家の中
更新になります!クリスマスまでに終わる気がしない……(笑)
俺たちは先程の商人が出てきた扉を開けて中に入った。中は不気味なほどに普通の家と言った様子だった。だが中には先程の三人の姿が見当たらない。
「どこに行ったんだ?」
「私に任せてください」
そう言いながらアザレアは迷いなく家の奥の壁の方に向かっていった。奥の壁につけられている食器棚の中には複数の食器セットが置いてある。
その中のある一セットだけ色が僅かに薄い。アザレアはその食器をグッと押し込んだ。すると、どこからかガチャっと音がなり、食器棚の近くの床がわずかに盛り上がっていた。
「これは?」
「俗にいう隠し部屋です。 私たちラビュリントゥス家はそれぞれの隠れ家を共有しています。 そしてその際スムーズに身を隠せるように隠し部屋の開け方は共通なのです。 何かしらいじってあると思っていたのですが、どうやらその心配は杞憂のようですね」
そう言いながら近くの盛り上がった床を開いた。そこには地下につづく穴と、ハシゴがあった。
「きっとこの先にいます。 ミラト様、いきましょう」
「そうだね」
俺はアザレアを抱えると、その穴を飛び降りた。
「え……?」
「口閉じててね、舌を噛むよ」
「ムグッ」
驚きながらもアザレアは自らの両手で口を覆った。わずかに涙目だったような気がするが、気のせいだろう。
「よっと」
穴自体はそこまで深くないのか、一分ほどで下についた。俺たちの目の前には石を削って作られた扉がある。
「アザレアちゃん、大丈夫?」
「だ、だい、丈夫……です」
涙目になりながらアザレアはそう答えた。アザレアは一度深呼吸をすると、目に溜まった涙を払い、岩でできた扉に触れた。
その扉は軽く押すと、ゆっくりと開いた。
「危ない!」
扉が開いた瞬間、風切り音と共に何かが迫ってきた。俺はアザレアの前に立ち、雪月花を抜刀し、それを受け止めた。
ガギンッ!
雪月花の刃に、鉄のようなものがぶつかる音が響いた。
「流石ですね、見えてなかったと思うのですが?」
奥からバラートさんが歩み寄ってきた。その目は冷たく俺をみている。いや、というより俺とアザレアを見てる。
「これは、どういうことですかバラートさん……」
「バラート? あぁ、私でしたね」
「何を言って……」
「もう隠す必要もなくなったことですし、正体を明かしても問題ないですかね」
そういいながら、バラートは自らの服装を一度丁寧に整えると、こほんっと一つ小さな咳をしてから話し出した。
「私は終焉之救済の中でも選ばれし十二人、十二之円卓が一席を預かる者、【隠者】ロスティトリアと申します。 どうかお見知りおきを」
そういいながら優雅にお辞儀をした。そして体を上げる瞬間、ロスティトリアの指がわずかに動き、先ほど聞いた風切り音がまた聞こえてきた。