閑話:今年の思い出
年末閑話です!
「今年ももう終わりなのか……」
「どこか感慨深いですね」
「今年はいろいろあったもんなぁ……」
俺は鏡の部屋でリリーと一緒に寛いでいた。机を挟み、対面にリリーがいる。俺たちはすでに夕食を終えており、机の上には果物が何種類か置いてある。各々好きな果物をつまんでおり、リリーはオレンジ色の果物で、ミオレというものを、俺は赤色のアンゴというものを、皮をむいて食べている。
「やっぱり、今年一番の思い出と言えば、鏡魔術師になったことかなぁ……」
「私はミラト様と出会ったことですね」
「初めて会った時、リリーは俺のこと疑ってたけどね」
「も、もう! その話は辞めてくださいよ!」
「ごめんごめん」
「恥ずかしくなっちゃうじゃないですか……」
「じゃあ、ちょうどいいし、今年を振り返ってみようか」
「はい!」
そこから俺たちは各々、今年に起きたことを語っていった。
「あー、そんで元パーティーメンバーに裏切られたのも今年だったな」
「そういえば一回そのようなことを仰ってましたね」
「メネリアスと会ったときだっけ?」
「よければ詳しく教えてくださいませんか?」
「別にいいけど……あんまり聞いてて心地のいいものじゃないよ?」
「大丈夫です! お願いします!」
リリーにお願いされて俺は跳ね返りの神殿で起きた出来事を話した。今まで、うまくやっていたこと。それなのに、アダマンタイトの山を見つけた途端、用済み宣言されたこと。そして最後の最後に囮にされたこと。すべてを包み隠さず話した。聞いていたリリーはとても辛そうにしていた。
「そ、そんなことがあったんですね……」
「うん、まぁ……その時は大変だったね……」
ホントにあの時は辛かった。もう死んだかと思った。間一髪で鏡の部屋に転移できなければ今ここに俺はいないだろう。
「そのあと……何があったんですか?」
「そのあとは……」
俺はまた語りだした。鏡の部屋に転移したこと。そこで先代であるメシアさんに出会ったこと。そこで鏡魔術師として、メシアさんの記憶と経験を引き継いだこと。そしてそのあとに、醜くも彼らに復讐してしまったこと。そのあと……母親が息絶えてしまったこと。
「大変な人生をお送りになったんですね……」
リリーは俺の話を聞き終わると、そう発した。目には涙を浮かべている。
「そんなことないよ。 リリーの方がきっとつらいはずだ」
「ミラト様。 悲しみは誰かと比較する必要なんてないんですよ。 辛かったことを我慢する必要なんてないんです」
「確かに…………そうだね」
「それに……」
「?」
「あのおかげで私はミラト様に会えたので、すべてがすべて悲しいことだけではありませんから!」
リリーはまぶしい笑顔で、涙を拭きながらそう言い放った。自信満々に、誇らしそうに。この笑顔を見ていると、くよくよしていた自分がばからしく見えてくる。
「よし! じゃあ今度は楽しい思い出を語ろうか!」
「はい!」
俺達はそれから長い間、楽しかったこと、嬉しかったことなどについてたくさん話した。お互いが眠くなるまで、その話は続いていた。そして俺は眠るときに、ふとこんなことを考えた。
「来年もいい年になりますように……」
今年、初めて自分はなろうに投稿し始めました。右も左もわからず、手探りで始めた作品がこんなに多くの読者の方々に読んでいただけるとは思っておらず、嬉しい悲鳴を上げることも屡々(笑)
この場をお借りして、お礼を申し上げたいと思います。
本当にありがとうございました!来年も是非鏡魔法をよろしくお願いします!