会食
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俺たちは支度した後、アレスさんに先導されながら会食が行われる場所まで歩いて行く。数分もすれば、大きく開けたエリアについた。そこには、所狭しと並ぶ机の上に豪勢な食事が多岐に渡り並べられている。どうやらバイキング形式のようだ。
「普段はこちらは食堂として扱われていますが、今回はお集まりいただいた皆さんとの交流を深める為、ささやかながらの会食を開かせていただきました。 さしづめ、本祭前の前夜祭だと思っていただいて構いません」
そう言うのは、先ほどよりは少々ラフな格好に身を包んだモルスだった。その右手にはシャンパングラスを持っている。その隣には同じく、少々ラフな格好に身を包んだウィータの姿があった。
「もう間もなくに近づいた音楽国際交流に向けて、ぜひ英気を養っていただけると幸いです。 さて、堅苦しい挨拶もこの程度にしまして、食事をいただきましょう」
ウィータとモルスが顔を見合わせた後に、軽く頷いてから正面に向き直り、グラスを高く掲げる。それに倣い、集まった人たちも自分の手に持っているグラスを高く掲げた。
「「音楽国際交流の開催を祈って、乾杯!」」
「「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」
カチンッとグラスを軽く当てる音があちこちで響く。そしてその直後にはガヤガヤと話し声があたりから聞こえて出す。俺たちもそれぞれ好きな食事をとりに向かう。
「お、珍しいものがあるじゃん」
俺がそう言いながらさらに撮ったのは海魚の姿焼きだった。サンクチュアリは内陸国であるため、あまり魚は食べられないと思っていたのだが、これは嬉しい誤算だ。
「海魚、お好きなんですか?」
そう言いながら話しかけてきたのは、片手にシャンパングラスを持ったモルスだった。その隣にはウィータもいる。
「ウィータさん、モルスさん」
「先程ぶりです、ミラト様」
「さっきぶりでーす!」
「こら、姉さん」
「いえ、お気になさらずに」
「そう言っていいただけると助かります……本当に」
モルスは頭を抑えながら、はぁと大きいため息を吐く。その横で、ウィータは講義するかのように、頬を膨らませている。
その後、俺たちは数分ほど雑談を行う。 まぁモルスからはウィータのやらかしを、ウィータからはモルスについての愚痴だったが。
「では私たちは挨拶回りに戻りますので……」
「わざわざありがとうございます」
「いえ、ささやかな食事にはなりますが、お楽しみくだい」
「失礼致します、ミラト様」
そういって、ウィータとモルスは軽く会釈をしてから、離れていく。
「そういえば、みんなはどうしてるのかな?」
軽くあたりを見渡すと、一番最初に目についたのはシンラだった。シンラは食事を取らず、シャンパングラスを持ちながら各国の使者の人に挨拶回りを行なっている。これも俗にいう貴族の務めというやつだろうか。
「……俺も挨拶回りとかしたほうがいいのかな?」
立場で言えばシンラ、というかここにいる誰よりも上だ。そう思いながらソワソワしていると、誰かが肩を軽く叩く。後ろを振り向くと、そこにいたのは意外にもガネスだった。
「どうしたの、ガネス?」
「いやなに、ミラトがソワソワしてたからな。 おおかた、自分も挨拶回りをしたほうがいいのかとか思っていたのではないかと思ってな」
「……バレてた?」
「殿下にはバレてたみたいだぞ?」
「あはは、恥ずかしい」
「それで殿下から言伝だ。 『これは国のことであって、ミラトには関係ないから気にしないでくれ。 というか、ミラトが挨拶を行うと、我が国がミラトのことを囲ったと言われてしまうから、むしろなにもしないでくれ』だそうだ」
「あはは……じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」
「それがいいと思うぞ。 では私はこれで」
「うん。 ありがとうガネス」
「なに、お礼終われることでもないさ」
そう言って離れるガネス。さすが公爵家の跡取りというか、こういう場での立ち回りを熟知している。
「少し、よろしいですか?」
俺が立ち尽くしていると、後ろから声をかけられる。俺が後ろを振り向くと、そこにはシワ一つどころか小さな埃一つも見当たらない、よく手入れの施されていることが分かる燕尾服に身を包んだ一人の女性がいた。
「初めまして、私、テーラーと申します」