白銀の龍
一度書いたのですが誤って消してしまい、書き直しました。
空を優雅に飛びまわる蝉。
しかし虫の蝉とは比べ物にはならないほど異形と化している。
六枚の羽に妖しく光る数十の目、貫かれたら重症は免れないだろうと予想できる鋭い足。そしてなにより……
「で、でかい……」
その巨体は六メートルは余裕で超える。
「あ、あぁ……」
リリーは乱風蝉の放つランクSの風格に当てられて震えてしまった。
恐らくだが、炎狼の時と似た雰囲気を感じてしまいあの時の事を思い出させてしまったのかもしれない。
俺は優しくリリーの手を握ると、声をかけた。
「大丈夫、俺がいる。俺が君を守る」
「はぁ……はぁ……もう、大丈夫です。ありがとうございます」
今後もSランクの魔物とは会うだろう。その為に慣れてもらわないと。
そして何より、ここで脅えてしまっては彼女は過去を乗り越えることは出来なくなってしまうだろう。それは彼女のためにはならない。
そんな事をしていると乱風蝉は耐えきれなくなったのか、
「ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブ!!!」
と、大きな羽音共に衝撃波を放ってきた。
「くっ……【物理反射】」
何とか俺は衝撃波を跳ね返した。だが、乱風蝉は空を飛ぶ事で難を逃れていた。
「ちっ、やはり空を飛べるということはかなりのアドバンテージだな」
「はい、あちらは一方的にこちらを攻撃できますもんね」
「あぁ、かなりめんどくさい事になるぞ」
とりあえずなにか牽制でもするか。
「【土弾連射】」
と、土で出来た無数の弾が乱風蝉を襲うが、それを蔦が遮った。
「な?!」
何故だ?!エルダートレントは死んでいるはず……まさか……
「エルダートレントの魔力を吸っていたからなのか?!」
くそ、かなり厄介だ。
するとリリーが声をかけてきた。
「ミ、ミラト様……」
「なんだ、どうした?!」
「わ、私が囮になるのでその間にお逃げ下さい……」
「な、何を言っているんだ?!」
「私は奴隷なので、こうなる事は承知の上です……」
「な……」
「今ならまだ間に合います。どうか」
「何を言っているんだ! リリー!俺が、俺がそんなに弱く見えるのか?! 自分が危険になると仲間を見捨てるようなやつだと言うのか?!」
「い、いえ、そんなつもりは……」
「俺は君を守ると誓ったじゃないか! 俺を信じてくれ!」
「で、でも……どうするんですか?!」
「まぁ、よく見ていて」
そう言いながら魔力を集めた。
「これが君が辿り着く力の一端だ」
そして魔力は少しづつその姿を形成しだす。
あらゆるものを切り裂く爪、大樹のような尾、空を自由に翔ける翼、魔法をも噛み砕く牙、そしてなにより……その巨体は光を反射してキラキラと輝いている。
「こ、これはまるで……」
「さぁ、空はお前の支配領域だ。白銀魔法、【白銀の龍】」
「グワァァァァァァァアアア!!」
それは白銀によって生み出された一匹の龍だった。
現れたのは白銀により形成された龍、強さは次回明らかに