ギルドの資料
大学の前期が終わり、ようやくテストから解放されたので更新です!
「さぁ、遠慮しないで飲んでちょうだい」
そう言いながら再度紅茶を飲み出すアストラ。
「俺はそのままでいいかな。 リリーは今日は入れる?」
「あ、じゃあいただきます」
そういうと、自分の紅茶に砂糖とミルクを少し入れる。フーフーと息を吹きかけ、冷ましてから紅茶を一口飲むリリー。
それでも少し熱かった様で、舌の先を少し口から出して冷している。
「あら、熱かったですか?」
「ちょ、ちょっとだけ」
「ふふ、では次からもう少し冷してから持ってくる様に伝えとくわね」
「お、お手数おかけします……」
そう言って顔を赤らめるリリー。恥ずかしかったのか少し俯いている。そんなこんなしていると、ドアがノックされた。
「どうぞ」
アストラはドアの方を向いて入室を促す。扉を開けて入ってきたのは、メガネをかけた男性の職員だった。
「失礼します、こちら、言われた通りの資料になります」
「ありがとう。 ごめんなさいね、お仕事を増やしてしまって」
「いえ、これくらいは。 それで、この資料はどこに」
「あ、じゃあ俺が預かります」
「ではお願いします」
そう言って、紐でまとめられた紙の束を手渡してくる。その後、その男性職員は扉の前で一礼してから部屋を出て行った。
「すごい、落ち着いている人でしたね」
「彼、喋らないんじゃなくて公私の区別がはっきりしてるの。 特に不機嫌とかではないから安心してね」
「わかった」
俺は職員から受け取った紙の束を上から順にめくり、確認していく。
「これはサンクチュアリで初開催した時の資料か」
そこには少し燻んでいるが、欠けもなく丁寧に保管された当時の参加者の書かれたチラシ、そしてその全容が箇条書きで端的にまとめてあった。
「リリー、メモ頼んでいい?」
「はい、お任せください」
「じゃあここの机を使ってくださいな」
「あ、ありがとうございます」
俺はリリーのメモする体制が整ったのを確認してから、今回の出演者と同じ名前を見つけては読み上げていく。リリーはそれを丁寧に一人づつ書き記す。数分ほどでこの作業は終わった。
「リリー、何人いた?」
「十八人です」
「だいぶ絞れたね」
「少しみせてもらっていい?」
「あ、はい」
「これ、少し書き足していい?」
「大丈夫です」
「ありがとう」
そう言ってリリーから紙を受け取るアストラ。そのまま手に持っていたペンで何人かに印をつけていく。
「はい。 この人たちは除外していいわ」
「どうしてですか?」
「上から三番目と五番目、六番目の人たちはサンクチュアリの合奏団の人たちね。 それと、九番目と十番目、この二人はペアの吟遊詩人で、本祭の出演日にしかいないし、なんなら自分たちの番が終わったらすぐに国から出ることが確認されているから、きっと今回の件とは無縁ね」
「よく覚えてますね」
「記憶力はいい方なのよ? それで、あとはこの十三番目から十六番目の四人は、傭兵業を兼用しているから完全に白とは言い難いけど、あんまり危ない橋を渡る様なところの所属でもないからまぁ、半々って感じね」
そう言って書き込んだ紙をリリーに返すアストラ。リリーはそれを受け取った後、再度紙に書かれた人数を数える。
「となると……残るのは、九人です」
「そのうち、四回全部に出演しているのは二名、三回出演しているのは三名ね」
「じゃあとりあえず、この五人を先に調べよう」
「私は他にやることがあるから申し訳ないけど、お手伝いできないわ」
「うん、大丈夫」
「また何か分かったら教えてちょうだい」
「そうするよ。 邪魔したね」
「失礼します」
そう言って俺たちは部屋から出る。さて、まずは四回出演している参加者から調べるか。
「名前は……片方がハーメルンで」
「もう一名は、テーラーさんですね」
まさか、こんなところで名前に上がるとは。昨日の違和感が俺の勘違いであれば嬉しいんだけどな……。
そういえば本日で本作品の初投稿から5年が経過しました。5年?
2年ぐらいの感覚でいたのですが……(笑)こんだけこの先品が続けられているのも、ひとえに見てくださる皆様のおかげです。これからも少しづつ合間を見つけては更新していくつもりですので、よろしければたまに見てくださると嬉しいです。