閑話:年の瀬
ギリギリの年末閑話の更新です!
「今年もお世話になりました」
「いえいえ、こちらこそミラトさんには大変お世話になりましたから。 お礼を言うべきなのは私ですよ」
今年最後の日、俺はお世話になった人たちに、今年一年の感謝を伝えに行っていた。まず初めに向かったのはシンラのところだった。
「この後はどちらに向かわれるのですか?」
「まずはクラスメートのみんなのところには行くでしょ? そのあとはステアさんと、その後に少しよるところがあるんだ」
「時間は大丈夫なんですか?」
「まぁ、歩いたりしたらそれなりにかかりそうだけどね」
「相変わらずの規格外ですね」
シンラが乾いた笑いを浮かべた。俺もつられて笑い出した。
「じゃあ行ってくるよ」
「はい。 お気をつけて」
「ありがと」
俺は手を振りながら移り鏡を潜っていった。
「おや、どうしたのかしらミラト」
「今ステアさん平気?」
「一応仕事はひと段落してるわよ」
「そっか良かった。 何かのむ?」
「そうね、戴こうかしら」
ステアさんは近くの椅子に座ると、間髪入れずに紅茶を頼んだ。俺はステアさんとは反対側に座り、果実水を頼んだ。飲み物はすぐに提供され、ステアさんは優雅な手つきで一口紅茶を飲んだ後、問いかけてきた。
「今日はリリーちゃんはいないのね」
「まぁ、ちょっとね」
「何、喧嘩でもしたのかしら?」
「いや、そうじゃないよ。 リリーは今、里帰りをしているんだ」
「里帰り?」
「あぁ。 俺もこの後そこに向かう予定だよ」
「そう。 なら無駄な話をしてないで早く向かったほうがいいと思うわ」
「あんまり自分との話を無駄っていう人はいないと思うんだけどな……」
「あら残念、ここにいるわよ?」
不敵に笑いながらステアさんはそう言った。俺は肩をすくめた後、果実水を飲み切った。
「じゃあ手短に。 ここ最近なんか起きたことはある?」
「そうね、少し待ってて」
ステアさんはそういいながらカウンターの奥に行き、数枚の紙を持ってきた。
「これぐらいかしら」
「どれどれ……」
そうしてステアさんからここ最近の事件について聞いた。
「なるほどね」
「まぁ、そんな大したことはないわ」
「そうだね。 じゃあそろそろ……」
「そうね、いってらっしゃい」
「ありがと」
俺は会計用の銀貨を一枚置くと、そのまま移り鏡で転移した。
俺は移り鏡でリリーの村に転移した。既にリリーから俺がくることを聞いていたようで、壮大な出迎えなどはなかった。俺が村に入るとすぐに、村の村長が声をかけてきた。
「失礼ですが、もしかして貴方様が鏡魔術師様のミラト様で間違い無いですか?」
「えぇ、そうですよ」
「私は村長のムーラサォといいます。 リリーシャの居場所まで案内いたします」
50代ぐらいの男は名乗った後、誘導するように俺の前を歩いていく。俺も静かにムーラサォの後についていった。その間、ぽつりぽつりとリリーの昔話をしてくれた。俺は何も言わず、ただ聞いていた。十数分ほど歩いていると、村長は止まり、前の方を指差した。
「ここから先に、リリーシャとその両親の墓があります。 私はこれで、失礼します」
「ありがとう、ございます……」
「こちらこそ、リリーシャを大切にしていただき、感謝しています」
そういいながら来た道を戻っていった。俺はそのまま直進すると、すぐに二つの小さな石と、その石の前に花を添えながら手を合わせているリリーがいた。
「リリー」
「あ、ミラト様」
俺が声をかけると、すぐに立ち上がりながらこちらを向いて返事をした。
「報告は……終わった?」
「……はい」
「そっか」
俺は少し寂しい顔をしているリリーの頭を軽く撫でた後に、リリーの両親の墓の前にあるいて行き、墓の前でしゃがむと、静かに手を合わせながら数分ほどの黙祷をした。
「ミラト様……」
その様子を見ていたリリーがそう呟いたのが聞こえた。
「じゃあ、行こうか」
「……はい」
「リリー」
「はい?」
「ご両親の二人に変わって、幸せにするからね」
俺はそういいながらリリーの手を握った。リリーからの返事は聞こえなかったが、強く握り返されたて手と、ユラユラと揺れている尻尾を見れば、いうまでも無いだろう。
今年も読者の皆様には大変お世話になりました。
私自身の都合により更新頻度には昔からばらつきがありますが、それでも読んでくださっている皆様には頭があがりません!
来年こそは!というと辛いことになりそうなので(笑)、変わらずマイペースに更新して行きたいと思います。
流石に目標は定めておきたいので、2024年内には100万pv行きたいと思っていますので、応援の方をしてくださると、幸いでございます。