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助けを求める勇気

「卑怯……ですよね。 責任から逃げて、周りの目を恐れて、ただじっとみんなが私を忘れてくれるのを待つなんて……私はそんな、弱くて浅はかな自分のことが、嫌いです」


 俯きながら、小さくもしっかりと言い切るキユリちゃん。目には潤いがあるが、決してそれを表に出さないようにしているようにも見える。こんなに幼い子が、こんなふうに考えるなんて……。


「あ、あの……?」


 気づいたら俺はキユリちゃんの頭を撫でていた。


「別にいいんだよ、逃げても」

「え?」

「俺も何度も逃げて、後悔して……そんなんばっかりだから」

「でも、あなたは強いじゃないですか?! 私とは違い、意志を貫ける強い力が……」


 そういうキユリちゃんの目には羨望と嫉妬、そしておそらく自分に対する嫌悪が混ざったような目をしていた。俺はそんな目をしたキユリちゃんを微笑、しっかりと見つめながら話した。


「ううん、俺だけじゃない。リリーも、王様だってみんな弱いんだ。 生きている限り、誰よりも、何もかも優れているなんて人はきっといない。 でもだからこそ、人はお互いに助け合うんだよ。 弱いことは決して悪いことじゃないんだ」

「そんな……でも、私が、私が強ければきっと奪われなかった……きっと守れた……」

「もしかしたらそうかもしれないね。 でもそれと、今のキユリちゃんの全部を否定するのは違うんじゃないかな?」

「え……?」

「その出来事だけが君を作っているわけじゃないんだからさ、全部否定しちゃったら、キユリちゃんの幸せな想いや嬉しかったことも否定することになっちゃうよ。 そんなの、あまりにも悲しいじゃん?」

「……それは」


 俯いて考え事をするキユリちゃん。本当はこんな小さな女の子が考えることじゃないんだけどね。


「確かに、私には否定したくない、忘れたくない思い出が、経験がたくさんあります……でも、今の状態では、私はどうしたらいいのか、わかりません」

「一言、こう言ってごらん?」

「一言?」

「そう、『助けて』って」

「た、助けて……?」

「もちろんいいよ、全力で俺たちは君を助けるよ」


 俺はキユリちゃんの前に跪き、手を差し伸べた。


「君はもっと幸せを望むべきだ。暗い不安は俺たちが一緒に取り払うよ、キユリちゃん」

「え、でもだってあなたたちには……」

「あなたじゃないよ。 俺はミラト。 四皇帝、鏡帝の名を預かる鏡魔術師、ミラト=スペクルム。 鏡のように、勇気には力を、 願いには導を持って応えよう!」

「鏡魔術師……あの、伝説の」

「さぁ、手を取って。 俺は君の力になるよ」

「助けて……ください。 お願いします」


 キユリちゃんは立ち上がると、俺の手をとった。その顔には涙が一筋泣かれている。


「任せて、君が笑えるように全力を尽くすよ」

めちゃくちゃキザなセリフを言わせてみました。普段恥ずかしくて名乗らないミラトがここまで堂々と言い張ると、それだけ真面目なんだって伝わりますよね。多分

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