儚い最後
今回短めかもです。
「グワアアアアァァァァァァァアアアアア!!」
と、白銀の龍は高らかに吠えると、空を飛ぶ乱風蝉にまっすぐに向かっていった。
「ブブブブブブブブブブブブブブ!!」
乱風蝉はまるで怯えたかのように、白銀の龍に向かって衝撃波を放った。
その衝撃波を白銀の龍はもろに食らい、爆発が生じた。
「あぁ!!」
と、リリーは声を上げるが数秒後、煙が晴れるとそこには、無傷の龍の姿があった。
「う、嘘……あれをもろに食らったのに……」
爆発が起きるような衝撃波だ。恐らく階級Sのタンク職が支援魔法をガッチガチにかけてもらってやっと耐えられるかどうかだろう。だが白銀の龍は無防備な状態で受けても、その輝く鱗には傷一つない。
「ブブブブブブブブブブブブブブ!!」
乱風蝉はかなわないと思ったのか、風をまといながら逃げ出した。さすが、風を操る討伐推奨レベルSの魔物だ。その速さは音すら置き去りにしている。だが……
「逃がすわけないだろう。【重力操作・引】」
俺は重力魔法にて乱風蝉を引き寄せた。六メートルの巨体はいとも簡単に引き寄せられていく。
「あの羽、うざいな、【同調斬撃】」
俺が雪月花を六度振るうと、まったく同じ軌道ではるか上空の乱風蝉の羽が斬れた。
透明な羽が六枚、ひらひらと光を反射させながら舞い落ちてくる。それと同時に重力魔法を解除すると、
大きな音を立てながら乱風蝉が落ちてきた。何とか風魔法で体を浮かせて逃げようとしているが羽を失い、バランスが取れないようで浮かんでは落ちて、浮かんでは落ちてを繰り返している。
「地に落ちたお前は何も怖くはない」
と、俺のセリフを待っていたかのように白銀の龍は乱風蝉のすぐ近くに、地響きを立てながら着地した。
そして龍はその鋭い爪を乱風蝉の頭と同の間をめがけて振り下ろした。
だが、最後の抵抗なのか蔦がその爪を防いだ。
そしてそのまま蔦や根が乱風蝉を守るようにドーム状に重なった。
「さすがにしぶといな。だが……」
そういいながら俺は魔法を放った。
「【解除】」
すると、蔦や根はまるで意思を失ったかのように重なりをなくし、乱風蝉があらわになった。
「さらばだ。生まれて間もなき空の強者よ」
そのセリフと共に白銀の龍の爪が振り下ろされた。
討伐推奨レベルS、乱風蝉との戦いは俺たちの勝利で幕を閉じた。
「ありがとう、助かったよ。誇り高き龍よ。また逢う日まで」
そういって白銀の龍を解除するとそこには先ほどまで激戦が繰り広げられたとは思えないほど静まり返っていた。
「あ、あの……」
「ん? なんだい?」
「先程は無礼な発言をしてしまい、申し訳ございません」
と、申しわけなさそうに俺に謝ってきた。
「もう気にしてないよ。リリーなりに俺を助けようってしたってことはちゃんとわかってるから。 ありがとな」
そういいながら俺はリリーの頭を撫でた。
ついに果てたランクS。それを見てリリーは何を思ったのか。それは彼女にしかわからない。