事件の詳細
「ロタール=フォン=ブランブルク。 Aクラスのトップであり、この国に四人しかない辺境伯家の嫡男でもある男だ」
「辺境伯……」
辺境伯とはこの国の四方に領地を持ち、他国との戦争時に最も大切になってくる四家。他国と隣接しているためか、個人での軍隊の所持が特例で認められている。戦争時において辺境伯は、侯爵家以上の発言権を持てるなどかなり優遇された階級。そんな家の嫡男という事は天狗になってしまうのも仕方ないのではないか?
「そいつはSクラスに入れなかったせいか、クラスメートをまるで奴隷のように乱暴に扱っているんだ……」
天狗どころじゃなかった……。完全にグレてしまっている。しかも、恐らく俺たちが編入なんてしたから今回のようなことが起きてしまったようだ。
「皆で何とか耐えていた。 そして今日もいつものように横暴なふるまいをしていたが、道中で子龍を見つけたんだ」
「もしかして……こいつのことか?」
「キュイ?」
「あ、あぁ……その子龍だ。話を戻すよ。 そしてロタールはその子龍を無理やり捕まえようと勝手に追いかけていった」
確かにミロは希少な魔物だし、魔龍じゃなかったとしても、龍種を手名付けることができれば個人が持つ戦力としてはかなりずば抜けることになる。恐らくはそれが目的だったのだろう。
「だが、なかなかうまくいかず、しびれを切らしたロタールは自らの持つ弓で子龍を打ち抜こうとした。 だがその時とても強い風が吹き、矢の軌道は大きく逸れ、偶然休憩をとっていたはぐれの飛竜に当たってしまったんだ」
なるほど、大体話の展開は読めてきたぞ。
「そして飛竜は怒り、ロタールを狙い始めた。 ロタールは焦り、逃げ出そうとした。 そして逃げる際に同じクラスの人を飛竜の前に突き出したんだ……」
「シュルト様、私はもう大丈夫ですので……」
シュルトは悔しそうに歯ぎしりをしながら拳を固く握りしめていた。
「あぁ。 分かってはいるが、納得はどうしてもできないんだ……。 そして突き出された……ロベルトが大けがを負い、殺されそうになった時にどこからか魔力の塊が飛んできて飛竜の羽が斬り落とされ、怒りの矛先がそっちに向いたことで俺たちは何とかそこから逃げ出すことができたんだ……」
「その、魔力の塊ってやつ、たぶん俺だ……」
「「え?」」
どうやら知らず知らずのうちに同学年の命の危機を救っていたようだ。
今回の話というよりは、前回の話が関係しているのですが、魔法道具と付与術師の関係性について軽くお話しさせてもらいます。
魔法道具もエンチャントはされていますが、魔法道具のエンチャントは永続的に付与の効果が続きます。詳しく知りたい方は【活動報告】をご覧ください。
ただ、別に今までの認識でも問題ないと思います。