謁見
今回の話で250行くみたいです。いつも、読んで下さり、ありがとうございます!
なんやかんやあったが、馬車は正教会についた。俺たちは馬車から降りた後、教会に所属しているシスターに部屋に案内してもらうことになった。
ちなみにそのシスターだが、馬車からウィータが降りてきた時は顔面蒼白になって倒れそうになっていた。それもそうか。ただでさえ各国の要人の相手をすると言うだけで緊張すると言うのに、そこになぜか自身の組織のトップがいるのだから。まぁ、頑張ってほしい。
「あれ、アレスさんは行かないんっすか?」
俺たちとは対照的に、全く動かないアレスにレオが問いかける。
「えぇ、私は後から来る騎士養成学園の方々の出迎え等を行いますので」
「で、では、教皇様はどうするの?」
アリーシアがおずおずとアレスに質問する。確かに世界で唯一の宗教のトップと一緒なんて、気後れするよな。俺? 俺のことはいったん置いといて……。
「それはご心配なく。 そろそろ、お迎えが来られますので」
「お迎え?」
「さ、さて私は一度この辺で……」
アレスの言葉を聞き、ビクッとしたウィータはその場から逃げようとする。しかしそれを教会の奥から声が聞こえるとともに、現れた人物が阻止した。
「そうは、行きませんよ……ウィータ?」
「ヒッ! ザ、ザーアム……」
「権能まで使って脱走しおって、この生娘が……」
「痛い痛い痛い! 首絞まるしまる!」
ザーアムと呼ばれた人は背丈が190ほどもあり、とにかくガタイが良い。そしてアレスよりも煌びやかに装飾された服を纏っており、その中で最も特徴的なのが、法衣の一部分が本来では白い部分が赤く染色されている。
そんな大男が、片手でウィータの首根っこをつかみ、持ち上げている。足が地面から数ミリ浮いているとか、どんな力なんだ……。
「お久しぶりです、ザーアム様」
その異様な光景を気にも止めず、アレスが挨拶をする。それを聞いて、ザーアムと呼ばれた大男が反応した。
「アレスではないか! 息災であるか?」
「えぇ、おかげさまで」
「そうかそうか! それで、なぜ其方がおる? 確か其方は遠方に客人を迎えに行くのではなかったか?」
「えぇ、そうです。 こちらにおられますよ」
そういってアレスが俺たちの方に視線を向けるように誘導する。それに従うようにザーアムがこちらを見ると、ようやく気付いたようで、慌てて挨拶を行った。
「これは失礼いたしました。 私は生終天魔教にて、大罪枢機卿の地位の一席を預からせていただいております、【憤怒】のザーアム=サタンと申します。 ご挨拶、お出迎えの方遅れてしまい申し訳ない」
そういってお辞儀を行う。器用にウィータの首根っこを掴んでいる手の位置は動いていない。
「こちらの都合で大変申し訳ないが、この娘に少しやらねばいけぬことができたため、私たちはこちらで失礼いたします。 何かお困りごとがあればお申し付けください。 アレス、あとは頼んだぞ」
「承知いたしました」
そういってザーアムと呼ばれた人はウィータを掴みながら聖教会の中に戻っていった。
「さて、皆さんは移動しましょう!」
アレスがそういって手をパンッと叩いたあと、シスターに案内をするように促す。なんかちょっと、イキイキしてない?
大罪枢機卿
教皇についで生終天魔教における権力と地位を持つ人の中でも特殊な魔法を継承した人物たちの総称。戦闘能力が非常に高く、実質的な教会における最高戦力とも言われている。
ザーアム=サタン(ザーアムはヘブライ語で強い怒り)
憤怒の大罪枢機卿。50代ほどの中年男性だが、切り揃えられた赤色の短髪と、生気に満ちた橙色の瞳をしている。背丈は190cmで筋肉質。