッと拳を握った。


両手がある。

あの時爆破した身体は無事元に戻ったようだ。



どういう理屈かは知らないが、俊平の身体は無傷で万全の状態でみんなのトラウマに一人で対峙しているようだ。


すごいな。

あんだけ凄惨な状態だったはずなのに、立ち向かえるなんて。


あのチビで臆病で心優しい俊平が。

なんだか俊平の成長を感じるよ。



視界の端で白い糸の束が揺れた。



「ん? コレって視点ずらせませんかね?」


「えー、その人が見てる夢を映す道具なので、視点を移すのができるかどうか………やってみますね」


鏡に触れて何やら調整するヱリカさん。



「あ、なんとかなりそうです」


「便利!」



俊平視点だった映像が、第三者視点へと変わる。


しかし、そこにある人は俊平のみ。

他と違うところは………



「あー、俊平ちゃん、白髪になってる! しかもなんか可愛さ増してない? 髪伸びたから? なんか女の子みたい。」


「やっぱり。みんなの憧れ、白髪だ。ところどころ黒のメッシュが入ってんな。こりゃあなんかと融合したか?ヒロインと二人旅かと思ったら、融合して二人で一人になっちゃったか。」


「血液型とか脳味噌とかどうなってんですかね」


「あの世界の俊平って精神体だから、なんかうまいことわーってなったんじゃないですかね? なんかまとめてぐちゃぐちゃになって、なんかうまいこと再生した的な感じで」


あれ、精神をこの世界に持ってきたら、どっちも俊平の中に存在してしまうのかな。

ちょっと怖いな。

分離できるように能力磨いとこ。


「俊平ちゃん、ほとんど裸だね」

「まあ、攻撃手段が基本的に自爆のみだからな」


 自爆するたびに身に付けていたものが弾け飛ぶのであれば、服なんて無意味だ。


「うわ、それって俊平ちゃんは攻撃のたびに自傷しているってことだよね………?」

「やめさせたい………。けど、それが俊平の唯一で最高の武器であるならば、俺には止められないよ」

「しかも、誰かと喋ってるみたいだし………。声もわかるってなんだか不思議」


 あ、確かに。謎の声は俺たちにもわかるし、言語も理解できる。

 となると、俊平に語りかけているのは日本人ってことになるな。


 画面がさらに進む。


 どうやら俊平はこの半年の経験を経て自爆の能力の使い方がかなり上手くなっているようだ。


 自爆であることから、自らが傷つく必要はあるものの、腕を自爆させ、拳をロケットパンチで飛ばした上でさらに拳が爆発するなんて誰が思うよ。

 それに、自分の拳を爆発しようなんてよく思えたな。


 ただ、切り離した腕の爆発では威力が落ちるのか、ドラゴンに致命傷は与えられなかったみたい。


 そこから驚いたことに、自爆して吹き飛んだはずの右の拳はすぐに再生していた。

 俊平と融合している何者かの能力だろう。


 そのおかげで、俊平は自爆するたびに自傷する、死んでしまう可能性がある、という最も厄介なデメリットを打ち消すことに成功したわけか。

 ご都合主義なまでの豪運だな。


「再生しても苦痛は残るのか………。マジで俊平には酷な話だな、これ。この世界、俊平のこと嫌いすぎじゃね?」

「………見てて切なくなるんだけど。やば、ちょっと涙出てきたし」


 俊平の半年の苦痛、苦労、その全てを知ることはできない。

 でも、俊平の戦い方をみる限り、やはり自爆という攻撃が俊平にある唯一の攻撃の手段であることは明らかであった。

 その辛い戦いを俺たちは知らない。だけど、それでも自分を失わずに前を向ける俊平は、本当に強い子だと思った。


 姿は少々変わっても、その魂の色は色あせることなく、魂の光も衰えることなく輝き続ける。



『ばいばい。僕のトラウマ』


 その再生能力で、傷ついても構わず突っ込むその特攻に、自分自身の身長やすばしっこさや視力の全てを費やして攻撃をかわして接近する胆力。

 俊平がこのダンジョンの下層で身に付けてきたものをいかん無く発揮して己を屠ったドラゴンと同種のドラゴンを見上げた。


 ドラゴンの真下で、全力で自爆を行う俊平。


「………。俊平ちゃんって、いつもなよなよしているし、チンピラ信号機たちに逆らえないし、弱い印象しかなかったんだけど」

「ああ」

「………。強いね。なんというか、心が。」

「そうだな」


 主人公だもの。強くならなくちゃな。







あとがき



次回予告

【 白無垢 】


お楽しみに



読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった


と思ってくださる方は

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