エルダートレント
今回途中で視点変更があります。
【迷いの森林洞窟】に入って、約一時間がたとうとしている。メシアさんのマッピングもあってか、迷わずにスムーズに進めている。
「ダンジョンランクAと聞いていたので強い敵ばかりだと思っていましたがそうでもないようですね」
と、休憩中にリリーが話しかけてきた。
「いや、ダンジョンランクはダンジョンのボスの討伐推奨レベルと、同じになるんだ。だからたとえ道中の魔物がスライムしかいなくてもボスがドラゴンならダンジョンランクはSになる」
これはあまり知られていることではない。学者によっては道中の難易度とボスの難易度の中間の値をとっているという人もいるが、それだと実際にあった【スライムの魔窟】の説明がつかない。
「へぇ~そうなんですね」
「まぁ、だからといって気を抜いていいってわけじゃないけどね」
「それはもちろんわかっています!」
「うん、ならいい。そろそろボスだ。落ち着いていこう」
「はい、わかりました」
そして俺たちは探索を再開した。
あれから数十分たった俺たちは周りと比べて段違いの大きさの樹木を見つけた。周りは今までと違い、かなり開けている。森の上空が開いており、そこから暖かい日差しが大きな樹木を照らしている。
「あれが恐らくエルダートレントだ。大きさも魔力も周りのトレントとは格が違う」
「先に周りのトレントを倒しますか?」
「いや、ダメだ。エルダートレントは共通してトレントを生み出す力を持っている。それだとじり貧だ」
「なら、どうしますか?」
と、リリーが聞いてくる。俺は少し考えた後、
「俺がトレントたちを足止めする。その間にリリーは白銀魔法でエルダートレントを倒してくれ」
「わかりました」
「三、二、一、で行くぞ、準備しとけ」
と言いながら俺は白銀魔法の邪魔をしない魔法の発動を準備する。
隣でリリーシャも魔力を集めている。
俺たちは一度頷きあうと、
「いくぞ。三、二、一、今だ!」
と言いながら飛び出した。
「【表面凍結】」
すると周りにいたトレントたちは氷ついた。この魔法では表面だけ凍らして生物を仮死状態にするものだ。仮死なので完全には死んでおらず、特定数破壊されると……とかの効果を持つ魔物に対してかなり効果を発揮する。
これで俺はある程度やることは終わった。さてと、あっちはどうなっているかな……
~リリーシャ視点~
ミラト様がトレントたちを氷漬けにした。私の使う氷魔法より精密な操作を行っている。さすがはミラト様だ。後で私も教えてもらおう。それより今は……
「ミラト様から任されたんです。確実に仕留めます!」
私は貯めていた魔力を解き放った。そして現れるは銀の花で埋め尽くされた花園だった。
「白銀魔法【白銀の園!】」
その花園は日の光を反射してきらきらと輝いている。
「さぁ、行きますよ!」
私の声と共に花びらたちが吹雪のようにエルダートレントを襲った。
あのはなびらは生半可な剣よりはるかに切れる。
「ギギギギギギギギギギギギ!!」
実際、身を守ろうとしたエルダートレントの枝や葉がまるで紙のようにスパスパと切れて行っている。
何とか反撃しようと根を伸ばしてくるが、下は白銀化した土に阻まれて貫くことはできていない。
ついにあきらめたのかエルダートレントは後ろに下がり始めた。きっと逃げようとしているんだろう。でも……
「逃がさないわ! 白銀の蔦よ。お願い、エルダートレントを捕まえて!」
私の声に呼応するかのように無数にできた蔦がエルダートレントを絡めとらえた。
その後、エルダートレントは手も足も出ず、鋭利な花びらによって、その命を散らした。
「何とかうまくいきましたね……」
と、私が安堵していると、土の奥深くから何かがやってきた。不意打ちをくらった私は……
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