正体
更新です。お待たせしました。過去最大の構想と力を込めた根幹の話が動きます。ここからは筆が乗りやすいところになると思うので更新率は多くなるとおもいます。ご期待ください!
「それで、キユリちゃんはどうしたい?」
「私は……取り返し、たい……仇を、とりたい……です」
自らの願いを確認するように、途切れ途切れになりながらも自分の心の内を発した。それを聞いた俺たちは軽く目配せをした後に頷き合い、キユリちゃんの手を取った。
「じゃあ行こう」
「いいんですか? 本当に」
「もちろんいいよ。 だって助けるって決めたから」
「分かりました……で、では日が沈んだ頃、もう一度ここに来ていただけますか?」
「いいけど……どうして?」
「それは……覚悟を決めるためです」
「覚悟?」
「はい……どうか、お願いします」
俺はキユリちゃんの頭を撫でながら微笑んだ。
「わかった。 なら日が暮れた頃にもう一度会おう」
「はい!」
「じゃあ俺たちはいったん地上に戻るね。 行こうリリー」
「わかりました」
「それじゃあ、また後で」
「はい。 また、夜に」
そうして俺たちは、いったん別れた。
「さて、そろそろ行こうか」
いったん地上に戻ってきた俺たちは数時間ほど待ち、日が沈み出すのをまった。空が茜色に染め上げられる様子を見ながら、俺達は移り鏡で二十二階層に転移した。
「うん、やっぱこの階は気味が悪いね」
「ですね」
二回目だけど、様子がおかしいこの階はやっぱり居心地が悪い。俺は大きくため息を吐いた後に、キユリちゃんと会った場所まで歩き出した。
「キユリちゃーん、いるー?」
俺は茂っている草木をかき分けながら声をかけた。
「あ、はい。 います」
そうキユリちゃんから返事が返ってきた。そして俺がキユリちゃんと会ったところに行くと、そこには一人の少女の姿があった。
「キユリ……ちゃん?」
「ご足労感謝します、ミラトさん」
そこに佇んでいた少女は、俺を見つけるとこちらを向いて、丁寧にカーテシをした。
「隠していてすみませんでした。 改めて名乗ります。 私はアザレア。 アザレア=フォン=ラビュリントゥスと言います」
そう告げる少女は数時間前に話した少女とは風貌が変わっていた。比喩とかではなく完全に違っていた。
「キユリちゃん ……ですよね?」
「はい、そうです。 リリーシャさん」
そう微笑む少女の髪の色は黒から雪のような純白の長髪になり、それを紫色の花が装飾された髪留めで緩く一つにまとめている。
鮮やかな桃色の瞳は左右で濃さが違い、右目は色鮮やかな桃色で、左目は淡い桃色だ。
服装も白いワンピースではなく、汚れ一つすら見当たらない純白で、桃色の差し色がところどころにされているエンパイア風のドレスと、対比のような黒を基調としたヒールを身につけている。
その美しい風貌はこの異質な階層の中で、一際存在感を放っている。
「私はもう逃げないと決めました。 この街の領主として、その責務を果たそうと思います。 どうか……お力添えをお願いいたします、鏡魔術師のミラトさん」
そう言いながら俺の顔を見つめるその双眸には、確かな決意が宿っていた。
アザレアはうちの師匠である、あのお方が考えてくれたものを原案に作成したキャラです。
領主だけが持つ特殊な魔法についてはおそらく次の話で書けますのでお待ちください!