心当たり
更新遅くなりました。すみません
俺は移り鏡でリリーと一緒に転移する。転移したリリーは、自分の視線の先にある建物を見て納得した様だ。
「心当たりというのは、ここですか」
「この街では何でも屋の側面が強いらしいからね、何かしら情報があってもおかしく無いと思うんだ」
俺とリリーの視界の先には、陽の光をキラキラと反射させながら佇む大きな洋館、冒険者ギルドサンクチュアリ支部があった。俺は躊躇いもなく扉を開けて中に入る。中には数人程度の冒険者がおり、扉の開く音でこちらを見るが、すぐに視線を外す。
「うーん、珍しい」
「何がですか?」
「いや、こっちの話」
「はぁ……?」
リリーは訳が分からなかった様で、首を傾げる。ギルドにリリーを連れて行って冒険者に絡まれないのが、珍しいなんて本人には口が裂けても言えないもんな。というか、本来はそれが正常なんだけど。
俺はコホンッと一つ咳をした後、受付に向かって歩いて行く。受付の人も、昨日の今日で把握してくれた様で、特に話しかけることなく奥の通路への道を開けてくれる。
昨日と同じ様に階段を登っていき、昨日も目にした扉の前で立ち止まる。俺は扉を軽くノックする。
「どうぞ」
ガチャリと扉が開く音がする。俺はその扉を開き、中に入った。リリーも俺に続いて室内へと入っていき、ちょうど扉の方に視線を向けたアストラと目があう。
「ミラトさんと……こうして顔を合わせるのは初めてですね、リリーさん」
「は、初めましてアストラさん」
「えぇ、初めまして。 それで、今日はどの様な様で?」
「ギルドの資料室にさ、過去のサンクチュアリで開催された音楽国際交流の参加者の名簿とかってない?」
「あるにはありますが……何に使用なさるのですか?」
「リリーの考えなんだけどね」
俺はアストラに先ほどリリーと相談した内容を伝える。相槌を打ちながら聞いてたアストラだが、最後まで話を聞き終えると納得した様だ。
「なるほど、言われてみればリリーさんのいうことは一理ありますね」
「でしょ?」
「ではお探しの物を、職員にこの部屋に置きにくる様に伝えます。 少々、座ってお待ちください」
そう言いながら、何やら紙に文字を書き出すアストラ。書き終えたかと思った矢先、その紙を机の上に置いてある木彫りの鳥の様な物の口に入れる。
「これで職員の方に通達が行きましたので」
「えと、それはなんですか?」
「これはですね、伝報鳥という魔法道具でして、専用の紙に書いた文字を、連携させている伝報鳥に転送する効果を持っています。 私はこの部屋から出ることが少ないので、この様な方法で職員とやり取りを行なっています」
そう言って、俺たちとは机を挟んだ反対側に腰掛けるアストラ。慣れた手つきで、机の上に置かれた小さなベルをチリンッと鳴らす。ベルが小さな音を鳴らしたかと思うと、直ぐに一人の職員が室内に入ってくる。アストラはその職員に、いつもの。 と伝えると、職員は頷き、部屋を出ていった。
部屋を出た職員は、数分ほどでお盆に三つの紅茶の入ったティーカップを載せながら戻ってくる。
「先に一息つきましょ?」
アストラは慣れた手つきで自分の前に置かれた紅茶に砂糖を入れて、そのまま飲み始めた。