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第32話 由依ー茶菓子でも食べながら観賞会


『これで由依の救出は完了じゃな?』


 と、タエコちゃんの視点で語られる。

 音声まで聞こえるってすごいな



 向こうの世界の時間とこちらの世界の時間って、めちゃくちゃだったと思うけど、どういうわけか普通に見えてる。


 いや、たぶん、私がいるから向こうの時間とこちらの時間が一致しているのかもしれない。


 以前この世界に戻ってきたとき、1時間程度で意識を失った。

 そのあとはいつもの聖女召喚だったけど、今までのシナリオのクリアを経なくてもあの夢を退場していたことから、私がこの世界にいる間、もしくは私が意識を保っていられる間、向こうの世界も同じくらい時間が流れているのかもしれないな


 となると、私が向こうの世界に帰った瞬間に、この夢映しの鏡は超早送りや使えなくなる可能性が高そうだ。


 それとも、キョーコが居るからコレからはずっと同じ時間軸になるのかな。これについても要検証。


 不思議な鏡の影響でみたい時間軸の夢が見られている? これもわからない。ひとまず保留。


 メモメモ。あとで洗濯するお母さんに見つかる様にポケットにでも入れておこう。


 全部がランダムで起こっている可能性もある。考察だけは続けよう。


「それにしても、現在進行形で自分が救出される姿を見るのってなんだか変な感じ」



「ふーん、すごいですね。3人が言ったこと合ってましたね」

「疑ってました?」

「少しだけです。本当のこと言ってんだろうなーってことは妙子おばーちゃんを見てわかるってんですよ」


 快活に笑うヱリカさん。


 パソコンに映る映像には、佐之助の背中に括り付けられる私。


「うーん、佐之助(エロガッパ)に括り付けられるのはなんだか変な感じ。」


「贅沢言うな。運んでもらえるだけありがたいと思えよ。瓦礫の中の由依の場所をずっと探知し続けてくれたの佐之助だぞ。俊平を探しに行きたいのを堪えてた」


「………お礼言っとかないといけないね」


「そうしてくれ。団長なんかは由依の生存を諦めてたからな。ブレスの直撃だし。」


「ある程度レベル上がってなかったら即死だったかも」


 継続回復(リジェネ)かけててよかった。


 リビディアが死んだからか、大興奮する魔物はいないが、呼び寄せたおかげでかなり大量の魔物がウヨウヨしている。


 そこからは、魔物の駆除をしながら由依が地上に戻るまで30分以上はかかった。


「あれ? やっぱり俺が居ないな」


 とのタツルの呟きに、パソコンの画面をよく見てみると、たしかにタツルがいない。


「パソコンちっちゃいから見切れてるだけとか?」


 とキョーコもタツルが見えないと思いつつ、パソコンの前でぎゅうぎゅうに詰まって見るわたしたち。 

 実は狭いんだよね。


「うーん、見にくいようだったらテレビの方と繋ぎますよ」


 見かねたヱリカさんがHDMIケーブルを取り出してパソコンとテレビを繋ぐ。

 なんか床が配線でごちゃごちゃしてきた。


「坊ちゃん方、こちらをどうぞ」


 団三郎さんがお茶とお茶請けの茶菓子を用意してくれたので、事務所に置いてある椅子に3人で座ってお菓子食べながらテレビ鑑賞

 


「あ、ありがとうございます。」


 お茶を飲む。うまー。


 タエコちゃんの戦い方はその場にある物を全部を使ってその場で即興でコンボかますから見てて楽しいな。

 なんというか、戦闘IQが高い。


『ほれ、ほれ!』


 ジュエルタランチュラを鷲掴みにして、別のリザードマンに思い切りぶん投げたかと思いきや、次の瞬間には短剣でクリスタルモンキーの、両手がクリスタルになったモンキーの腕を力任せに切断。

そのクリスタルの腕を鈍器にして複数のクリスタルモンキーを撲殺、死体を蹴っ飛ばして相手の侵攻を防いだところで、


『今じゃ! 殺れ!!』


詰まった相手に対して味方の魔法が飛んでくる。


キョロキョロと首を動かして状況把握を行い、味方のサポートを行なっている。

ピンチの状況をなるべく作らないことに専念しているのだ。



「そうだ、厚かましいようですが、スマホの充電してもよろしいでしょうか?」

「ええ、かまいませんよ。充電器のタイプは?」

「アイポンです。充電器まで貸していただきありがとうございます」


 スマホを充電器に繋いで、タツルがスマホの充電をはじめた。家かよ。ヤクザの事務所やぞ。



「………なんかあたしらだけ緊張感なくない?」


 元の世界に戻ってさえしまえばキョーコにプレッシャーは無い。

 もともと責任もない世界で無理やり勇者をさせられていたのだ。解放された満足感と、死の瞬間の恐怖くらいしかもはや残らないのかも。


 もはやポリポリとお菓子食べながら鑑賞会だ。


 なんてしていたら、隣のタツルがいいことを思いついた! と言わんばかりの表情でスマホをいじる。

 タツルがは充電を繋ぎながら、カメラを起動すると


「樹、何してんの?」


 と、キョーコが聞いた。

 私も気になるよ。こういうときって、タツルは突拍子もないことをしでかすからね。

 液体窒素の錬成とかまさにそんなんだったし。


「向こうで撮ったスマホの記録ってこっちじゃ残ってないじゃん? 精神体じゃなくてスマホの本体こっちだから」


「ほむ。」


 そうだね。いくら向こうの世界でスマホをいじっていても、所詮は精神体の夢だから、こっちの世界に戻ってきてもデータは完全に消えている。



「みんなが精神だけ向こうの世界に行っているのに、俺だけなんか生身じゃん?」


「うん。」


 タツルの能力は私と似たような物だが、タツルは夢と現の能力。あの夢幻の世界の中で唯一、(うつつ)の肉体を持って向こうの世界に行っている。そのとき着ている物を一緒につれて。

 ってことは、向こうで撮った写真とか、こっちに持ってこれたってことか。それに気づいたってこと?



「スマホに今の状況録画して残しとこうと思ってさ」


「「 ………っ!!!?? 」」


 タツルの言っている意味に気付いた私とキョーコが目を見開いた。

 マジか、それって………。もう物語的には反則じゃないか?


「タツル、お前天才か?」


「いって! 今頃気づいたのか? 俺はテンプレをバスターすることに生きがいを感じる男だぞ」

「テンプレをなぞろうとする私には絶対に考えつかなかったぞそれ!」

「樹やべーなそれ!」


 おもわずタツルの背中を叩いたよ!

 なんてことを考えつくんだこの男!

 己が生身だからって、普通そんなこと考えるかよ。スマホいじってたらなんか急に思いついたみたいにさらっととんでもないこと言いやがる!


 向こうの世界のデータを、タツルだけが引き継げるのなら、こっちのデータも向こうに引き継げるのではないか?

 そういうことだよなぁあああああ!!!?


「ってことは、タツルが向こうの世界に戻った時、この映像を向こうの人たちに見せることが出来るってことだよね?」

「そうそう。響子、お前の無事をこのスマホに残して知らせることできるんじゃね?」

「いいねいいねそれ! やっちゃって!!」



 響子もノリノリで俺の構えるスマホに映り込む



「あー、えっと、みんな。先に死んじゃってごめんね! 私、あの世界で死んでから元の世界で目が覚めたんだ! 今は由依と樹と一緒にいるよ。心配しないでね! 今日の日付は私のスマホの画面をみてください!」

 

 と、メッセージをタツルのスマホに残す。

 キョーコは自分のスマホのホーム画面を開いて、日付と時刻を表示させていた。

 これで、この日にキョーコが日本に戻ってきたという証明にもなる。完璧だ。


ついでにタツルは次の動画でテレビに映るみんなの頑張りも映しておいた。


他のクラスメイトも映るし証拠になんだろうね。


そんな私たちがわちゃわちゃやっている間に、クラスメイトたちの避難もほとんど終えたみたい。


タエコちゃんは最後あたりまでみんなが迷宮を脱出する為に残っていたが、殿は光彦くんに譲って、迷宮の壁や萌の作り出した巨木を三角跳びでひょいひょいと登って、休憩を挟みつつ脱出を完了させた。


「妙子には苦労かけたな。」

「タツル、タエコちゃんにお酒持って行ってあげて」

「………わかった。」



 私では持っていけないし、私を助けるためにめちゃくちゃ尽力してくれたのはわかるもん。

 俊平ちゃんとキョーコを助けられなかったことがものすごく悔しそうだったけど、私が助かるのは妙子ちゃんのおかげでもあるもの。

 


「あ、じゃあこれ妙子おばーちゃんにもってって上げてください。純米大吟醸の九尾です」


 ドン、とヱリカさんに一升瓶を渡されたタツルは、とりあえずカバンに仕舞った。


「なんで狸のねぐらに狐っぽい酒があるんだろう」

「酒はうまければなんでもいいってんですよ。狐は嫌いですが酒は嫌いじゃないんです」


 なるほど?


「そういやタエコちゃんの瓢箪の中身はもう空っぽだったな。」

「補充させてあげてください。………なんでおばーちゃんは徳利じゃなくて瓢箪なんですかね?」

「それは妙子に聞いてください。僕らじゃわかるもんでもないですよ」


 ヱリカさんもなんだかんだで濃い人だなぁ。






あとがき



次回予告

【 目を逸らすな!!! 】


お楽しみに



読んでみて続きが気になる、気にならないけどとりあえず最後まで読める程度には面白かった


と思ってくださる方は


☆☆☆☆☆ → ★★★★☆(謙虚かよ)をお願いします。(できれば星5ほしいよ)

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