再会
お久しぶりです。十一月に入ってから中間とアルバイトが忙しくてなかなか書けませんでしたが、今後暇を見つけて書いていきます。クリスマスまでには終わらすことを今の目標にしています
果実を採取してから一時間ほど探索を続けたことで、俺たちは次の階に続く階段を見つけた。特にこの階に留まる理由はないので、俺たちは見つけた階段を下っていった。
「うっわ……」
思わず声が漏れてしまった。なぜなら一つ降りただけなのに、一個上の階とは様子があまりにも違ったからだ。
「異常ってこのことだったのか」
俺たちの視線の先には、二十一階層とは比べ物にならないぐらい異質だった。伸びている木はウネウネと湾曲しており、地面から生えている草木は大きさや太さ、色などが不揃いだ。花でさえ、花弁ごとに色が違っていたり、切り株の上に生えていたりなど、普通ではあり得ない光景がそこにはあった。
「不気味ですね……」
「そうだね。 でもまぁ進むしかないよね」
思い返してみれば二十一階層には冒険者の姿をそれなりに見かけたが、二十二階層には見かけない。それどころか、見える範囲には魔物の姿すら見えない。草木という生命に溢れているのに、荒れ果てた砂漠のように生き物の呼吸を感じないという矛盾が嫌な空気を醸し出している。
「……行こう、リリー」
「はい」
俺たちは一呼吸を置いた後、二十二階層の中に足を踏み入れた。
「不気味だ」
「不気味ですね」
二十二階層に来てから十数分は経つのに魔物に一回も会わない。会わないというより会えないというのが正しいのかもしれない。
「なるべく早くここを抜けよう。 明らかにここは異常すぎる」
「そうですね、何気味が悪いです」
植物に溢れ、空気は澄んでいるはずなのに、ここの空気をあまり吸いたくないと思ってしまう。俺たちは足早で探索を進めた。
「……あれ、この魔力」
探索の途中、探知魔法の探知範囲ギリギリに見知った魔力の反応があった。
「リリー、ちょっと寄り道するけど平気?」
「ミラと様が決めたならどこまでもついていきます」
「そっか、ありがとう」
俺は探知魔法の反応があった方に向かって走り出した。魔物に襲われないため、十分ちょっとで魔力源の近くに近づくことができた。俺はその魔力源に声をかけた。
「いた! キユリちゃん!」
「え……あなたはあの時の」
そこには横たわる木の上に座っている少女、キユリの姿があった。
「大丈夫?!」
「え、えぇ……特に何もございませんが」
俺の勢いに戸惑いながらもキユリは答えてくれた。
「そっか、よかった」
俺はその答えを聞いてほっと一息をついた。そして周りをふと見渡した。
「ここだけ、空気が違うね」
「空気はみなさんが吸っているのと変わりないと思いますが?」
「あ、そういうことじゃなくてね」
キユリちゃんのいるところだけ普通なのだ。原っぱのように短く、均一に揃った地面に真っ直ぐに伸びた木々、そしてキユリちゃんの後ろにある天然の洞窟の入り口を隠す暖簾のように伸びた蔓、小さくも澄んだ水の湧き出ている小池。この異質な二十二階層において、普通という異常だ。
「普通とは異なった異常状態の中で、普通を保つ異常……」
「あ、あの……」
「あ、ごめん。 それで、どうしてキユリちゃんはここにいるの?」
「えっと、その……逃げてきたんです」
「逃げてきた?」
「はい」
確かに特に用がない限り、二十一階層より上にキユリちゃんが一人で居続けるのは危険だ。身を隠すという点においては異質な空気が漂い、魔物の姿が見えないこの階はある意味安全と言えるのかもしれない。
「それにしても、どうしてここにいるの?」
「それは……待っているんです」
「誰かを?」
「いえ、誰かというよりは、時間が過ぎるのを……です」
キユリちゃんは暗い声色でそう呟いた。