糸
お久しぶりです。スランプ気味でした。
ガキンッ!
鉄と鉄がぶつかるような音が響いた。
「ほう……これも防ぐとは、なかなか良い目をお持ちのようでございますね」
防がれたことに驚きもせず、優雅にパチパチと拍手を送ってくるロスティトリア。立ち振る舞いから余裕がにじみ出ている。
「素晴らしいですね。 見えないと思ったのですが」
「なんで、こんなことを?!」
「言ったでしょう? 私は十二之円卓の一席を預かる者。 任された使命をただ遂行するだけですよ」
「っ……!」
風切り音と共に背後から何かが迫ってくる。魔力の反応はないため、魔法や魔法道具の類ではないのだろう。
「いい加減諦めてくれると嬉しいのですが」
「はぁ……はぁ……ざ、残念だけど……そういうわけには行かないんでね!」
四方八方から聞こえる風切り音に反応し、弾くだけで精一杯だ。数分もしていれば、精神的な苦痛も相まって息が切れてくる。
「はぁ……では仕方ないですね」
「っ?!」
ガキンッ!
雪月花の刃を通じて、とてつもない衝撃が襲ってきた。
「い、一体これは……?」
「別に知らなくてもいいでしょう? 私の使命はあなたではなく、そこにいる少女のアザレアの抹殺なのですから」
そう小さく言い放ちながら俺の近くで立ち尽くしているアザレアを冷たい視線で見つめている。
「悪いけど、それはさせないよっ! 氷魔法【氷刃】!」
氷でできた六つの刃がそれぞれ別々の角度からロスティトリアを襲う。それをロスティトリアは一瞥すると、量の指の手を軽く曲げるだけで、氷の刃が細切れになった。
「はぁ……なんですか、この小手先だけのつまらない所業は」
「でも、小手先だけのつまらない所業であんたの攻撃の正体が分かったよ」
「ほう?」
「それは……糸、でしょ」
氷に反射した何かが細切れにするのが見えた。細く、とても激しく振動しており、触れただけで簡単に切断されていた。
「いやはや、まさかそのための小細工でしたか。 やはり私も歳……という事ですかな」
そう言いながら丁寧に整えられた髭を撫でるロスティトリア。その様子は最初の時と変わらず余裕綽々といった様子だ。
「さて、手の内がバレたということで降参……なんていうと思っていましたか?」
「っ!!」
一瞬諦めたのような様子を見せたが、その直後に体を低くしながら俺の方に向かってきた。そして手を大きく振ると、その大きな動作とは似つかない、足元や背中、頭の上などの死角という死角から糸が襲ってきた。
何度も襲ってくる糸を弾くが、何度も何度も死角という死角から襲われ続け、対応が少しづつ遅れていった。
「しまっ?!」
「花魔法【ハナミズキ】」
その声と共に、小さな白い花弁を持つ花が俺の前に現れた。その花に触れた瞬間、ロスティトリアの放った糸がビタリと止まった。
「私も……私も、戦います! もう、守られてるだけの私ではありません!」
「ふぅ、なんとも小癪な小娘ですね……」
初めてロスティトリアの余裕の表情が崩れた。