その後
お久しぶりです。惚気回です
アザレアちゃんとの件が終わってから、既に七日が経過した。幸いなことに、王都から派遣された人たちがまだ残っていたおかげで、復興は少しづつ進んでいっている。
「次は、こっちにお願いします!」
「はーい!」
俺たちも復興を手伝っており、俺は復興の建築物に使う木材や石材を、運搬している。鏡の世界に入れては、呼ばれた場所に向かい、その場で必要な分の資材を出すだけなので、職人たちに比べたらだいぶ手間はない。
「皆さんお疲れ様です。 水分補給しっかりしてくださいね」
リリーは作業をしている職人さんたちに水を渡している。
「ありがとうお嬢ちゃん!」
「いやー、べっびんさんからもらった水はうまいねー!」
「うちの女房も昔は別嬪だったのに、今はもうよー!」
「わかるわかる」
水をもらった職人たちはリリーのことをほめ、自分の奥さんの話をリリーにしだす。奥で職人たちのためにみんなで大鍋で料理を作っている婦人らが職人たちを睨んでいるが、当の本人たちは気づいていない。
「あ、あの!」
「はい、どうされました? えっと、アスリさん、でしたっけ?」
すると職人たちの中では一番若い青年、アスリが急に立ち上がりリリーに近づいていった。
「あ、あああのよ、よかったら今度、しょ、食事とかし、しません……か!」
そう言いながらお辞儀をし、手を差し出す。周りにいる年配の職人は口笛を吹いたりして、冷やかしている。
「お気持ちは嬉しいのですが、その……」
リリーも無碍に扱うわけにはいかない様子で、返事に困っている。
「そ、その! お、お俺はまだまだ半人前ですが、あなたのことが好きな気持ちは誰にも負けないつもりです!」
顔を上げた青年は顔を真っ赤にしながらそう言い切る。現場は小さな騒ぎになった。
「え、えっと……その、実は」
リリーが困ったような顔をしながら俺の方を見てきた。俺は意図を汲み取り、リリーの方に歩いていく。
「あー、アスリくんだっけ?」
「はい、そうですが……あなたは誰ですか」
俺が急に声をかけたことで、少し驚いた様子のアスリはすぐに俺のことを睨んだ。
「リリーのことを好きになってくれるのは嬉しんだけど……」
そう言いながら俺はリリーを抱き寄せる。
「なっ?!」
驚くアスリに、俺はリリーの左手を持ち上げ、薬指を見せる。ついでに自分の左手も一緒に見せる。
「こういうことだからさ、ごめんね?」
「ミ、ミラト様別にそんなことしなくても……」
リリーがはずがしそうにいってくるが、尻尾がぶんぶんとすごい速さで揺れている。
「アスリさん。 お気持ちは大変嬉しいのですが、このように私には既に最愛の方がいますので……申し出は受けれません。 すみません」
「あ、えっと……」
「リリーのこと、好きになってくれて嬉しいよ。 でも、人の婚約者を二人っきりで食事に誘うのは少し遠慮してくれると嬉しいかな」
「は、はい……すみません?」
俺たちはそれだけいうと、その場を離れた。後ろから、冷やかす年配の職人たちの声が聞こえてくる。
「ミラト様、ちょっと大人気なかったですよ」
「え、そうかな」
「はい。 もしかして嫉妬しちゃいました?」
イタズラっぽくリリーが聞いてくる。俺は考えるまもなく即答した。
「それは、もちろん。 だってリリーは俺の大事な相棒で、恋人なんだからね。 リリーは俺のこと好き?」
「は、はい……もちろん大好きです……///」
聞いてきたリリーが顔を真っ赤にしながら、消え入りそうな声で返事をしてくる。ぶんぶんと振られていた尻尾が、いつの間にか脚に絡みついてきている。少し歩きにくいが、まぁ大した問題じゃないからこのままでいいだろう。
後一話ぐらいで、ラービスのメインは終わります。その後、閑話の更新があるのでラービス自体はもう少し続きます。