水没の湖
ダンジョンの秘密が少し明かされます。
水没の湖の入り口は山の麓にあった。馬車が一台ぐらいなら余裕で入れそうな大きさがある。
「場所はここだね」
「そうですね」
「じゃあ、行こうか」
俺たちはピクニックにでも行くかのようなノリで、ダンジョンの中に入っていった。
ダンジョンの中はほんのりと青い光が灯っていた。
「わぁ、明るいですね」
「そうだね。 恐らくだけどこの鉱石のおかげかな?」
俺が、近くの壁にあった鉱石を手に取って【映し鏡】で見た。
名称:蒼光石
説明:魔力と反応する特殊な成分を含んだ鉱石が、ダンジョン内に満ち溢れていた魔力を取り込み、発光した物。この鉱石で作られた武具は、水魔法に対して耐性を持つ。また、魔物もこの鉱石を好み、耐性を得ることが稀にある。その場合、瞳が蒼くなっている。
「だって。 魔物が耐性を得るのは少し厄介だな」
水の中の魔物を討伐する際に、一般的には水魔法で魔物がいる水を操作して突いたり、斬ったりすることが多い。魔力を水にしてから形を変えるより、元々ある水を変えた方が魔力の消費を抑えることができるからだ。
だが、水中にいる魔物が、水魔法に対して耐性を得た場合、水を除く基本属性すべては、水の中では本来の威力が出ず、討伐が難しくなる。
「まぁ、今気にしていても仕方ない。 少し蒼光石を採取しながら進もう」
「わかりました」
「にしても、ほんとに綺麗だなぁ」
蒼く、きらきらと輝いている様は、純度の低いダンジョンの入り口近くでも綺麗だ。最深部はどのようになっているかが少し楽しみになってきた。
「でも、ダンジョンに入る際には、入り口は真っ暗でしたよね?」
と、確かに普通にこれほど輝くなら、入り口から見えると思うだろう。
しかしそれは違う。
「ダンジョンはできたときに異界化すると考えられているんだ」
「異界化……ですか?」
「そう。 まぁ、正確には空間が歪んでる、なのかもしれないけど」
「? どういうことですか?」
「まずダンジョンができたばかりのころは、入り口に入ってすぐにボス部屋があるんだ。 そして年月がたつごとにボスからは魔力が漏れ出していき、だんだんとダンジョンは深くなっていくんだけど、それはボスが強ければ強いほど、漏れ出る魔力は濃いから、より、深いダンジョンとなっていくんだ。 そして道中の魔物は外の魔物をボスが意図的におびき寄せて、浸食されたものと、元々あった魔石と呼ばれる魔力を放出、吸収する鉱石に、ボスの魔力と瘴気と呼ばれるものが蓄積していき、魔物となったものといる。 そして、ある程度の大きさになったダンジョンは入り口とはまるで違う、異界とあらわされるんだ」
「よくわかりません……」
「うぅん、まぁ、元々あった場所をボスが好き勝手作り替えたのがダンジョンだと思えばいいよ」
「そうします……」
もちろんこれは一説に過ぎないし、いまだに解明されていない謎もある。例えば、なぜ倒した後もボスは復活するのか、道中の魔物はなぜ外に出てこないのか、入り口の空間はなぜ、ボスの魔物の討伐推奨レベルにかかわらず歪むのか、などなど、挙げればきりがない。
俺たちは最深部目指して下ることにした。
一応、仕組みなどはすべて考えてあるので、ネタバレでもいいよ!って方はコメントなどで質問してください。