別れと反撃
新技が出てきます。
俺は一区切りつくまで泣いた。こんなに泣いたのはいつぶりかはわからなかったが。
思えば心のどこかで枷をつけていたのかもしれない。
期待を裏切らないように……強くならなくては……万人に好かれるように……自分より周りにために……普通の希少職業とは違うから……弱みは見せるな……泣いてはだめだ……
「す、すみません……お見苦しいところを……」
《さしずめ責任感じすぎてたってとこかな?》
「ハハッ……それも見透かされているんですね……」
ほんとに伝説職業や四皇帝とか言われるだけはある。
《ん~~見透かしたというよりは、共感、かな?》
「え?」
《僕も同じようなこと考えたからね。たくさんたくさん悩んだけど、いつの間にか忘れてたよ》
「俺にはそんな……」
《僕は僕、君は君だよ。真似なんてできなくて当然だよ》
「……っ!」
《おっと、そろそろ時間のようだね》
「ま、待ってください! 俺はまだあなたに聞きたいことが!!」
《最後に、僕が消えた時継承は完全に完了する。それは僕の集めたアイテムや武器、そして取り込んだ数々の魔法に僕の記憶も君に引き継がれる。それはきっと君の役に立つだろう》
彼は先ほどとは違い、一人の四皇帝として話しかけてきた。
そのオーラに俺はうなずくことしかできなかった。
《もし何か困ったことがあるなら鏡の世界の中にある一枚の封書を、今のネイシス国王のところに持っていきな。きっと力になってくれるはずだ》
「……分かりました」
《そんな悲しそうな顔するなよ。本当はもう死んでるんだ。もう一度だけでも誰かと話せるなんてさ、本来ならできなかったことなんだ》
「でも! 俺なんかよりあなたの方が……」
《大丈夫さ。君は僕が認めた継承者だ》
「そう……ですね。わかりました。あなたに恥じないように努力します!」
《ほんとに継承者が君でよかったよ。では最後に祝福の言葉を贈ろう》
そういう彼の体はだんだんと透けて行っている。本当の別れが近づいてきている。
《あなたならきっと大丈夫、きっとやり遂げれる。これは僕が母親から言われてきた思い出の言葉さ。今の君に最もふさわしい言葉だろう》
そういった彼の体はだんだんと透けていき、ついには継承の宝玉が薄く輝いているだけだ。
《じゃあ……がんばれ……よ…………》
と残して宝玉は
コトン……
と、落ちた。
先ほどとは違い静かに雫が頬を伝った。
気持ちの整理をつけた俺は外の見晴らしのいいところに彼の骨を埋めた。(ダンジョンの中で見晴らしがいいってのは気にしないことにした。)せめて安らかになってほしい。
「ここにはまた来よう」
外から転移してくるかもしれないと思ったがどうやらあの魔法陣は職業熟練度マックスの鏡魔法使いにしか反応しないようなので一安心だ。
そして俺は、元の場所に戻った。
そこにはあの結晶でできた龍がいた。【映し鏡】で見たところ
「結晶龍……か、まんまだな」
だがあの時とは違う。俺は強くなった。
「お前を……たおそう」
結晶龍は。俺を見つけると、
「グワアアァァァァァアアアアアア」
と雄たけびを上あげながら足を振り上げてきた。
「もうお前は怖くないんだよ!! 【割れる鏡!】」
すると一枚の鏡が現れた。鏡には結晶龍の足が映っている。そしてその鏡は割れた。
すると、結晶龍の足が砕けた。
「グワアアアァアアア!!」
痛みに驚き結晶龍は吠えた。
【割れる鏡】その効果は割れるときに映した物も同時に砕ける力である。
「さらばだ。迷宮の王よ。【割れた鏡の欠片】」
小さな鏡が一つ生成され、開いた口の中に入った。
「グ、グワアアアァアアア!!」
結晶龍は渾身のブレスを放った。前回撃った時よりも格段に威力が段違いだ。
くらえばひとたまりもないだろう。今までの俺なら。
「【鏡の世界】」
ブレスは鏡にあたると吸い込まれた。
鏡の世界はあらゆるものを取り込む鏡だ。
「この時を待っていた。さっき飲み込んだ鏡は再現するぞ」
すると龍の中で何かが弾けた。
「自分のブレスで死ぬんだ」
そして結晶龍は息絶えた。
割れた鏡の欠片
大小様々な鏡を打ち出せる。
一枚一枚の鏡には鏡の効果を与えることができる。
何も効果をつけずにただの物理攻撃としても使える。