質問攻め
俺達というか、主に俺は立ち上がる間もなく周りを囲われた。クラスメートの光り輝いている目が何か怖い。
「え、えっと~なにかな?」
周りの視線が辛すぎて、つい聞いてしまった。
「あ、あの! 鏡魔術師様に失礼は承知でお願いしますが、魔法を見せてもらえませんか?!」
「え、全然いいけど、流石にここはまずいから移動しようか」
「はい!」
「あ、あと敬語禁止ね。 じゃないと見せないよ」
「で、でも……」
「ガネス、諦めろ。 ミラトはそういうやつなんだよ」
「殿下……わかりました」
「で、どうする?」
「お願いしてもいいかな? ミラト」
「わかった、じゃあ行こうかガネス」
「私もついていこう」
「わかった。 ほかについてくる人は?」
「わたくしも行きます」
「お、俺も行きたいっす!」
「ミラも行く」
「ミナも行く」
「ぼ、僕も行ってもいいかな?」
「私もついて行っていいかしら?」
「結局全員来るってことね。 じゃあ、どこ行こうか?」
「そうだな、どこか広くて人目につかないところがいいな」
じゃあ、あそこに行くか」
俺は早速、移り鏡を発動させた。周りが困惑していたが、俺は気にせず、鏡をくぐった。俺の後にリリーが出てきて、そのあとにシンラに連れられてクラスメートたちがやってきた。
「ど、どこっすか?!」
「ん? ここはイーリスの辺境の村、キョウマの村の山を越えたところにある俺以外に知る人がいない平原だよ」
「「「「「「「「イーリス?!」」」」」」」」
「おー晴れてるなぁ」
「スルーするんっすか?!」
「気にしてたらキリないぞ、レオ」
「で、殿下……」
「ここならばれる心配もないし、問題ないだろ?」
「ま、まぁ~確かにそうだが……」
「で、まず何しよう……」
「ブモォォォォォォォオオオオオ!!」
俺が何をすればいいか聞こうとしたら、茂みの奥から鳴き声が聞こえた。恐らくこれは魔物の声だろう。
「こ、この鳴き声は……」
「シオル君、知ってるんすか?!」
「う、うん……たぶんだけど討伐推奨レベルBにあたるブラッドバイソンだよ……学生の僕たちじゃ……勝てるかどうか……」
茂みから姿を現したのは体長三メートルを超える一匹の牛だった。毛は赤黒く、大きく湾曲した二本の角は大木を貫くとされている。血走った眼は確実に俺たちを狙っている。
「あらあら……かなりまずいですわ『刀術、【破天轟雷】』ね?」
レナの言葉を遮ったのは俺だ。音もなく俺は低い体勢で飛び出し、下からブラッドバイソンを斬り上げると納刀した。
カチン…………
そしてワンテンポ遅れてブラッドバイソンの首がずり落ちた。血が噴き出さないように、斬ると同時に断面を止血しておいた。破天轟雷は魔法剣士や魔法刀士などが使うスキルだ。雷魔法を剣の周りで発動し、斬ると同時に焼く技だ。もちろん繊細なコントロールは必要不可欠の難易度は高めの技だ。
「やっぱランクBは手ごたえ無いなぁ……まぁ、でもしまっておくか」
俺は斬ったブラッドバイソンを鏡の世界にしまうとクラスメートがいるところに向かった。
「皆、ケガしてない?」
「なんなんすか?! 今のは?!」
「え、何が?」
「あのブラッドバイソンを一撃なんて……」
「ブラッドバイソンはおいしいの?」
「ブラッドバイソンは高く売れる?」
「ミラト、死体をしまった鏡は一体何なんだ?」
「高ランクの魔物の血なら……何か作れるかも?」
「ちょ、ちょ、みんな落ち着いて―!」
俺はまたクラスメートたちに囲まれることとなった。
ブラッドバイソンは雑魚キャラに見えますが、本当はそれなりに強いです。
村一つぐらいなら一匹で破壊できます。
また、今回使用する前に殺されましたが、炎を角に纏って、突進などしてきます。
素材は炎熱体制がそれなりにあるので割と高く売れます。
そしておいしい。