果実採取
祝、二百話投稿です!
本当は今日は閑話だけ書いて終わろうと思ってましたが、二百話という区切りを閑話にするのはどうかなという数少ないプライドが疼き、急遽書きました!時間を見つけて閑話も今日中に書いて行きます。
今後更新率を上げれるように努力していくつも利ですが、どうか暖かく見守っててくださると嬉しいです!
「とりあえず、次の階に続く道を探しつつ、良さげな果実があれば採取していこうか」
「はい!」
いつもよりも声のトーンが高い。やっぱり甘い物には目がないようだ。
「あくまで探索がメインだからね?」
「わ、わかってます!」
「ほんと?」
「ほ、ほんとですっ!」
「じゃあ今日は採取なしで」
「えっ……?」
俺がそう言いながらチラッとリリーを見ると、あからさまにショックを受けていた。尻尾もだらーんと垂れ下がっている。
俺はショックを受けているリリーの頭を撫でながら訂正した。
「嘘だよリリー」
「ひどいですよぉ、ミラト様ぁ……」
「ごめんごめん、じゃあいこうか」
「はい!」
俺たちは気持ちを切り替えて探索を再開した。
「リリー」
「はい」
数分ほど歩いたところで魔物が現れた。俺たちは背の高い草の陰に身を屈めて魔物の様子を確認した。
「【映し鏡】」
名前:無し
レベル:32
性別:オス
種族:密林熊
スキル
無し
俺たちの目には背丈4メートルほどの体躯に深緑色の毛皮を持つ大きな熊がいた。俺達には目もくれず、背の高い木を強靭な爪で何度の引っ掻いている。引っ掻いている木を見ると、上の方に熟した果実を見つけた。
「リリー」
「はい」
俺たちは草むらから飛び出した。その音で密林熊はこちらに気付いたようで、くるりと体をこちらに向けて吠えた。
「グォォォォォオ!」
体を持ち上げ、その大きな体躯で威嚇してくる。中々の迫力だ。
「そっちお願い」
「お任せください」
「グォォォォォォォォォォオ!」
振り下ろされた両腕を、俺たちは左右に分かれて回避し、そのまま振り下ろされた腕をそれぞれ切り落とした。
「ガァァァァア!」
鮮血が密林熊の両腕から大量に流れる。深緑色の毛皮も切り口の周りは赤くなり、腕を斬られた密林熊は血走った目でこちらをみている。そして俺をみた後にリリーを見て、リリーの方に向かっていった。
「リリー、後お願いね」
「はい。 【氷剣】」
リリーが魔法で生み出した氷の剣は一本だった。普段は数本生み出すところを一本に絞り、その代わりにリリーの体の二倍はありそうな大剣を作り出した。その大剣は迫り来る密林熊の胸の辺りを貫き、そのまま凍結させた。
密林熊は断末魔を上げることなく氷像と化し、息絶えた。その後すぐに斬られた腕と魔石だけ残して密林熊の体が少しづく無くなっていった。
「なんか、変な気分だね」
「ですね」
俺は残された腕と魔石をしまった。
「さてと、気を取り直して採取しようか」
俺は目の前にある、削られていた木を雪月花で切り倒した。雪月花は難なく切り倒すことに成功した。
「さてと、これは何かな?」
俺たちは切り倒した木の先端に向かって行き、一番上に数個実っていた果実を手に取った。
「思ってたよりでかいな」
近づいてわかったが、この果実は予想より大きかった。俺の顔より大きく、茶色くて硬い。とりあえず俺はリリーに一個持って貰って、果実の上の方を雪月花で切った。
「うおっ、なんだ?」
「水……いや、果汁ですかね?」
切られた果実の中身は茶色く硬い外殻と裏腹に分厚い白い果肉と、その果肉に包まれるように液体がなみなみと存在していた。俺はコップを取り出し、果汁を注いでリリーと一緒に飲んだ。
「これは……」
「なんというか、甘くはないけど水ではないって感じだね」
「そうですね」
「とりあえず持って帰ってみようか」
「はい」
俺たちは残りの果実を鏡の世界にしまった。