一件落着?
あと数十話で終わる予定です。予定にはなりますが……
あれから、数分ほどアザレアは大きな声で泣いていた。正直先程の戦闘の傷に加えて、アザレアの魔法を喰らっているため、今にも痛みで意識が飛びそうなのを、こらえている。
「す、すみません……グスッ、ありが、とうございました」
「……落ち着いた?」
「はい、なんとか一応……」
そう言いながら、俺から離れて自分の涙を拭った。俺はそれを見てから、俺の後ろにいるサマリの方に向き直った。サマリ手足を貫かれているため、その場から動蹴ていない。
俺がサマリの方に一歩踏み出すと、サマリはビクッと体を震わせた。俺はサマリに触れると、初級の回復魔法を使い、最低限の止血をおこなった。
「何をなさってるのですか?!」
「や、やはり鏡魔術師様も私に死なれては困るということですかな?! な、何がお望みで? わ、私にできることでしたら、なんでもいたしますぞ!」
俺が止血をおこなったことで、助けられたと思ったサマリはふらふらと立ち上がりながら、俺の方に手を伸ばしてくる。俺は何も言わずに伸ばされた手の手首を握り、
ゴシャ……
そのまま握りつぶした。
「あぁぁぁぁぁあああ?! い、痛いぃぃぃぃぃ?!」
俺に手を握りつぶされたサマリは握りつぶされた右手の手首を押さえながら涙目で俺を見てきた。こんなおっさんにされても、何も感じないが。
「勘違いするなよ? 俺はあんたを守りたくて治したわけじゃない。一つ目の理由はアザレアちゃんの為。 二つ目の理由はあんたを正式なネイシスの法で裁く為。 三つ目はあんたから終焉之救済の情報を搾り取るためだ。 いいか? これらの要因がなければ、俺が今ここであんたを殺してるところだったからな?」
俺はサマリの館の時とは比べ物にならないほどの、明確な殺意を向けた。向けた。その明確な殺意を向けられたサマリは蛇に睨まれたカエルのように震え上がり、何も言えなくなっていた。
「じゃあ行こうか」
「あ、ミラトさん?! あの……」
俺は全身の痛みに耐えながら、サマリを魔法で浮かせながら運び出した。運び出した。
「あの、せめて治療を……」
「今はいいや。 派手な音を出しすぎたから野次馬が来る前に撤退したい」
「分かり……まし、た……」
俺の発言に不服そうに肯定するアザレア。その様子を見ると申し訳なくなる。野次馬が寄ってくるのもそうだが、万が一まだ終焉之救済の監視や、繋がりがあった時に治癒の鏡をばらされたくないからだ。
「……っ!」
「や、やっぱり……」
「いや、いいよ。 大丈夫、ありがとうね」
「いえ、たいしたことでは……」
俺は重力魔法を使い、降りてきた穴を上昇していった。