思わぬ再会
「うーし、全員揃ってるな。 まずは久しぶりだな」
「お久しぶりっす!」
「んーまぁ、積もる話がないと言えば嘘にはなるが、まずは大事な連絡事項から伝えるぞ」
「連絡事項って何すか?!」
「まぁ、焦るな。 何人かは察しがついてるとは思うけどな。 この時期になると恒例のあれだ」
そう言いながら、アレックス先生は黒板に文字を書き始めた。
「つーわけで、一月半後に今年もあー……芸術国際、何だっけ」
「先生、芸術的無形文化財保護活動音楽部門国際交流のことですか?」
「それだガネス。 まぁながったるいのは苦手だからな、簡潔にいうなら音楽国際交流が行われる」
「「「「「「「「「「おぉー」」」」」」」」」」
「今回の開催国は聖教国サンクチュアリだ。 それなりに遠いからな、一週間後には移動を始める」
そう言いながら、先生はドアの方を見た。
「毎年音楽国際交流は開催国が各国に自国の人を送り、道案内をさせるのが慣わしだ。 もちろん俺たちのところにも案内人がいる。 今日は顔合わせということで来てもらっているから、お前らしっかり挨拶はするように」
「もちろんっす!」
「お前が一番心配だ、レオ」
「何でっすか?!」
「まぁ、置いといて……あとは頼んだ」
先生はそう言って窓の方に移動して行き、窓に腰をかけて腕を組む。まるで見計らったかのように、先生が止まったと同時にドアが開き、一人の男性が教室の中に入ってきた。
「皆さんお初にお目にかかります。 本日、アレックス殿の計らいにて、予定より早めに皆さんとお顔合わせできたこと、嬉しく思います。 生終天魔教本部、聖教国にて司教の地位を預かっています、アレスと申します。 当日まで、皆様を無事にサンクチュアリまでお連れできますように誠心誠意尽くしますので、わずかな時間ですがよろしくお願い致します」
教団の目の前に立ったアレスは丁寧に会釈をしながら述べる。
「いいか、この方はあの五感司教のうちの一人だ。 変なことしないようにな」
「ご心配には及びません、アレックス殿。 若人の活気溢れる姿はこちらも活気づけていただけるという物です」
そう言いながら、軽くニッコリと微笑む。
「そして、お早い再開になりましたね。 ミラト様、リリーシャ様」
「お久しぶりです、アレスさん」
「お二方のおかげで先日はあの後、滞りなく本国に帰国することができました」
「それはよかったです」
「今回の案内ではその礼をお返しできるように努めますね」
そう言いながら、アレスは右手を心臓の位置に当てながら軽く会釈をする。身に纏っている服装と丁寧な所作も相まってか、美しさすら感じる。
「なんだ、知り合いだったのか」
「えぇ、ラービスに向かう際に少し」
「窮地のところをお助けいただきました。 私がついていながら、不覚でした」
心底悔しそうな声を上げるアレス。本当に悔やんでいるのが伝わってくる。
「さて、話が逸れてしまいましたね。 皆様、短い間ですが何卒よろしくお願いします」