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双子

年明け前には載せたい気持ちです。

 挨拶が終わると、二人の人影がゆっくりとこちらに近づいてくる。


「皆様、お初にお目にかかります。 先ほどは姉さんが御迷惑をおかけしてしまったようで……謝罪いたします」

「教皇様直々のお出迎えとなれば、我らの代も泊がつくというもの。 故にお気になさらずに」

「シンファルラ殿下にそう言っていただけると、こちらの気も休まるというものです」


 そういいながらシンラにお辞儀をする青年。横でウィータが納得いってないような表情をしているが、華麗にスルーしている。


「ご挨拶が遅れました。 生終天魔教にて、102代目教皇の位を拝命致しました。 【終魔】のモルスでございます。此度は遠路からお越し頂き感謝申し上げます。 僅かなお時間ではありますが、ぜひ友好を深めれたら幸福に存じ上げます」


 そうニコッと青年、モルスは微笑んだ。身長が170ほどある、イケメンの笑顔の破壊力は凄まじい。

 俺がそんなことを思っているとモルスがこちらに歩いてきて、初めてウィータと会った時と同じように左胸に手を当てながら片膝をついてきた。


「鏡帝ミラト=スペクルム様。 ご挨拶が遅れましたこと、謝罪いたします。 私、モルス及び生終天魔教は貴方様の御訪問を心より歓迎致します」

「あ、うん。 ありがとね……」


 何度もこのようなことはあったから、慣れたと思っていたがここまで仰々しくされるとさすがにちょっと、なんていうか……引く。

 俺の気もつゆ知らず、モルスは立ち上がり、話を続ける。


「今夜はすでに到着をなされた各国の皆様を合わせてささやかながら宴の方を行いたいと思っております。 ぜひご参加下さい。 ほら、姉さんも何か言ってよ」

「え、今?!」


 唐突にモルスに話を振られて驚くウィータ。なんか、弟のほうがしっかりしてると言うかなんというか……。


「コホン……そうですね……」

「もしかして何も考えてなかったのかい? あれほど教皇としての自覚を持ってくれと言っているのに……」


 うーんと悩むウィータと、やれやれといったような表情をするモルス。微笑ましい兄弟だね。

 ウィータが、何か言おうとした瞬間、俺たちの後ろにあった扉が乱暴に開けられた。


「お、お待ち下さい!」

「なぜ私を呼ばないのだ?!」


 扉が開くと、何故か勝手に憤慨しているアロガンスとそれを諌めようとしている一人の神父がいた。


「殿下?! なぜ我々を待たずに行っているのですか?!」


 アロガンスはやってくるなり、シンラに突っかかってくる。とは言え、流石に目上のシンラに対しては敬語だが。


「アロガンス、教皇御二方の御前だ。 控えろ」


 やれやれといった様子でシンラは伝える。その態度が気に入らないのか、アロガンスはさらに噛みつく。


「我の質問になぜお答え成らぬのですか?!」

「だからなぁ……」


 呆れた様子で説明しようとするシンラの前に、いつの間にかウィータが現れ制止する。


「ここはお任せください、殿下」

「ウィータ殿。 しかしこれは我々の……」

「諦めてください、殿下。多分姉さん、カッコつけたいだけなので」


 苦笑いしながら諦めるように伝えてくるモルス。シンラもそう言われて素直に引き下がった。

 ウィータはアロガンスの前に立つと、優雅な所作で名乗る。


「お初にお目にかかりますわ。 生終天魔教、【生天】のウィータです」

「そ、そうか!我は……」

「あ、貴方様のことは聞いていません」

「な、なんだと?!」


 名乗られ、認められたと感じて嬉々として名乗りを返そうとしたアロガンスの言葉をバッサリと遮り、切り捨てるウィータ。それにアロガンスは憤慨し、掴みかかろうとする。


「無礼であるぞ!」


 アロガンスの手がウィータに伸びる。そしてウィータに触れるその刹那、()()()()()()()()()


「な?!」


 アロガンスが驚いていると、音も立てずにその背後にウィータがいた。そして手に持っていた杖の先端をアロガンスの背中に押し付けている。


「無礼はどちらですか?」

「な、何故だ……今、今もそこにいるのに……何故背後に貴様がいるのだ?!」


 アロガンスが驚くのも無理はない。なぜなら、アロガンスの眼の前には実際にウィータがいる。しかしそのウィータにアロガンスの手は幻に手を伸ばしているかのように(さわ)れず、いつの間にか背後に移動していたウィータは触れることができている。


「ここでの事は不問と致します。早急に立ち去りください。 さもなくばネイシスからの宣戦布告とこちらは受け取ります」

「何をいって……?!」

「当たり前だ。 そうなった場合、お前だけではなく親族皆の首が飛ぶぞ」


 普通に考えれば分かるだろう、といった様子でシンラが無常な声色で補足する。


「だ、そうです。 それで、如何致しますか?」

「…………っ!」


 アロガンスは少し考えた後、舌打ちをつきながら扉まで戻る。完全に扉から出ると、一緒に来ていた神父が何度も深々と頭を下げてから丁寧に扉を閉める。


「こちらのものが大変無礼を失礼いたしました。 お望みとあれば正式に謝罪の方をさせていただきます」


 アロガンスが出ていってすぐにシンラが頭を下げる。


「姉さんが不問にするといってたので、私もそれに賛同致します。 なので、お気になさらず」

「し、しかし……」

「ホントに大丈夫です。 姉さんを見てください」


 モルスがそういうので皆でウィータの方を見る。そこにはドヤっているウィータの姿があった。


「どう?! かっこよかった?!」

「姉さんがこんなんなので……はぁ、全く……」


 モルスの大きなため息が辺り一帯に響いた。

モルス(ランテ語で死)

第102代教皇、生天教皇のウィータとは双子の兄弟

藍色の単発ヘアーに左目が黒く、右目が深い紺色のオッドアイ

補足

歴代で唯一の双子での教皇。ウィータの弟で内政や軍備の管理などを主に行う。ウィータとは対照的に落ち着いている。度々好き勝手する姉に手を焼いている。


元はウィータと同じく枢機卿の身であったが、先代の引退と共に就任。ウィータとはうってかわって、ほとんど必要な業務はこなせるようになっている。

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― 新着の感想 ―
この公爵は常識をどこに置いてきたんだ?無礼の意味を分かってんのか?傍目から見ても無礼は完全にお前の方なんだが
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