淡い光を掴みに
俺たちは移り鏡で一度上空まで転移する。その後、それぞれの足元にまた移り鏡を展開し転移を行う。
リリーは黄金の蔓や蔦が一番密集している場所の上空に。
そして、俺は反対に一番少ないところに。
俺たちが転移をすると同時に、まるで生き物かのように、一斉に動き出す。そして、俺とリリーそれぞれの方向に、ほぼ均等な量の攻撃が飛んでくる。
「白銀魔法【白銀の園・大華主】!」
着地と同時に白銀魔法を発動させるリリー。そして自らに纏った白銀でリリーはトゲトゲしい蔓を数本作り出し、アザレアのいるほうに攻撃を行う。
その瞬間、俺に向かってきていた攻撃のほとんどが、急速に方向を変え、リリーの攻撃の迎撃に向かい出す。 そして、元々リリーのことを攻撃しようとしていた蔓たちは魔法を発動させたリリーを叩き潰そうとする。
「っ!」
遅いくる蔓たちを白銀に変化した地面を操り、即席の壁を作ることでギリギリ防ぐ。
「私が、引き付けます! ミラト様は早くアザレアちゃんの元に!」
「あぁ!」
リリーの叫び声が、激しく金属を叩きつける音にかき消されながらなんとか俺に届く。俺は聴こえないのは知っているが、それでも大きな声で返事をする。
「とはいえ、こちらも無視ってわけじゃないんだよな」
ほとんどがリリーの方に向かったとはいえ、こちら側にも蔓や蔦が俺の行手を阻む。俺は雪月花を鏡の世界にしまう。せっかくリリーが命懸けで相手のヘイトを買ってくれているのに、攻撃をしたら無意味になる。
「さて、悠長なことはしてらんないな」
俺が顔を上げると、まるで様子を伺うように俺の周りを微動だにしない蔓たちがある。俺は自らに身体強化の魔法をかけ、アザレアのいる方へ走り出す。俺が走り出すと同時に俺に向かって攻撃が開始される。
「っ! あぶな……」
俺の上から叩きつけるように降ってきた蔦を体を捩り回避する。その後、俺の胴体のあたりを薙ぐように襲ってきた蔓をスライディングをすることで間一髪で回避、そのまま地面に近い方の手で地面を突くように押し、体を無理やり持ち上げることで、先ほどまで足があった空間を蔓が素通りする。
「くそっ!」
近づけば近づくほど、攻撃の間隔が短くなっていき、一瞬でも気を抜いたらあの世に行きそうだ。
「っ!」
バックステップをすることで、蔦が俺の鼻先を掠める。そのまま俺の背後から襲ってくる蔦を、足が地面につく前に土魔法で地面を小さな坂のように変化させることで、変化させた地面を蹴り、前に跳躍して間一髪で回避する。
「しまっ?!」
しかし回避した直後、左右から蔦と蔓が襲ってくる。一か八か、体を捻りながら、回転させた方向と同じ方向に回転する風を発生させることでかすり傷程度に損傷を回避する。
その後、地面に着地すると同時に右に転がることで上空からの攻撃を躱す。その後、地面からのわずかな揺れを感知し、力一杯の跳躍を行う。俺が跳躍をした瞬間に地面から根が飛び出し、引き摺り込もうとしてくる。
跳躍したことでことなきを得たが、予見していたかのように跳躍した俺を頭上にある蔓が俺の背中を叩きつける。
「うぐっ!」
幸い叩きつけていた時ほどの威力は無く、俺は水魔法で水球を生み出し、その中に自らを沈めることで落下の衝撃を緩和させる。
「っ! でも、たどり着いた、ぞ!」
水球に襲ってくる蔦を、水の中で転狩り外に避難することで、避けると同時に攻撃に注意を一瞬引き付ける。そして俺の目の前には、黄金の膜で全方位を覆われ、揺蕩うアザレアの姿があった。