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打ち合い

「私が勝ったら、見せて」


 それだけいうと、トモエは自分の手を拭いてから腰に刺さっている刀を抜く。それを合図にしたかのようにみんなが俺から離れていく。


「えっと、どうしてもやらないとダメ?」

「武士は一度言った事を変えない」


 俺は武士じゃなくて魔術師なんだけど……。俺が困惑していると、アレスがやってきた。良かった! 止めてくれる!


「アレスさん!」

「遠くから感じていましたよ」

「じゃあ?!」

「中々面白い事をしていますね。 私も少々興味がありますので、どうぞ怪我しない程度に。 立ち合いは私が行わせていただきますね」


 あ、だめだ。この人意外とお茶目なんだった。楽しそうなアレスを見て、俺は諦めて大きく深呼吸をした後に、腰の刀に手を置く。


「それではこちらの小石が落ちるとともに開始いたしましょう」


 アレスは足元の手のひらに収まるほどの小石を拾い上げる。そして、それを胸の高さぐらいまで持ち上げると手を離した。重力に従って石は落ちていき、そして地に落ちたと同時だった。


「参る」


 体を低めながら、俺の刀がある方とは反対に瞬時に移動したトモエがその手に握る刀を横に一閃する。


「危なっ?!」


 俺は高く跳躍してそれを避ける。俺の着地を狙ってトモエの刀が袈裟斬りに振り下ろされるのを、雪月花を鞘から半分ほどだし、その刀身で受け止める。


「いい波紋。 やはり、業物」

「褒めてくれて、どうもっ!」


 俺は力づくで巴の刀を押し返す。その後、雪月花を完全に抜き切り、構える。その様子を見て、トモエは押し返された勢いを利用して一度俺から距離を取った。

 その後、姿勢を低くして、刃を上に、切先を俺の方に向けながら刀を方の近くに構える。


「……死なないでね」

「当たればね」


 俺がそう返すと同時に、トモエは両足で強く地を蹴った。そして構えた刀で俺の心臓の位置を目掛けて突進してくる。

 迫り来る刀に対して、俺は雪月花の峰で下から力を込めて打ち上げる。その力に耐えきれず、トモエの刀は弧を描くようにトモエの手から離れていき、体制を崩したトモエはその場に座り込んだ。俺は切先をトモエの眉間に向けながら、声をかける。


「これで終わりでいいかな?」

「……参りました」


 あっさりとトモエは負けを認めた。俺はそのセリフを聞いて雪月花を鞘に戻す。トモエは土埃を軽く叩いて払った後に、飛ばされた刀をとりに行った。そして戻ってきて、手を差し出してきた。


「楽しかった。 またやろう?」

「気を張るからできたら勘弁してほしいな」

「武士なのに、逃げるの?」

「俺は魔術師だよ」

「そうなの。 でも刀を持っているならみんな武士」

「なんだよその理論は……」

「次は勝つ。 そして、絶対に見せてもらう」

「いや、別に見せるのはいいんだけど……」

「ほんと?!」


 俺がそう伝えると、目をキラキラさせながら大声を上げる。いつの間にか握手した手にすごい力が入っており、ちょっと痛い。


「お二方、よろしいですか?」


 俺が困っているとアレスがパンパンと、手を叩きながら歩いてきた。


「馬車の支度などが済みましたので、そろそろ出発いたしますよ。 お話はまたあとでになさって下さい」

「わ、わかりました」

「……わかった」


 トモエは渋々といった様子で俺の手を離した。そしてアレスの方によっていく。


「あれ、どうすればいい?」


 トモエが指をさす方向には捕まえてきた猪とウサギの姿があった。


「これはまた立派なものを。 それでは食料を積んでいる馬車に載せましょう。 案内いたしますね」

「うん」


 トモエは頷くと、猪とウサギのある方に向かっていった。アレスはその後、俺たちがいる方に向き直り、指示を行う。


「では皆様はお先に馬車におもどりください。 あぁ、それとミラト様、少々こちらに」


 みんなが馬車に戻る中、俺だけ呼び止められた。


「なんですか……?」

「リリーシャ様、妬いていましたよ」

「え、何を?」

「見ればお分かりになられると思いますよ?」


 アレスに耳打ちされた俺はこっそりとリリーの方を見ると、頬を少し膨らませていた。もしかしてトモエと手を繋いだから?


「数分ほど荷物を乗せるのはかかりますので」


 それだけいってアレスはおれから離れた。なんて、できる人なんだ……。

もう一話ぐらいで道中の話は終わりますので……多分

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