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種明かし

今回説明回なので少し長いです

「いいから姉さんは一旦落ち着いてください」

「ねぇ?! 私かっこよかった?!」

「はいはい、かっこいいよ。 かっこいいから戻ってください」

「なんかテキトーじゃない?」


 そう頬を膨らませながらも、元の位置に戻るウィータ。多分、よくあるんだろな。モルスの対応が手慣れている。


「お手数をおかけしました。 再度謝罪させていただきます」


 シンラが今度はウィータに向けて謝罪する。


「大丈夫ですよ、かっこいいところ見せれたので!」


 そう言いながら指をピースしながらいうウィータ。なんというか、隣の家の姉貴分って感じがする。

 それと同時に、気になったことがあったので、ちょっとでしゃばってみる。


「一つお聞きしても?」

「はい、いかが致しましたか?」

「先ほどはどのような手段を?」

「あぁ、あれは権能です」

「権能?」

「あの、姉さん……それ一応最重要機密なんだけど……」


 さらっと答えるウィータと、呆れながら一応止めようとしているモルス。本気で止めようとしてない限り、もうほぼ諦めているんだろう。


「いいじゃない、別に真似できるようなものでもないし」

「それは確かにそうだけど……まぁいいか……とはいえそこまで時間があるわけでもないから手短にね。 姉さん」

「はーい。 それで権能と言ったんですけど、正確には継承魔法トランディションマジックかつ、葬り去られた魔法(ロストマジック)の類です。 それを教会では権能と呼んでいます」

「私達を含めて、大罪枢機卿はそれぞれ継承魔法トランディションマジックを継承しています。 私は【憂鬱】を、姉さんは【虚飾】を継いでいます」

「【憂鬱】に【虚飾】……聞いたことないな」

「教会外部にはほとんど伝わっていない魔法ですので」

「ちなみにさっきあったザーアムも継承していますよ? 彼は二つ名の通り、【憤怒】を継いでいます」

「そこまで言っていいのか……」


 シンラが呆れている。俺も聞いたらここまで話してくれると思ってなくて、びっくりしている。


「ちなみにこの継承魔法トランディションマジックは教会内では大罪魔法と呼んでいます。 そして大罪魔法は二種類の魔法しかありません」


 そう言いながら距離を取るウィータ。何をするのか察したモルスも距離を取る。


「まず一つは私の場合だと、【虚飾】です」


 そういうとウィータの真横に、瓜二つな分身体が現れた。ウィータは持っている杖でその分身を何度も突いている。その杖はすり抜けてダメージはなさそうだ。


「私のこの魔法の性質は対象の存在を(うつろ)にします。 簡単にいうなら実体の有無を任意で操作できます」


 そういうと、今度は持っていた杖を自分の頭にぶつけた。しかし、その杖はウィータをすり抜けて、本体には損傷がない。


「でもそれでは急に後ろに現れたことの説明がつかないのでは?」


 もう諦めてるのか、シンラも気になったことを質問している。でも俺も気になった。


「逆に問います。 人間における実体の有無の定義ってなんですか?」

「それは……」

「もちろん、明確な答えはないですが、この魔法上での定義は意識の()()になります」


 そうながら目を瞑ると、手に持っていた杖がカランっと音を立てながら地に落ち、分身体の方が動き出し、喋り出す。


「このように、私は虚飾の力で生み出した分身体に限り、自身の意識を移し、存在の入れ替えが出来ます。 さらに存在感はあるが、実体のない分身体などが生み出せます」


 なんというか、葬り去られた魔法(ロストマジック)の中でも、対人に対して圧倒的に強すぎないか? 戦闘中に存在感がある分身体など無視ができるわけもないし、仮に本体を倒せそうになっても、分身体に意識を移されれば、ほぼ万全な状態、振り出しに戻る。あまりにも強すぎる。

 しかもおそらく、対象の実体の有無ということはもしかしたら攻撃の実態の有無も操作できるかもしれない。こんな恐ろしいほど強いのに、デメリットがないとは考えられない……。


「もちろんデメリットもありますよ?」


 俺の表情を見て察したのか、デメリットについて話し出す。


「私の場合は肉体の成長及び、肉体が存在しません」

「肉体が存在しない?」

「うーんと、説明が難しんですけど、触れたり体温があったりはするんですけど、それは魔力で構成された肉体に非常に近しい物といった方が正しいんです。なので肉体に作用する治癒魔法などの効果もほとんどありませんし、子孫を残すこともできません」

「なんというか……」

「あ、でもあんなことやそんなことはできますよ?」

「姉さん?」


 ムフフと言ったような表情で言ってくるウィータを離れていたモルスが凍てつくような声色で静止する。その声色を聞いたウィータは冷や汗をかきながら、話を元に戻す。


「オ、オホン。 話を戻すと、二つ目の魔法が、私の場合は【顕現:虚飾】です」


 そう言うウィータの手に、ウィータの背丈の二倍ほどの巨大な純白の大鎌が現れた。


「この武器は先ほど話した虚飾の効果を持った物になります。 簡単にいえば、防御をすり抜けてこちらは攻撃できます」


 そう言いながらブンブンと大鎌を振り回すが、効果を発動させているのか、誰にも当たらず、すり抜けている。とはいえ、ちょっと怖いけど。


「ちなみにちなみに!」

「姉さん」


 何かまだ話そうとするウィータだったが、モルスが近づき、とめる。


「何よぉ」

「そろそろ次のご挨拶の時間だから、一旦この辺りにして。 続きはまだ後日にしてもらっていい?」

「あ、はい……分かりましたぁ……」


 モルスの有無を言わさない空気に素直に従うウィータ。なんか、妹って言ったほうがいいんじゃない?


「このような中途半端なところで終わってしまい、申し訳ない」

「いや、こちらこそ、ここまで深く教えていただき感謝している。 また後日改めてお都合の方を合わせていただけたら助かる」


 そして俺たちは再度軽く会釈した後に来た道を戻っていった。

大罪魔法

生終天魔教に伝わる継承魔法トランディションマジックかつ、葬り去られた魔法(ロストマジック)

教会以外にはほとんど情報がない魔法。特殊な能力を得る代わりに、何かしらの人間としての能力を失う。


大罪魔法 虚飾

虚飾

魔法の対象である自身の存在を虚にする。これにより実体の有無を操ることができる。また、実体はないが存在感のある分身を生み出し、自身の意識をその分身を自由に移すことができる。

その代わりデメリットとして、人間としての肉体を持ち得ておらず、継承した時点で、その肉体は魔力で作り替えられ、子孫を残したり肉体に対して作用する魔法などがほとんど効かなくなる。


顕現:虚飾

実体の有無を行き来する巨大な純白の大鎌を生み出す。この武器と、触れた物の実体の有無を操作できる。

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