馬車の中で
これで道中の話は終われると思ってます!
あの後、俺たちは馬車の中に戻って、移動を再開した。あんなことがあったのに馬車の中は比較的いつも通りだ。一部……と言うよりはリリーを除いてだが。
馬車に戻ってから、なぜかリリーはみんなの目があるにも関わらず、右腕に抱きついている。なぜかというと、その理由は明白だ。
「すごい、鞘だけで見てもこの刀の良さがわかる……」
「そ、そう……」
「触っていい? ねぇ、触っていい? 早く見せて見せて」
「う、うん。 それはいいんだけど、ちょっと……近い、かな?」
「? 何が?」
先ほど雪月花を見せると約束したトモエが、なぜか馬車こっちの馬車に乗り込んできているのだ。しかも無自覚なのだろうが非常に距離が近い。よってリリーが穏やかではないのだ。
「トモエさんでしたか? す、少し距離が近すぎませんか?!」
「別に、やましいことしてないけど?」
「やましいことをしているしていないではなくてですね!」
「何が、だめ?」
プンプンといった様子で文句を言うリリーに、疑問形で返すトモエ。これ多分、素でやってるんだろうな……やっぱり変わっている。
俺は腰から雪月花を取り外して、トモエに手渡した。
トモエはまるで褒美の品を受け取るかのように、両手で丁寧に雪月花を受けとる。
「これでよく見えるでしょ? 振り回したりしなければ鞘から抜いてもいいよ」
「おぉ、いいの?」
「うん、いいよ。 あと、俺とリリーはこう言う関係だから、少し配慮してくれると助かるかな」
俺はそう言いながら左手にはめてある指輪を見せる。それを見て、何かを察したような表情をするトモエ。
「なるほど。 これは失礼した」
「うん、気をつけてね」
「そこのお嬢さん」
「リリーシャです!」
「えと、リリーシャさん。 配慮たらずで失礼いたしました」
馬車の中で、恭しく頭を下げるトモエ。このまま行くと土下座までしそうだ。リリーもそれを感じたのか、慌てて頭を上げるように促す。
「そ、そのぐらいで大丈夫です!」
「そう、感謝する。 それと、私が興味あるのは刀だから」
「は、はい……?」
「えと……あなた誰?」
おい! と心の中で突っ込む。そういえばみんなで名前を聞き合った時にトモエだけ一人でどっかに行ってたみたいだから俺の名前を知らないのか。東方の方から来たからあまり俺の名も知られてないのかもしれないな。そう思い、俺は改めて名乗る。
「ミラトだ。 ミラト=スペクルム」
「わかった。 その、ミラ……ト? には興味ないから心配しないでいい」
なんだろう、面と向かって興味ないと言われると結構傷つくかも。それだけいうと、トモエは少し距離を取り、雪月花を鞘から少し抜いて刀身をうっとりとした表情で眺め出す。
「やはり、綺麗……祖国で見た神器と勝るとも劣らない品を感じる……この波紋にこの反り。 まさに業物なんて言葉で言い表すことですら烏滸がましい……」
え、なんか今サラッと神器って言わなかった?! 俺は気になって聞き返す。
「え、今神器っていった?」
「うん? そんなに驚く?」
「いや、普通驚くでしょ?!」
馬車の中でみんなウンウンと相槌を打っている。あのアレスですら大きくうなづいているから、やはりみんなの中で神器は非常に希少なものという認識があるのだろう。まぁ、俺は人に言えたことではないが。
「私が見たことあるのは、菊一文字っていう刀の神器。 生涯であれに並ぶ刀を見ることができるとは思ってもいなかったけど。これはそれに並ぶレベル」
「まぁ、実際雪月花も神器だからね」
「あぁ、なら納得」
え、反応薄くない? なんか、やっぱりちょっと変わってて、やりにくい。それと、リリーさんはいつまでくっついているんですか? みんな生暖かい目で見てくるんですけど。
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