現状報告
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あれから俺は周囲を探索がてら、怪しい行動をしている人がいないか見て回った。その結果はというと、
「まぁ、そう上手くことが進んだら苦労はしないよな」
特に問題という問題はなかった。何度か注意を引く人は居たが、全て祭りの雰囲気や酒に酔った人たちのタガが外れてるだけだ。
「うーん、一旦アストラのとこに戻るか……」
俺は来た道を辿り、ギルドに戻る。ギルドに入ると、先ほど受付をしてくれた人がこちらに気づいた。
「ようこそ……、またいらっしゃいましたね。 ギルドマスターに御用ですか?」
「えぇ、はい」
「お通しする様に伺っています、どうぞこちらへ」
「一人で行けるから大丈夫」
「左様ですか、失礼しました」
そういうと、軽く会釈をしてから、受付に戻り作業を再開しだす。俺は階段をのぼり、大きな扉の前につく。俺はその扉を三回ノックをする。すると、すぐにガチャリと、鍵の開く音がした。
「どうぞ」
「失礼」
俺は扉を開けて中に入る。そこには外からの光をカーテンで完全に遮断し、薄暗い部屋のあちこちで様々な器具を浮かべながら占いを行うアストラの姿があった。
俺はソファに座り、大きく一息吐いた後に話しかける。
「とりあえず今外を見てきたけど、何か怪しいことはなかった。 何人か気を引く人はいたが、全員が酔っぱらいだったよ」
「そうですか……お恥ずかしいことに、こちらもさほど進展していません。 新たに分かった事と言えば、音楽国際交流の最中に事件が起こることしか」
そう言いながら、占いを続けるアストラ。
「いまは地道に物事を進めるしかないようですね……」
「もう少し捜査を手伝いたいんだけど、一度教会に戻らないと行けなくて、申し訳ない」
「教会に、ですか?」
「今回、俺はネイシスの代表者のうちの一人としてサンクチュアリに来てるんだ。 教会からは日を跨ぐような行いは避けてほしいと」
「そうでしたか。 分かりました、大丈夫です。 本祭までまだ時間はありますので」
「そこで相談なんだが」
「なんでしょうか?」
「俺のクラスメートに協力をしてもらってはダメか? みんな学生ではあるが優秀だ。 必ず力になってくれると思う。 人数も九人ほどだし、情報の漏洩も少ないはずだ」
「そうですね、今は飼い犬の前足も借りたい状況ですので……皆さんがよければご協力していただけると助かります」
「みんなに聞いてみる。 それで、これを持ってほしいんだけど」
俺は手のひらサイズの小さな鏡を作り出し、それをアストラに手渡す。
「これは?」
「移り鏡という、転移を行うことのできるスキルを一部能力を変更して、映像と音のやりとりを行える様にした物だ。 【話し鏡】とでも呼ぼうかな。 これがあれば遠く離れていても情報のやりとりが可能だ」
「とても助かります」
「今日の日没、早速皆と顔合わせと情報共有を兼ねて使いたいんだけど、大丈夫かな?」
「えぇ、問題ありません」
「じゃあ一旦失礼するね」
「はい。 ありがとうございます」
俺はギルドをでて、教会に向かって歩き出した。日が傾きかけているから、少し急がないとな。
話し鏡
手のひらサイズから等身大サイズまで自由に大きさを決め、鏡を生成する。その鏡は一つだと効果を持たないが、複数存在すると、特定の信号を送り、受け取り手が対応する魔力の波長を送り込むことで、鏡を介して映像と音を双方が送受信することができるようになる。非常に高価な魔法道具に類似したものが存在しているが、それよりも使い勝手が良くなっている